おじいさんの家
おじいさんの家はどこにも傷がなかった。
そこには村人が避難していた。
入った途端1人の男の人が来て言った。
「どこ行ってたんですか、村長!みんな心配してたんですよ!」
「すまんすまん。客が来たのが見えたからな…迎えに行ったんじゃ。」
「客?」
男の人は怪訝そうに聞き返す。
「そうじゃ。この者たちじゃ。」
そういうと私たちを指差した。
「なんで連れてきたんですか!」
男の人はきつい口調で村長に言った。
「この者たちは宿に泊まりに来たそうじゃ。部屋を用意してやれ。」
最後の言葉は男の人の後ろにいた女の人に言った言葉だ。
「ちょっと待ちな!」
突然鋭い声が聞こえた。
すると家の奥からおばあさんが出てきた。
「ゼル。一体どういうことじゃ?」
おばあさんは鋭い声のままおじいさんに問いかけた。
おじいさんは黙っている。
それが癇に障ったのかおばあさんが声を荒げた。
「なぜこの者たちに部屋を貸さねばならんのじゃ!部屋を貸す必要などどこにもない!」
そういったおばあさんにおじいさんは静かな声で言った。
「部屋を貸す必要ならある。こんななにもない村の宿を使おうとしてくれてるじゃないか。
もてなすのが当り前だろう。」
おばあさんは押し黙った。
しばらくして黙っていたおばあさんは口を開いた。
「…分かった。だが明日には村から出ていけ。」
そう言うとおばあさんは奥へ戻っていった。
「よし。わしが部屋まで案内しよう。こっちじゃ。」
私たちはおじいさんの後に続いて階段を昇った。