記憶
第1章
声が聞こえる。
「い、おい。大丈夫か?」
だ…れ…?
少しだけ目を開けると燃えるような赤い瞳の男の子が私の顔を覗き込んできた。
そして私が無事なのがわかるとそっとため息をついたのが分かる。
だんだん覚醒してきた。
すると疑問がうかびあがった。
ここはどこ?
あなたはだれ?
なぜここにいるの?
私は…だれ…?
「大丈夫か?」
男の子が心配そうな声できいてきた。
「うん…。大丈夫…」
「大丈夫そうじゃ、ないだろう。それに、…聞きたいことがあるだろう?」
男の子は言った。
「え…」
このひとは私が考えてることがわかるんだ...。
私はびっくりしてそれ以外言葉にできなかった。
「何でもきいていいぞ。俺が答えられる範囲だったら」
「…じゃあ。きいていい?」
私はおもむろに口を開いた。
「ああ」
短く答えながら彼は頷いた。
「ここはどこ?」
1つ目。
「ここは天界とつながっていると言われている泉だ」
「ということはここは人間界?」
そういうと彼は怪訝そうな顔をした。
「人間界しかないだろ?天界なんておとぎ話だろ」
なぜか天界という言葉が懐かしく感じる。
「あなたは誰?」
2つ目。
「俺はレン。旅人だ」
「なぜここに?」
3つ目。
「通りかかっただけだ」
「そう...」
「お前の名前は?」
......4つ目。
私はうつむきながら言葉を発した。
「分からない…の」
「え...?」
「記憶がないの…ここで目覚める前の記憶が…。」
ほとんど泣きそうな声で言った。
「そうか…。」
レンは静かな声で頷いた。
そして
「いつまでもここにいないほうがいい。ただでさえお前は倒れてたんだから。
どこか近い町にでも行って早く休め。」
それまでは一緒にいてやる。
といって笑った。
このひと、ううん、レンは私の記憶がなくても一緒にいてくれるんだ
するとレンが背中を向けてきた。
「…なに?」
私が訪ねると、
「お前は倒れたばっかなんだから俺が背負ってく。」
とレンは言った。
「えええええええええ!!!いいいいい、いいよ!!!私重いし…。」
と言ったのだけれど…
「大丈夫だ。俺は男だ。」
と言われ、私は折れてしまった。
「じゃあ、お願いします。」
そう言ってレンの背中に乗るとレンは急に立ち上がった。
「わっ!!」
私は危うく落ちそうになった。
「しっかりつかまってろよ。」
そう言うとレンは歩き出した。