大好きなきみへ
祖母が残した占いの本に栞が挟まっていた。
そこには祖母の字で「大切な人には、ちゃんと言葉で伝えなさい」と書いてあった。
幼なじみの葵のことをいつから好きになったのか分からない。
同じ保育園、同じ小学校、同じ中学。
いつも隣にいた彼女。
高校で別々になり、大学でまた再会した。
「今日の恋愛運、最高だよ」
占いアプリを見せながら葵は笑う。
カフェで久しぶりに会った彼女は、昔と変わらない笑顔だった。
「占い、信じるの?」
「うーん、少しだけ。背中を押してもらえる気がして」
「そっか…」
それから毎週末、二人で会うようになった。
映画、美術館、商店街の散歩。
日々、思い出が増えていった。
ある日、葵が突然言った。
「来月、転勤で大阪に行くことになったの」
心臓が凍りついた。伝えなきゃ。今、伝えなきゃ。
「私たち、また会えるかな」
祖母の言葉が頭をよぎる。
「ちゃんと言葉で伝えなさい」
僕は深呼吸をした。
「葵」
「ずっと言えなかったんだけど、俺、葵のことが好きだ。幼なじみとしてじゃなくて一人の女性として」
葵は驚いていた。
「実は私もだよ」
「ずっと待ってたの。あなたから言ってくれるの」
「言うの遅くなってごめん」
「遠距離だね…」
「でも遠距離だけど大丈夫。だって私たち、ずっと一緒だから」
今日は祖母に背中を押してもらった気がした。
大切な人には、ちゃんと言葉で伝えよう。
「大好き」と。
窓の外、夕日が二人を優しく照らしていた。
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