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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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永い(3)

 星が1万を超えました!

 ありがとうございます!

ーーー



 「これはこれは。噂の方がこんな田舎に来られるとは」


 待ち構えていたのは、至って普通の日本人という印象の中年男性。


 作業服に身を包み、秘書らしき女性と共に座らず直立で待ち構えていた。


 「俺の事を知っているんですか?」


 「⋯⋯えぇ。界隈で貴方を知らないようではアンテナを張れていないと言ってるようなものです。


 白波、諸星、この2つはただの遊び場ではありません。


 それぞれが業界を代表する事業の筆頭です。


 それに松前まで関わるとそろそろ表に出るのも時間の問題では?」


 それからも長々と俺に関する情報を次々と並べていくのをただ俺は聞いていた。


 ──入念に調べてるな。

 実際問題俺はそこまで表に出ていないにも関わらずかなり詳細なことまで知っている。


 ただ気になることがある。


 「よくリサーチされているんですね。

 永井製作所では加工がメインだとお話を伺いました。

 

 そこまで得られる機会があるんですね?」


 「⋯⋯まぁまぁ。

 一旦お互い座りましょう」


 大人らしい話題のそらし方。

 笑みの張り付け方。


 ──散々見てきた奴らと全く一緒だ。


 座ると間髪入れずに話題をぶっこんできた。


 「⋯⋯うちの娘についてですよね?」

 

 「えぇ」


 端っこでCAみたいに固まって直立不動な彼女をチラ見してはこちらを見て不敵に笑う永井。


 「何か粗相でも?」


 「いいえ。むしろ逆です」


 「⋯⋯逆?」


 小刻みに動かしながら答える。


 「はい。かなり気に入っているんです。 

 しかし突然辞表を出して1週間後にいなくなると言うもんですから⋯⋯何かあったのではないか?


 そう思ったんですがねぇ。


 事情も何も教えてもらえないままで」

  

 俺達を一瞥すると、穏やかながら圧のある言い方で口を開いた。


 「──それであんなに人間を連れて?」


 「えぇ。俺は欲しいものは必ず手に入れる主義ではありますが、尊重はする寛大な人間でしてね。


 逆に。嫌いなのは理不尽でして」


 俺と永井の間に火花が散っている。

 それぞれの思惑があるからだろう。


 「事情を説明する義務があなたにありますか?


 今の所迷惑を掛けているわけでもなんでもない。


 正直普通に話をしているだけでも筋は通しているつもりですがね」


 「仰る通りです」


 そう俺は間を開け。

 指を三本立てる。


 「どうです?事情は分かりませんがこれくらいで娘さんを正式に席を置いてもらうというのは」


 「ははは。三千?三億ですか?

 娘をそんな金で──」


 「30億の間違いです」


 そう言うとさすがの永井も動揺した。


 「300でもいい」


 「⋯⋯本気です?」


 無言で頷き、間にある机の上に軽く指で円形になぞる。


 「俺はね、昔から決めてる事があるんです」


 「昔?」


 「俺は他人なんてどうでもいいんです。

 目の前で足がなくなろうと、金がなかろうと。


 しかし、円の中に入った人間は意地でも助ける」


 恐らく真顔の俺はそのまま続ける。


 「そして尊重も欠かさない。

 本人が笑顔で行きたいのであれば唐突な言葉でも納得は"してやる"。


 だが、どう考えてもアレは普通ではない。

 一体どんな教育をしたらあんな事になるのか⋯⋯目的はそっちだ。


 ──どうだ?


 30億くらいなら即払う。 

 本人を見れば明白。

 お前は"親"ではない」


 ーーあはは。


 断片の彼女の記憶は家族を大切にしている俺にとってはとても悲惨なものだった。


 愛想笑いの日々。

 あのケーキは彼女自身が作ったものだった。


 喧嘩している両親を和ませようと作ったもの。


 それを払い除け、喧嘩を続ける親がまともな訳がない。


 彼女もまた、壊れている。


 「あら、そっちが本当の顔ですか」

 

 「その気持ち悪い笑みをやめろ。

 俺は──」


 かつて、俺は誰も救えなかった。

 頼って、頼って⋯⋯しかも結局何も得られなかった。


 だが今はどうだ?

 権力も、資本もある。


 魔力もあるし、知識量もある。

 ただ交渉力はないが。


 それでも一つ揺るぎないものはある。































 「俺は、家族の為なら世界中と戦うくらいには大事にする人間だ。


 永井理沙は──既に俺の円の中だ。

 彼女が笑うなら俺はいくらでも金を払おう。


 現実的には払えるのは300までだが、この町工場であれば十分な金額だろう?


 何のためかは知らないが、その金額より大事な案件があるのか?」


 大きく開けた自分の両脚に両肘を置きながら、俺はじっと見つめる。


 「ふっふふふふ⋯⋯あっははははは!」


 悪役かと言わんばかりに静かな応接間で響く永井の笑い声。


 「いやー若いって素晴らしい。

 何がそこまで"アレ"を気に入ったのかは分からないが、いやいや素晴らしいね。


 300も払える10代の子供がいるとは思わなかったけど。


 だがねぇ──」


 そこまで言ったところで俺は既に目の前にあった灰皿を手に取り持ち上げていた。


 「大将!!」


 ──コイツを殺す必要がある。



 ーーあはは。


 握った時に初めて彼女の過去を見た。

 その時思った。


 ──全て逆だったのだ。


 笑っているのは偽物で、去り際の儚く柔和な笑い方をするのが本来の彼女だったのだ。


 『ねぇ、そーくん』


 『ん?』


 『来年も居ていい?』


 あの時、笑って居ればいいと笑い飛ばしたが、彼女は本気だったのかもしれない。


 月光に照らされた壊れた彼女なりのSOSだったのかもしれない。


 事情など知らん。

 "私"は⋯⋯ケルビンである。


 全てを手にするクズである。

 

 決して良い人間でない。

 きっと彼女の容姿が良かったからなのかもしれないし、偽りの彼女が好きだったのだろう。


 ⋯⋯しかし関係ない。

 

















 

























 「家族は道具じゃねぇんだよ」

 

 思い切り振るった灰皿が永井の顔面を地面に落とし、俺は柄にもなく怒鳴り散らかした。


 「家族は助け合うんだよクソッタレが!」


 鈍い音が聞こえる。

 しかしどうでもいい。


 「てめぇみたいなのは人間じゃねぇんだよ」


 返り血が返ってこようと関係ない。

 家族を粗末にする人間はどんな人間だろうとゴミだ。


 生きる粗大ゴミだ。


 「クソッタレが」


 そして。俺は異様な気配を既に感知していた。


 原型のない顔面を見下ろしながら、俺はソレに向かって言い放つ。


 「どいつだ? どいつが俺の邪魔をしている?


 常人じゃねぇのがうろちょろしているなぁ?」


 この気配。魔力に近いが魔力ではない。

 

 数十人の気配だ。

 

 「銀、石田、しゃがんどけ」

 

 言われた通りにしたのを見た瞬間、俺は魔力障壁を展開した。


 直後、激しい物音が貫通し、俺の魔力障壁に何かがぶつかる。


 「⋯⋯ほぉ? 永井殿が緊急要請を出したみたいだが、これは面白い」


 空中に浮かぶローブを着た集団。破れた天井から逆光の間に見える外国人。


 間違いない、アイツだ。

 記憶で見た西洋人。


 黙って俺はそいつを見上げる。


 「ふむ。今の防御のルーン?

 なんだ?見たことがない術式のようだ」


 と、ソイツの視線は俺ではなく、理沙ちゃんの方を見ていた。


 「おぉ、来ましたか。

 陛下の好みの娘ですから持っていかないと」


 斬撃を飛ばす。

 しかしその斬撃は防がれる。


 「⋯⋯ん?」


 「ほう。日本に魔導師が居たのですか?」


 まぁ魔力が具現化しただけだから魔法には劣るが、俺の斬撃を防いだのか。


 ⋯⋯退魔師よりもレベルが高そうだな。


 「その女は俺のだ。

 それを丁重に断りに来たんだがな」


 「なるほどなるほど。幾らで納得してくれますか?」


 またも飛ばす。

 しかし同じ結果だ。


 「その選択──後悔しますよ?」


 「生憎俺は王と呼ばれた男だからな。

 弱者の言い分は理解できないタチだ」


 「そうも言ってられるか見物です」


 聖職者のように笑い、俺を見下ろしていると。


 「おっ?やってるな」


 雰囲気が違うな。


 コツ、と。

 またも違う気配。


 ライターの音が鳴り、煙草を吸う男。


 すると隣にいる銀の顔が強張った。


 「知り合いか?」


 「⋯⋯大将、突っ込みたいところは色々あるが、アイツは駄目だ」


 「んぁ?」


 「大将逃げる準備をした方がいい」

 

 「珍しいな。お前がそこまで言うなんて」


 「風間組の中でも最もヤバイのが来た」


 すると、突然空間が歪むに近い雷のような重苦しい音が空を切った。


 ドゴンと。


 「久しぶりだなァ?真壁銀譲」


 煙草を吸いながらなんて威力だ。

 銀よりエグかったが?


 俺に飛んできた拳を、銀が両手をクロスさせてその一撃を防ぐ。


 「大将、こっちは俺がどうにかする。

 大将はその変な奴らを」


 「オイオイ何を言う真壁──」


 パリンと。 

 ラグビーさながらのタックルで、銀と白髪の男が2階から姿を消した。


 そしてそれを追いかけるように。

 

 「伊崎さん!アニキの方に加勢します!!」


 「あぁ。そうしてやれ」


 あっちはどうにかなると信じるしかないな。


 「見た目はどうにも子供⋯⋯しかし私のカノンを防ぐとは不思議だ」


 「おい、舐め腐ってないで──」


 その時、俺の防具が反応を示した。


 電子音が周囲に発生したと思うと床には魔法陣が展開されていた。


 「さすがこんな場所で魔法を使ったら大問題になりますから」


 独特な金属音が響いたと思うと、次の瞬間光に包まれ視界は歪んだ。

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