忙しい日々と
『伊崎くん、こちらも無事進んでいる』
「そうですか坂井さん。
では、そのまま計画を進めます」
『プロジェクト・アマテラス。日本の神様の名前か』
「えぇ。このアマテラス計画はこれだけに留めるつもりはありません」
『というと?』
「現在、資産を用いて大量の人材を用意している真っ最中です」
肩を叩かれる。
振り返ると石田がファイルと共に付箋。
"言われていた人材の皆さんは伊崎さんならついて行くと返事が返ってきました"
見上げ、俺は頷く。
「これは10年後──祖国が最強に返り咲くためのモノ。まだまだこんなの序の口です」
そうだ。
現在声を掛けている分野は多岐にわたる。
石田には大量の研究者をピックアップさせては俺が直接会いに行って説得、または金額の交渉をして現在建設途中のデータセンター、現代の流通倉庫のような巨大な社宅に更に備え付けた快適なネットや食事を兼ね備えたものを建設中だ。
人材がそこで寝泊まりして飯も栄養士による最適化。
簡易病棟も建設して医者も雇う。
残業をしないように警備やタイムカードの概念もどんどん推し進めていく。
給料も、ベテランなら1500万円くらいだと言っていたが、俺は破格の4000万円+成果報酬を付けると言ったら目の色が変わり、加えて俺の理念、熱意を喋った。
ありがたい事に泣いてその場でお礼を言われた。
まだ日本にそんな人が居たのかと。
⋯⋯昔の王国を見ているようでいても立ってもいられなかった。
記憶は薄いが現代でも日本の研究者や施設はかなり劣悪な環境なイメージだ。
そこを払拭させ、上質な環境にしてやる事でドンドン良くなるのなら幾らでも金なら出す。
そして、半導体関連の話し合い。
「アマテラス計画の初期ステップは、部品です」
『部品?』
「ええ。今からゴーグルやイップルのような巨大な所にゼロから打ち勝つにはおよそ不可能でしょう。
しかし、日本の企業が協力すれば可能性はある」
『⋯⋯それは?』
「例えばレンズ。日本の作るレンズは一流です。
カメラ技術。これも一流です。
バッテリー技術も、お隣よりも一流です。
⋯⋯では、これらを相互依存型にさせて今を生きる天才たちに究極のモジュールを作れば?」
『単体ではなく、単体同士を掛け合わせて作成していくということか』
「そういう事です。
車の設計図はもう広まってしまったのでもうどうしようもありませんが、部品の一流さであれば、日本の企業が世界でトップクラスです。
安定、精密。
これを超える国があるのなら教えてほしいくらいです。
技術流出を防ぐために相互依存型⋯⋯企業が協力していけば、どうにでもなるはずです」
『年寄りを使え。私が話をつける。
老兵はこういう時役に立つ』
「ありがとうございます。
人材は現在確保済み、早急に振り込みを済ませたので、リストラで切られた方たちも安心して無職でいられていますのでご安心を」
『さすが早いな』
「えぇ。金と環境は俺が用意します」
『⋯⋯あとは大人に任せろ』
と電話が切れる。
「お疲れ様です。伊崎さんらしくない日々ですね」
ミルクティーを持って現れる石田。
「ハッ、そうだな」
カップに注ぎ、石田の分も注いでやって渡す。
「それにしても、お前も随分やれるようになったな」
コイツ、サラッと人材の処理なんかを済ませてくる。
勉強していないだけで地頭が良いのだろう。
「まだまだやることがいっぱいですよ」
「まぁな。俺もかなりやることが山積みだ」
今の日本にやるべきことはかなりある。
先を知っている俺からすれば神の視点で情勢を見れるが、プロジェクトアマテラスが実施されればそれは過去、未来が変わるということだ。
「お前の彼女にも今度電話したいことがある」
「⋯⋯え?伊崎さん?」
そんな顔をするな。
ヤリたいの?みたいな顔すんなよ。
「違う。察しろ」
「何をです?」
「女優業は上手く行ってるのか?」
そう言うとさすがの石田もハッとする。
「失念してました」
これから先のことを見据えると、芸能人の卵やモデル、様々な人間を買収していたほうが得でしかない。
恩を売るも良し。
率いれるも良し。
とにかくゴーチューブの為にも。
イイよねぇ、今人気のゴーチューバー⋯⋯実は先に喰ってました!(ダブルピース)みたいな。
お手付きは男の子最高の欲望であります。
「薬方面の会社にも人材のピックアップを頼んだな?」
「勿論です。面白いくらいの金が動いていて税務署が動かないか心配になりますよ」
「どんくらい動いた?」
「土地、設備だけで500億近い金が動いています。
人材、その他投資だけでも合わせたらい、1500億は軽く行ってます」
⋯⋯安いもんだ。
将来莫大な権力と上質な女を手に出来るんだから。
「税務署、あとはあっちの連中にもちょっと一槍入れたいなぁ」
「⋯⋯まじで言ってます?ヤバイですよ」
「ん?まぁそうだな」
こいつはなんとなくは察してるのだろうが、正体は分からないだろう。
少なくとも俺が普通の人間ではないということは勘付いてる。
だがそれだけは言わないようにしてるって感じだわな。
いずれにしても、今の時点でどれだけ侵食してるのかも見物だ。
もたれながらポカンとする石田を放置し、天井を見つめる。
「白波と諸星⋯⋯あそこからかぁ」
「あ、そういえば諸星会長が嬉しそうに新素材の実験が上手く行ったと連絡してきました」
「おぉ、上手く行ったのか」
「軽くて丈夫な素材を確認して、実験も成功。
ただ、まだまだ改善の余地があると言って、何やらメラメラ燃やしてました」
あの爺さんも物好きだよなぁ。
普通ならあの歳でギラギラしてるなんてねぇわな。
「今何月だ?」
「6月26日です」
⋯⋯まだまだやることがいっぱいだな。
こんなんじゃ学校なんて言ってる場合じゃねぇんだがな。
人材の説得、施設の視察に会長たちとの会食という名の熱い討論。
空き時間に衣里と理沙ちゃんとしこたまヤッて。
──あれ?爛れようと思ってたのに⋯⋯これじゃただの社長みたいじゃねぇ!?
「おい石田」
「どうしました?」
「俺らなんでこんな働いてる? お前も役員報酬一応あるよな?」
「ですね。俺もなんでこんな真面目に働いてるのかわかりません」
「「⋯⋯んん」」
俺達⋯⋯一旦なかったことにする?




