化物が化物になった日
かつての自分を馬鹿にしたい気分だ。
溜息が出る。
「⋯⋯なんで」
俺は馬鹿なのか?
「なーんで武具ばっか置いてんだこのクソッタレがァァァ!!」
ちくしょう!
エリクサーは作れるから時間の問題であるからまぁ⋯⋯まぁいいとして、亜空間に置いてある最上層が武器しかねぇんだこのクソカスゴミ野郎が!
今欲しいのは魔導具だっつーの!!
錬金術も万能過ぎるが、いかんせん魔力量を増やす作業はかなり難航する。
数字にすると非常に難しい。
帰還時の俺は1000とかそんなものだ。
ミニ空間は本当の非常時の為の手段であり黄金の雫がたまたま置いてあったからいいとかは今はいいか。
黄金の雫によって、身体の魔力上限は1000万程。
現在、回復をしているが、常時使っている魔法がいくつもあって、現状1万ほど。
何もしなくても回復量は放置していれば数年で半分に到達すればいい方だ。
だから、時間が掛かると言ったのはこの事だ。
しかしエリクサーで回復するのは出来るが、上限を伸ばすテルテルエリクサーで伸ばしてくのは決して簡単ではない。
1万ずつ伸ばしていくという非常に難題な時間である。
「⋯⋯ん?なら、全盛期の俺はいくつだったんだ?」
ディセンは一生使ってても問題なかったし。
え?俺は魔力量兆とかその先ほどあったってことか?
まぁ、水代わりに飲んでたからアレか。
「⋯⋯じゃなくて!!」
壁に幾百ある武器の中から一振りを手に取る。
目の前にある細身ではあるが濃いめの白い剣。
腹が少し広めで、何も特筆すべき点がない剣である。
鍔も漢字の山に近く、本当にこれが武器として優秀なのかすら怪しい。
しかし。
魔力を込めると、パソコンの回路のように鍔から魔力が奔り、金管楽器に近い音色を鳴らす。
「久しいな」
ディゲル・アルバロ。
日本語に翻訳するなら星獣の白剣。
主な能力は不壊。
所有者の魔力を込めると不壊属性が付き、その者がイメージしている斬撃が最適な状態で飛ばす事ができるかなり優秀な剣だ。
「ふん。懐かしい」
全盛期の俺がこれでディアラヴァ使った時は⋯⋯山が10個吹っ飛んだっけか。
流石に焦って全力では止めたが。
「ほうほう、俺はセンスがいい」
当時の事は忘れたが、恐らく防具や武器を置いている事から魔力が乏しい事を想定して武具を置いていたのか。
エステリオン・デアゴ。
(黒鎧の腕輪)
アルヴァン・イ・レ。
(白黒の耳槍)
なんなら一番最後に置いておいてもいいくらいだ。
エステリオンなんぞ日本で売ったら本当に幾らになるのだか。
「残念ながらここでは魔力障壁すら展開しないから無敵さ」
と言っても。
どんな事態が起こるか分からないのも事実。
⋯⋯あの二人組。
片方は俺の攻撃を完全に"予測"していた。
そういう能力だと言うことはかわかったが、何が起こるかこの先も分からん。
備えあればなんとやら。
「最上層は武具。防具。少なくとも死ななくはなったな」
この時代だとギャル男みたいな見た目になってしまうな。
指輪とバングル、更にはピアスやネックレスの小物をつける羽目に。
「まぁ、見た目が違うのだからフィットしないのは当然か」
顔も違ければ雰囲気もあっちとは違う。
筋肉に救われている。
じゃなかったらこの時代ではただの中二病だ。
「後は、特にか?
手紙だの、封筒だの。
多分、俺が放置しているやつだな。
あの時代色々な奴らから声をかけられてだるかったもんなぁ」
王族たちから女を派遣するからこれやってくれアレやってくれなどと。
誰に命令しとんねん。
なんて思いながら抱いてたわな。
あれ?脳みそおちん⋯⋯
「ゴホン!」
防具は粗方見たかな。
とりあえずエステリオンとアルヴァンがあるからいいだろ。
「んー武器かぁ」
まっ、いいや!
と、俺は亜空間から出る。
出ると目の前は海辺。
「んー! 世界は美しいな」
魔力感知が必要なくなった。
アルヴァン、君のお陰だ。
常に脳みそが焼けそうだったからなぁ。
このスペックの俺でやっとだ。
「さて────俺の本領発揮の時間だ」
構築は終わっている。
さぁ、皆の者。
無意識に俺は両手を上げ、無言で問い掛ける。
「喝采せよ──」
やっとだ。
やっと⋯⋯このうんざりした魔力量を卒業する。
「ん?さすがにポンポンとは"いかぬか"」
エメリテォアリヒンドロゴロア
(星の力に祝福を)
アスタラーダディバースアウンコワダラシンザシンバ
(我が創造する星の息吹をこの世に顕現したまえ)
詠唱は短いが、とてつもない構築量と魔力を消費するこの世で最も最初に難航した錬金術。
そして、この世界で"詠唱"するのは⋯⋯最初で最後の魔法であり、錬金術である。
「エリル・ディア・ロートス」
(星の錬金術・エリクサー精製)
空間が歪み、割れる。
ブラックホールさながらの吸収速度。
漆黒の細い紐と風の音が紡ぐ。
それは個体になっていき、世界を創り、変える。
この世界に異質が現れる。
異物が。
⋯⋯遺物が。
「ハハハハハハハハッッッ!!!!!!」
久方ぶりに腹のそこから笑った気がする。
「もう、幾万年待ったような気分だ──我を代表するアイデンティティよ」
俺の専売特許であり、全ての根源。
人々が俺に魂を捧げても。
男は悪魔になり、女は俺に性を授けた。
そんな黄金を創り上げた俺最初で最後の聖物。
「あぁ⋯⋯我が子、エリクサーよ。
これで──あの頃の俺に少し戻れるよ」
金色の刺繍の瓶を開け。
一口、一口で俺は飲み干した。




