魔法ってね、使い手によっては神になるんだよね
その後。
まぁ、察してくれるだろうが。
土曜は丸々最悪の一日だった。
いつもなら佐藤さんと理沙ちゃんとのイチャイチャ時間の日々なのにもかかわらず、俺は達磨の介護とくねくね自慢プライド高女の餌やり。
まぁ先に言っておけば、万物の王というのはご存知俺の二つ名みたいなものだ。
二つ名と言えばみんな想像通りだとは思うが、誇張された光景を盛りに盛られたりする事がある。
基剣。
王者の剣。
俺が育てた奴らに付いたらしい二つ名だ。
一人は基本の動きしかしていないのにもかかわらず、海を断ったと言われている。
ハンデバルは目の前に千本の手の動きがあると言わしめた剣だとか。
まぁしかし、だ。
俺の場合は誇張ではなく過小評価に近い。
錬金術師。
想像だと鉱石なんかの純度を高める事だったりの変換だよな。
俺は残念ながら、それを万物に当てることができる。
例えば、
"身体の欠損"
"失った視力の回復"
"エネルギーの変換"
"自立人形の作成"
挙げればキリがない。
まぁ自慢は置いておいてだ。
部屋を綺麗にしたり、食べ物を用意したりするのも朝飯前だ。
──俺に魔力さえあれば。
だからまぁ餌を作っては栄養のある小さな正方形の塊を無造作にお皿の上に盛っておいた。
食べなよーと言うと、難色を示したので、ちゃんと気持ちで対話したら皿の縁に顔を押し付けて元気よく食べてくれた。
少し震えていたけど、俺は背中に手を置いたまま指先の感触に集中する。
布の奥にある少しのヒンヤリした冷たさと微かな体温を帯びた俺の好きな柔らかい感触が指先を埋めていく。
あれから何も発しない。
ただ盛られたご飯を食べ続けている。
喋らなくなっちゃったけどしっかり可愛がらないとね!
うん!栄養はバッチリだからね!
しっかり食べてもらわないと!
これ食べてれば痩せないし、今の状態を維持できるしでかなり良いと思う。
達磨の方には直接手を翳して、中に栄養を直接変換。
眠ったまま栄養はあるので、問題ない。
「とりあえずあっちの二匹の面倒も見に行かないと」
と扉を閉め、もう一つの個室へと向かう。
あの後悪魔ちゃんが"なんでもするからもうやめてくれ"。
そう言ってきた。
まぁ、流石に身体の中心部分をいつまでも貫かれたらキツイよね。
しかも電気を流したり、燃やしたりして、結構色々頑張ったんだから。
部屋へ入ると二匹の悪魔たちが俺に抱きついてくる。
「待ってた!」
「食べる!」
と。俺は"今日も"躾を始める。
「こー?」
「俺より専門だろう?」
「うん!」
「あーそこいいよ。よーしよーし」
頭を撫でながら、とりあえず思い出す。
そう。そうだ。
人間よりもこっちの方が扱いに困ったので、2匹の悪魔は俺のペット枠として生きてもらう事に。
ペットと言えば、衣服を作らないと。
でもまぁ悪魔だしなぁ。
ちょっと見せれることはできないが、今絶賛朝の躾を行っている。
主人は誰で、主人に何をしたらいいのか。
自分たちは何をすれば存在価値を生めるのだろうかと。
内容?ごめん、ちょっとね⋯⋯憚れちゃうから駄目。
話せない。
でも、一つだけ言えるのは、二人は今笑ってるってこと。
「今日から幸せだなっ!」
「し、幸せです!」
「そーです!」
ほら、笑顔たっぷり。
「じゃ、続けて」
そう。まぁとにかくだ。
昨日からの対話で、二人と二匹のペットが増えた。
そんで、特に二匹に関しては種族性質上、昨日躾たら効果が凄くてかなり今気分が良い。
今もそうだが、笑いながら色々笑顔で必死な二匹に免じて、少し話そうと思う。
みんなは、魔法と聞くとどうだろう。
炎が出せる?
水が出せちゃう?
はたまた空が飛べちゃう?
答えは⋯⋯うん、どれも正解だ。
えー正解?どういう事?
一番分かりやすい例えだと、世界で一番実力がある人間にボロボロの筆を渡したとする。
お題は適当。
何か書かせてみると、あら不思議。
素晴らしい作品が出来上がる。
⋯⋯この要領と一緒だ。
つまり、魔法というのは、使い手次第で無限の世界を拓くということ。
みんなからすれば、"ファイヤーボール!"
みたいなのは幻想に近い。
あるにはある。
ただ、攻城戦や騎士たちの合戦の時に臨時バイトをする時くらいにしか使わないものだ。
それなら、ランゼやアリなどの使い方が有効的だ。
後はバイルもそうだな。
⋯⋯話を戻そう。
実際に魔法を見る機会というのはほとんどなく、その知識や経験というのは貴族が受け継ぐ。
平民には残念ながら一生の機会を失う。
その為、魔法はその家系を表すシンボルとなる。
だから様々な魔法が開発され、検証と実験の日々の人間が多く存在している。
中でも、回復に関するモノは世界中のどこを探しても出てこなかった。
どうせ知ってるやつが秘匿してるから。
出てきたとしても、今ほど情報が表に出てこないことから、神話扱いされ、本当に居たとしても、誰も信じない。
実際のところ、回復魔法というのはある。
ただ、どうやって完成するのか。
過程は?そもそもの条件は?
頭に疑問が浮かぶことだろう。
俺も当然そうだった。
ーー知らん。とりあえず覚えたな?
師匠のその一言で、俺の魔法理論とかいう馬鹿げた話にさようなら。
はーい今の話の結論。
とりあえずイメージできて、魔力操作が極めてレベルが高く、魔力量が多いやつが使える。
色々喋ったが、要はレアな上に魔法を使えるようになるまでには途方もない時間と権力と場合によっては命を削ることもあるって事だ。
正直な話、俺が女じゃなくてよかったと思うほどだ。
師匠の話によれば、一つの魔法を覚えたくて身体を売って学んでいた女がいたようだが、それはハズレのクソ魔法だったらしく、何も得ないままその彼女は子を孕んで捨てられたらしい。
回復魔法と言えば。
と、そんな事を思い出した。
だからなのかなんなのか。
今俺の目に映る悪魔たちは欠損が戻り、慌てて俺に気に入られる為に必死に色々やってる。
じゃないと、またどうなるか分からないから。
「どう?」
「中々悪くない。佐藤さんと理沙ちゃん以下本田さん以上」
「⋯⋯だれ、その人間」
ムカつく。と言いたげな反抗的な目だ。
「人間の雌。そんなのは良い。お前ら悪魔はどうやって生きてるんだ?消化器官は?」
「なーい。ただ、人間の精気を吸い取って、それを食べると身体が強くなるの」
おっ、悪魔さすが。
⋯⋯魔族と一緒だな。
アイツらを管理しなければならなかった要因の一つだった。
アイツらは敵を倒すと自動で相手の魔素を吸い取る。
そして一定量に達すると見た目が成長し、若くなったりする。
いわゆる、老化の逆だ。
「お前らの形態はどういうのがある」
「今はまだリビこんなんでしょ?」
と、捲ってまだ貧相で成長途中の胸元を突き出す。
躊躇がない。躾が上手く行ってることで。
あー説明し忘れていたが、この今生意気な方がぱっつん前髪とロングヘアーだが所々にギザギザ感のある髪型をしているのがリビという悪魔だ。
「私達の種族は、人間を誘惑するから、瓢箪みたいな体型であればあるほど格が高くなる。
もっと強くなる」
「⋯⋯そう」
もう一匹の静かな悪魔はゲラハ。
首元で切り揃ったラインの髪先に、眠そうな目元。
あの時必死に庇おうとしているやつと同じには見えない。
リビと同じように捲っている。
「そうか。なら、精気を吸い取れば進化するのか?」
「そういうこと!」
てことはさ?
頭に浮かんだ俺は、とっても酷い顔をしていることだろう。
そこから数時間後、隣の部屋で聞いていた女のところへ帰ると、ガタガタ震えて角で縮こまっていた。
あー。
隣での大絶叫を聞いてたのか。
結界は個室ごとじゃないしね。




