ほらな、長生きするやつってこうなのよ
「やぁ伊崎くん」
少し離れた所から、手を上げてスタスタやってくる会長。
うわ。何も考えてなさそうな笑顔なことで。
こっちの心境考えた事あります?
「白波会長があんな笑顔で喋りかけてるあの子、多分あの子よね?」
「しかもあの感じ、白波会長の方から行ってる感じするわね」
こちらを窺う周囲のマダムの顔と声が聞こえる。
⋯⋯やめてくれ。
こんな堂々と来るんじゃない!
「ほら。私と伊崎くんの仲じゃないか」
会長が握手を求めてくる。
「一体どういう?」
「なんの関連で?」
「私たちも近づいた方が?」
「一旦様子を見たほうが」
んー会長ー!!!!
なんてことするんだ!
「あぁ⋯⋯どうも」
応じると、その一挙一動に周囲はまた反応する。
「今の聞いた?相手は"あの"白波よ?そこの会長様に向かって"どうも"なんて返せる度量がある人間⋯⋯何処のご子息なのかしら?」
「事業は何をやられてるのか気になるわね」
ボソボソ喋ってるんだろうけど、俺には全部聞こえる。
いや分かる。分かるよその気持ち。
ここは勉学だけじゃないもんね。
将来の結婚相手かもしれない人間が集まる場所だしね。
俺も親だったら気になる。絶対。
だけどごめん。
俺は別に目立たずに家でハーレム人生を送れればいいの!
結構最近充実してるの!
理沙ちゃん、佐藤さん。
他にも様々な女の子達が絶賛視界に映る生活。
いや、帰ってきて俺世紀最大の難所が終わったんだから、あとは好きな人生送ってもいいでしょうよ!
親孝行もこれからたっぷりとまだまだやっていくし、紗季⋯⋯じゃないや、白波にもなんかあったら頼ってもらえるように白波を今も育てているし。
この間株式を見たら、白波本体の株価が爆上がりしていた。
多分買ってたらそれだけで食っていけるレベルだ。
⋯⋯正直びっくりだ。
これなら何かあっても自分たちでやっていけるでしょうよ!
くそ、俺が助けてしまったばかりに⋯⋯!
それが⋯⋯。
「さぁ、伊崎くんは"私"と色々話す事があるから場所を移そう!」
そこ強調するなし。
昔の王族のゴンクーリのジジイに似て強引なんだけどあんま不快感ないのが悔しい⋯⋯!
リアル年の功ってやつなのか!?
引き篭もって時間だけが過ぎた俺とは大違いだ。
黙ってみている二人に、メールで帰っていいぞと送って俺は強制連行される。
あー。みんな、またね。
普通の生活よ。さらば。
帰ったら絶対、甘々スイートタイムにするんだから!
*
「でっけぇ」
「そうだろう? 今、我々が急ピッチで進めているサバと鰻の施設だ」
会長と一緒にやって来たのは、例のサバの施設。
到着すると木村さんとも合流。
新年まだ顔も合わせていなかったので、軽く挨拶。
「去年はありがとうございました」
「どうか、今年もよろしくお願い致しますね、伊崎さん」
片手を差し出した俺だったのだが、木村さんは両手を出してくれた。
「木村、もう完全に伊崎くんを上司の扱いだな」
「ええ。年の差はあれど、実力や才能による差は年齢なんてあってないようなものです。
私は素直に伊崎さんの改善技術に感銘を受け、接しているだけです」
⋯⋯木村さん。
しっかり摩訶不思議現象を伏せてくれているのはマジで凄い。
宇宙人にあったよ!
みたいな感じだったら普通言いたくなるけどね。
我慢できるのはマジで凄いわ。
「それに、事実上私の役員報酬は伊崎さんありきですから」
「そうだな!かなりの額を貰ってるだろう」
隈は消えているみたいだな。
木村さんに降り掛かる災いは俺がこっそり入れた飲水にディセンでどうにかなるようにしておいた。
木村さんの身体の中が怪しかったので、早めにやっておいてよかった。
これで色々デカくなったらそれこそ、魔力の消耗が激しい。
「会長」
そう。今の内に突っつかないと。
「ん?」
「いや、祝辞⋯⋯あんな堂々と言っちゃ駄目ですって」
本当はぶちのめしたい。
いや──クソほどぶちのめしたい。
だが、おっさんの娘のせいで、何かと怒りが上がらん。
「あっはは。会長、何をやからしたんです?」
「伊崎くんは"私"と関わっている。お前らは娘を使って買収するなと警告したんだ。
伊崎くんはまだ分からないかもしれないが、成応の人間は、人間と思って接しない方がいい。
裏付けに、だから紗季を入れなかっただろう?」
「なんとなく言いたいことは分かりますが、具体的な所が」
「ふむ。まぁもう伊崎くんも年齢的にそうだろうしな。
あそこはな、自分たちの利益になるんだったら、娘の純潔だろうがなんだろうが使う。
徹底的に蜘蛛の巣を張って狙った人を落とす。
伊崎くんは女癖が悪いと聞いたのでな。
言い方を変えれば、力を持ってるものは全員何時でも従う。
だが、責任も伴うってことだ。
だからあそこの人間は嫌いなのだ。
教師の力なんてあってないようなもの。
私の時代なんて酷かったものだ。
女をトイレに連れ込んで、やりたいようにやってる連中などゴマンといた。
若気の至りだと言ってな」
⋯⋯なんか解像度が。
「じゃあ俺も結構イケるって事ですね」
簡潔に返したつもりだったが、珍しく木村さんが堪えきれず口元を覆った。
「だから、それを駄目だと言ったのだ!」
「えぇ⋯⋯」
若いおなご⋯⋯もイイ。
完成していない感じがいいのに。
てかそう考えたら、俺って重度のロリコンって事なのか?
龍帝から貰った龍人育てて好き放題したり、齢3000のエルフとしこたまヤリまくって、悪魔種を交配して作ったり……
いや、冷静にやばいな。俺。
反省はしていないんだけど。
「あそこは格式だ。表で見える所が全て。降り掛かる火の粉を払ったと同時に、手を出したら私が出てくると言ったのだ」
おぉ、意外と良い人や。
「と同時に、伊崎くんには動いてもらう習慣をつけてもらわないと。これから伊崎くんには嫌なくらい私と共に外に出ていくのだからなっ!
メールなどと言わず。
やはり、人間たるもの顔と顔を合わせてだな」
ほら、石田ァァ!!
てめぇ言ってたよなぁ?
メールで返せばとかよぉ!
あと誰だよ、メールで返せば?とか言った女の子。
確か井川さんやったかな?
帰ったら絶対に俺のニオイが離れないくらい抱くからな!!
あ、でも佐藤さんに怒られるかも。
じゃなくて!
歳とるとみんなこんな感じなの!
だから俺は嫌だったのにぃぃ!
そしてそれから。
大量にあった視察とディセンを行い、帰ったら絶対佐藤さんに癒やしてもらうんだと決意してやる事を夕方前に終わらせた。
早くみんなでお好み焼きってやつを食べに行くんだ!




