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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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俺、高校生活終わったかもしれない

 「大将確保」


 無残にも。

 俺は朝イチ両隣から漂う甘い香りを味わっている中、銀に強制確保された。


 「これでは人形じゃないか」


 両腕を持たれ、ブラブラする胴体と足。


 「ピョーンとか言いそうだが、悪いな。石田があまりにも怖いから」


 無表情だが、銀が冷や汗をかいているのは滅多に見ない。


 ⋯⋯うん。やはりお前と俺の怖がるポイントは一緒だったようだ。


 「やっと⋯⋯捕まえた」


 噂をすれば。

 やべ。これから手術される。


 




 「はい。じゃあ今日行きます」


 『悪いね、伊崎くん。これからも白波と一緒に日本を制覇しよう!』


 ⋯⋯俺は研究の時と女の身体のウィークポイント以外は知能虫だぞ。


 興奮している白波会長との通話が終わり。


 『伊崎くん! 来週に控える新素材の実験、是非見に来てくれないか!』


 「来週なら良いですよ」


 『土曜辺りかな?すぐに手配する!』


 「はい、では」


 『あーそうだ』


 「どうしました?」


 『佐藤と永井の事なんだが』


 「ん?はい」


 『伊崎くん何かしたのか?やたら恥ずかしがっているんだが』


 ⋯⋯思い当たることがあり過ぎるとこうも反応に困るのか。


 「え? いや毎日俺がお盛んなだけです。

 向こう二人、最初は強がってましたが、今じゃ朝喉イガイガするくらいには楽しんでるんで、報告とか色々しづらいんじゃないんです?」


 うん。顔とか死んでるしね、ほぼ。

 ただ叫んで、「うぅ!」とか「もっとー!」しか言わなくなっちゃった。


 『そうか。まぁ程々にしてくれよ伊崎くん。あの二人は優秀なんだから』


 「了解です」


 よし。なら今日はいつもの倍だ!


 電話を切り、全身鏡の前に映る高校の制服姿を見つめる。


 卒業式なんてついこの間だったのに。

 もうこれか。


 まぁ、でもさすがに上等だな。

 30万円もするのはどうかと思うぞ。


 指定のカバン、靴。

 どんだけすんだよ。


 生地とか素材は良いみたいだし、まぁ納得するしかないわな。


 「あっ、さとーさんー!」


 「あらっ、おはようございます」


 「見て!結構イケてるでしょ?」


 ポーズをとってやると、お褒めの言葉が入ってくる。


 「そーくんイケメンじゃん!」


 「お、理沙ちゃん!」


 運動終わりに遭遇。


 やっぱ理沙ちゃんはスポブラにスパッツ姿が似合うわ。


 常時着てもらおー。


 「今日入学式?」


 「そう! 石田と銀が一緒に。両親はマナーとかドレスコードとかがあるらしいから、帰りによってみんなでご飯食べに行く」


 ⋯⋯まぁ金持ち学校だから仕方ない。

 ほーんと、クソッタレな話だ。


 向こうでもこの俺様を貴族のクラスへ行くときにですら、手続きがどうのとかこういう風な所作でとか言われた。


 ──まぁ頭ぶち抜いたけど。


 「だけど、銀と石田はボディーガードだから、連れて行ってもまぁ大丈夫だろうって判断」

 

 「おー!了解ー!」


 「あ、理沙ちゃん報告業務滞ってるって本当?」


 「ブフッ⋯⋯!」


 空中に飲みかけのカフェラテが舞う。


 「ケホッケホッ! そーくんなに急に!」


 「いや、会長から佐藤さんと理沙ちゃんが恥ずかしがって報告に支障をきたしてるって」


 隣で聞いていた佐藤さんも、図星過ぎたのかふいっと天井を見上げ、必死に隠そうとしている。


 「いやまぁいいんだけど。しっかり仕事してよぉー?理沙ちゃんと佐藤さん居ないと俺の生活大変になるから」


 そう。今の所まじ最高峰の人材である。


 もうねっとり朝活を30分設けないと動けない体になってしまった。


 「最悪辞めたらウチのカウンセラーで雇うから待ってまーす」


 「⋯⋯それもいいかも」


 小声で聞こえたのは佐藤さん。

 え?佐藤さん!?


 「佐藤さん!うちに永久就職してぇ!」


 「こ、困りますっ私は諸星の人間ですし」


 「伊崎さーん。車の準備出来てまーす」


 「了解。ちょっと海の方軽く見てから行く」


 「⋯⋯え?珍しくないですか?」


 「ちょっとな。すぐ行く」


 さぁ四月。

 ロングコートを勢い良く回しながら羽織る。






 静かなさざ波の音を聞き、コートのポッケに手を突っ込みながら目を伏せる。


 ⋯⋯あいつ。

 

 「お兄ぃ、私、借金返すために働ける場所を見つけた」


 なんて笑って言ってたっけ。


 感慨深い。

 俺が、こうして高校に行けるなんてな。


 見上げれば空は快晴だ。

 今思い出すのは、お師匠やあの子供たちに言われた言葉。



 ーーお前は俺と違って人間だよ。

 ーーケルビンって、実は一人が寂しいんでしょ?

 ーー好き嫌いしない、子供じゃないんだから!

 ーーまたモノ壊してるー!長生きしてるくせに!

 


 お前ら、先に逝っちまいやがって。


 ──意外と図星だ。


 案外、俺がゲートを作ってまで帰りたかったのは⋯⋯ただ、寂しかっただけなのかもしれない。


 あいつらはみんな、先に逝っちまった。


 研究室も大きくしたくせに、一人用じゃないからガラガラで。


 ずっと、一人で篭って紙に書き殴って。

 こうして海なんて見るのも、いつぶりだ?


 ⋯⋯今からでも、遅くないのか?


 ただ、当たり前のことを。

 今まで出来なかったことを。

 

 分からない。

 あの時は研究室でただ積み上げる事が全てだと思っていた。

 

 家に来るのは王族だの魔族だの、可愛い竜人やら天使を名乗る変な奴らばっかだった。


 でも、今の生活は面倒だし嫌なことも多いけど⋯⋯不思議と、心の隙間は埋まってる。


 友達みたいな部下もいるし、俺に構ってくれる女だっている。


 最近、目が覚めて最初に見るのは、幸せそうな女達の顔。


 きっと、誰かが隣にいるってこと、情欲混じりでも一緒にいたいって思うこと。


 買い物に行って、飯食って、服を買ったり、映画見たり。


 誰かと感情や物を共有して。


 ⋯⋯なんだよ、結局。


 最近、無性に誰かに話しかけたくなるのも、反応が見たくなるのも、自分という人間を理解してくれる人間が欲しかっただけなのかもしれない。


 偉そうな連中が、口を揃えて言ってた通りだよ。


 ただ──その代償は、働かないといけないんだがな。


 ずっと一人だった俺にはどうすればいいのかなんて、今も全然分からない。


 三百年以上も篭って、誰とも喋らず、飯も忘れて紙に書き殴ってたあの頃。


 今の俺とは、全くの別人だ。


「って、折角の入学式なのになに暗い顔してんだか」


 深呼吸してそう自分に言い聞かせ、表情筋を引き締め。


 「さ、行くか」


 そう呟いて、車へ向かって歩き出した。






 「おい、石田」


 「はい、なんでしょうか伊崎さん」


 「⋯⋯⋯⋯」


 その成応学園とやらに着いたのはいいんだがよ。

 

 「あらごきげんようー!」

 「ごきげんよう」


 「あれ、医大の」

 「俳優の⋯⋯」


 女のレベルが全員高い。

 あと男も。まぁ男は分断されてるな。


 ただ俺達三人の視線は、JKとその母に向く。


 多分恐らく。

 全員の意見は珍しく一緒だと思う。


 ⋯⋯めっちゃ可愛いんだけど。

 大事に育てられたからなのか。

 

 出てるところが出てる女が多いし、お淑やかっていうか、邪念みたいなのがないっていうか。


 例えが思い付かん。

 清純派アイドルとか女優がいっぱいいる、みたいな。


 「お前、JKとヤリたいなんて言ったら犯罪だぞ?」


 横目でチラッと見た石田の顔が完全にソッチだ。


 完全に眼光が血走ってる。


 このロリコ───


 ※私は1000歳です


 馴染みのあるナレーションとBGMが聞こえてしまった。


 やかましいわ!

 頭に浮かんだ言葉を取り払う。


 「伊崎さん、家で散々ヤリまくってますよね?

 おかげでストレス過多で死にそうです」


 「金あるだろ。休暇が欲しいなら言え」


 「永井さんがまじタイプでっ⋯⋯!うっ!!」

 

 あぁ⋯⋯。

 涙目になってしわくちゃになる石田を見て、少し同情してしまう俺だった。


 「理沙ちゃんにお世話になったのね。頭の中だけな」


 「いや、やばくないですか!?

 脚長いし、細いし、しかも筋肉が乗ってて胸に肉あるし⋯⋯なんなん!?


 女だからか、汗とかもなんかこう⋯⋯!

 うわぁぁ!

 あんなんで家の中うろつかれたら⋯⋯っ!

 くそっ。伊崎さんじゃなかったら⋯⋯!


 あー、もう無理!」


 「こんな場所で言うな変態。

 俺から金貰ってるのになんて言い草だ」


 まぁでもその気持ちは分かるけどな。

 アスリートレベルに近いし。

 足なげぇし、細いし。

 

 でも筋肉で締まってるって感じで。

 言われてみたら、隠れてるのほぼ股関節部分と胸だけだよな。


 そりゃ俺があんな格好してくれって言うわけだ。


 「あぁ比留間さん!私、いつも明海運輸をやっております⋯⋯」


 そんで先程まで女が云々言ってたら今度は父親同士の横の関係。

 

 「大将、俺多分場違いだと思う」


 「⋯⋯ふっ、だろうな」


 傍から見たら俺ら酷い状態だぞ?


 男三人。

 二人は一応しっかりオーダーメイドのスーツを仕立ててさ今日の為に。


 ただなんかこう⋯⋯この優雅な場所とはなんか無縁な三人組って感じ?


 「銀、こうやって金持ちはもっと金持ちになって、盤石な人生というやつを作るんだ」


 「俺みたいなのが稼げるわけないと最近の大将を見て思う」


 「伊崎さん、アニ⋯⋯じゃないや、真壁さんだってやれば出来るんです!」


 「そらな。でもお前もわかってるだろ?」


 「⋯⋯まぁ」


 今は戦国時代でも、俺みたいな異世界経験者じゃないこんな平和な世界で、人望があって強いだけでは、生きては行けない。


 「寂しい話は終わりにして、今日は俺の輝かしい制服姿を存分に見てゆけ」

 

 「そうですね。まさか自分の子供の前に伊崎さんの入学式を先に見ることになるとは」


 「俺も良い勉強になる」


 「そんじゃ、行くぞ」



 

 受付を終え、記念品だのファイルだのを貰ってホールに入ると、当たり前のようにプロっぽいピアノを弾いている人が数人。


 さすがにお金持ち学校は違うな。

 金の使いドコロが。


 早速先生に案内され、指定席に座る。


 しばらくするとプログラムと言うやつが始まった。


 式の開始だ。


 まぁよくあるものだろう。

 国歌斉唱、在校生による学校特有の歌みたいなの。

 

 校長先生による長話。


 こんなんで終わりかと思っていた矢先。


 『そして、来賓を代表いたしまして、白波ホールディングス会長、白波隆臣様よりご祝辞を賜ります』


 そうアナウンスで流れる。

 ん?めっちゃ聞き覚えのある名前だが?


 ホールが一瞬どよめく。

 名前を呼ばれ立ち上がった会長は襟を正して壇上に向かっていく。


 頬杖をついてだるそうに眺めていた俺と、壇上に立った会長と目が合った。


 "来てやったぞ"


 そう捉えて良さそうな笑みと共に、挨拶が始まる。


 意外と長い。


 会長も一応名前は違うらしいが昔の在校生だったらしい。


 あんな偉い人間でも、喋る事はありきたりだ。


 ここに入学した君たちは選ばれた存在だの、社会で必要なのは誠実さだの、未来に期待しているだの。


 そんなんだからこの国は良くならないんじゃないのか?


 と、そんな中。


 『実は本日、個人的に仲を深めている新入生の顔を見に来まして』


 おい。あのおっさん、言いやがった。

 こんな祝辞で。


 滅茶苦茶個人的な話じゃねぇか。

 固定してた肘が外れる。


 『個人的な事ではあるのだがね。やはり、知っておいてもらいたくてね。


 後で会いに行こうと思うのだが。

 ハハ。本日は誠におめでとうございます』


 おい、俺の学校生活大丈夫か?

 不安しかねぇんだけど。


 ⋯⋯多分、終わったな。

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