閑話:盤面
色々タイミングを見て出そうかと思ったのですが、ここで出す事にします。
ただここだとあれなので敢えて言葉自体はあやふやにしているので雰囲気だけでも伝わってもらえればと思います!
伊崎くんはただのエロガキの日常しかないので彼の姿は次になりそうです(笑)
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部屋は広い。
天井、壁。
どれも自分の目から見ても限りが見えない。
だけど部屋は真っ暗。
こんなに広い部屋で、なんでもできるこの場所で、片膝を曲げて顎を乗せ、角で丸まってる私の瞳には株式や投資の画面が映し出されている。
「確か⋯⋯"今年の初めにはスズキミクス"が」
これは資金調達のために必要。
金がいる。
*
私の家は特殊だ。
それに気付かされたのは小学生になってからのことだけど。
まぁ簡潔に言うと、私の家は不思議な力を使える人間が集まる場所だ。
例えば、呪文のようなものを発すると手から火が出たり、またある言葉を発すると小さい子犬が出てきたり。
みんなは"式神"だと言ったり、"家族"だと言う人もいる。
どうやら古い家系で、代々日本という国を守ってきたって母上が言ってた。
私という人間は、はぐれ者同士が恋に落ちて生まれた所謂直系の子供ではない。
直系とそうでないか。
そういうレベルの差があるんだと母上が言ってた。
直系の能力は強力らしく、よく外で"討伐"だとか"祓う"なんて言葉を発している。
と、私の話をする前にそう、こっちか。
私の父上は歴代でもかなり異端で、強力かつ特殊な力を発現し、将来を約束された子だったらしい。
だが私の母上と中学生の時に出会って、自分とはまるで違う価値観、考えに一目惚れして、家を出ようと考えてしまうほど惚れたという。
私達の家系というのは、それぞれいくつかあるらしく、大体結婚する先の家というのが決まっている。
だから本来は絶対に許されない事だったのだが。
さすがに居なくなるというのを恐れた身内が、仕方なく許す形で出来たのが私。
そんな中。当たり前だけどかなり私の力も期待されていた私だった。
あの歴代でもかなり異端な子供はどんな能力なのだろうかと。
どうやらこの不思議な力というのは、父親にかなり影響されてるとされていて、一夫多妻制がとられるほどなんだって。
だから期待された。
⋯⋯だがなんと、私はなんの能力も発現しなかったのだ。
あの時の周囲の目は、あまり感情が動かない私でもかなり堪えた。
"無能"
"穀潰し"
"早く出ていけ"
⋯⋯流石に酷くはないだろうか?
とも言いたかった私だが、それ以外を知らなかった私は黙ってその環境に居続けた。
ただ両親だけは穏やかに変わらず接してくれたのが運がよかったのかな?とも思う。
その発現がわかるのが5歳。
そこからだ。私が8になったある日。
"2022年"
寝ている私の頭に突然その言葉が浮かんだのだ。
当時の私は慌てて起き上がり、幻覚なんじゃないかと思ってキョロキョロ見回したんだけど、当然何もなく。
ただそこから毎晩。
毎日違う単語だったり同じ単語が浮かぶ日が増えたのだ。
幻覚やと精神病かと疑った。
しかし何度違うと思っても浮かぶのだ。
今ではそれが何なのかは分かるのだけど、よく当時浮かんできた言葉を繋ぎ合わせたり意味を作ろうとしてできたのが、
"2022年日本は崩壊する"
そんな言葉が具体的な意味だった。
⋯⋯予言?
さすがの私も両親に言い出せず、ただただ隠して。
しかしこの感情や浮かび上がってくる時に流れ出てくるモノに感情が含まれているのだ。
と。私は何かあったときの為にと毎日浮かんでくる単語や文章の日もあったので、記録した。
何月何日こんな事があったよと。
そうすると、段々と今度はその単語を見れる時間が増えていったのが分かるようになった。
ある時は場所を。
ある時は時期を。
ある時はこうしろと。
段々とこうした方が良いという行動すら出てくるようになり、長い文章すら見えてくるように。
日に日にノートに書いていく文量は増え。
そして──あの日が来た。
"トト7,1156727"
誰であっても言いたい事は分かると思う。
買うしかない。
こんなに具体的だとさすがの私も挑戦したいと思う。
そうして親と外出の許可を貰い、一緒に向かった。
道中薄々分かってはいたが、この予言に似たモノは、
"恐らく当たる"──。
そんな確信が私の中にあった。
購入した結果。
「本当に当たった」
的中してしまった。
親は凄く喜び、私もシンプルに当たって嬉しかった。
そこからだ。
親にこの話をしたのは。
両親は二人とも、私の変な話を真剣に聞いてくれたのだ。
宝くじのせいかもしれないがしっかりと聞き。
両親は私のこの力をある種の異端的力なのではないかと結論付けた。
そこから毎日、私は色々な試しを行った。
願ってみたり、良い事に使えばいいのではないか?
試した結果、完全にランダム。
しかしある日を境にこの努力は消える。
『あ、あの』
ある日の晩。
突如として、誰かの声が聞こえるのだ。
『どうか、来る日が迫っているのです!』
声質、喋り方。
──私だ。
『もう時間がないのです!私の予測を超え、迫る日はどんどん加速的に短くなっていってるのです!
封印が解けてしまう!』
気持ちが伝わってくる。
私の必死な気持ち。
だが。
『へぇ』
返ってきたのは、人を小馬鹿にしてるとしか思えない、あまりに冷たい⋯⋯冷酷な一言だった。
『ていうかさ、今俺の状態見てわかんない?』
確かに聞こえてくるのは、水っぽい音と、BGMかのように聞こえてくる誰かの息遣い。
『今行為中なのよ。必死なのは分かるんだけど、俺そういう性癖はないのよ知らん人間にさ』
⋯⋯なんてクズなのか。
私の家にもそういう人間はいくらでも見かけるけど。
人が頼んでいるのにそういう淫らな事をする人間は本当にクズだ。
『封印が解ければ、この日本があの国によって滅びてしまうのです!今も着々と⋯⋯』
『いやいや! 今いいとこなんだよ。頼むって。お楽しみさせてくれよ。俺達良い具合に恥ずかしい年齢じゃん?』
『国の終末がどうなってもいいのですか!?』
『いやいいよ。俺と縁のある人間は俺が守るし』
「⋯⋯あぁ、最悪だ」
かなり詳細な記憶の断片。
今でも忘れない。あの男の声。
明らかに人を見下してる奴の声。
殺意を覚える。
それからというもの。
『じゃあお前、俺の相手しろよ』
『はぁ? とりあえず脱いでから話をしよう』
『お前結構顔と体いいじゃん。封印の前にそっちが優先だ』
『とりあえずそうだな、お前の姉妹とかいれば』
『今前いい感じだから、口空いてるし』
「こんの──糞男ォォォォ!!!」
「だ、大丈夫?」
「ご、ごめん!大丈夫だから!」
最初は声だけだった。
だがそれから日が経過していく毎に増える、映像。
最悪なんだ。
やっぱり聞き違いでもなく、声の主は滅茶苦茶行為中だった。
視点はいつも自分。
だから毎晩見える光景は、土下座をして、少し見上げる光景。
いつもいつも、ベッドの上激しく絡み合っている男と嬉しそうにする獣みたいな複数の女の姿が"視える"のだ。
そこで最初聞いていたような声が聞こえる。
本当に下品極まりないし、不快だ。
もしかしたら、幸運かもなんて思う人間がいるかもしれない。
否定はしない。
事実周りの男子は見たがるし、両親が護ってくれなければ──私も強引にされていたかもしれない。
その事実から見てもそうだろうと思う。
思うんだけど──。
他人の情事は極めて不快だ。
しかも、いつもあのクズは笑って快楽に浸っているような声を出して気持ちが悪い。
女をなんだと思っているのだと。
だが、視える光景は別に待ってくれない。
毎晩毎晩。
だがある日。
「あれ?」
私は気づいたのだ。
驚愕の事実に。
ノートをコピーして、私は並べて読む。
「⋯⋯っ!!」
そう。分かったのだ。
不快な事をしているのは変わりないし、下品な事を言っているのも変わらない。
ただ、私とクズの会話が"微妙"に違うのだ。
「これって⋯⋯まさか」
そう。少なからず、今わかるのは⋯⋯毎晩見ていたあの悪夢に近い映像は、
同じものではない──ということだ。
私のノートを見る目が変わった。
それに内容も。
それから、毎晩毎晩見る流れと会話。
そして。
『だから、なんだって俺が日本を救わなきゃならんのだ』
『お願いします! 貴方しかもう日本を救うことができないのです!』
断片の内容が変わった。
私の意思次第で、変えられるようになったのだ。
これも母上が言っていた力の制御というものなのか。
『じゃあなんだ?お前が※※※の代わりに穴貸してくれんの?』
最低の発言だ。
ただ。いくつか分かった事がある。
一つ。
この男はただこんな発言をしている訳ではない。
私の言葉の気持ちを正確に汲み取って返している。
なぜ分かるか?
それは私の気持ちが視ている時に分かるから。
会話が長い時は私の真剣さ、しっかりと話そうという意識がある時は長い。
だけど、クズとかい良い感情がないと、適当に返されているのだ。
そして二つ。
この男はクズ。
毎晩毎晩、微妙に変わっているのは会話だけではなかった。
女も違っていた。
金髪、黒髪、茶髪、あとは、身体の色も違う時があった。
恐らく外国⋯⋯?
三つ。
どんだけ頑張っても、クズ男の顔を見る事はできない。
フィルターが掛かったように。
男の正体を見せまい。自分で当てろと言わんばかりに──見せてこない。
そして最後。
一度だけ正確に未来が進んだルートがあった。
しかし、それは──"それだけ"は嫌だった。
ただ、彼の発言を聞いていれば、自ずと分かるものだった。
最悪の情事を見せられ、両親にもそんな話を少しずつするようになり、やっと私は中学生になった私。
毎晩視ていき増えていくルート、または内容。
単語が浮かぶ事も増えたし、最近は真っ暗闇で入れば、頭が勘違いを引き起こすというの利用し、制御が出来るようになった。
そのおかげあって、色々応用が効くようになった。
4つの分かったこと。
そして今までの流れを見ると。
"未来で私はこの状況に間違いなくなるということだ"
数年も見ていれば嫌でもそう思う。
だから両親に訊ねた。
これは必要な事なのか?
「私達の家は。日本を守る為に、命を犠牲にしてでもやる事なの?」
答えは単純だった。
「そうだよ。※※が視えているのは、間違いなく重要な事だ。だから、遠慮なく言ってごらん」
軍隊みたいなものだ。
それも前線の。
起こる未来はどうしようもない。
だったら、私の視える力で、どうにかしようじゃないかと。
今なら出来るはずだ。
イメージ。イメージ!!
すると。
『おい、※。しっかり兄弟の分買ったのか?』
『あぁ、しっかり買っている』
???
私の頭は謎になった。
視えるのは、誰かの視点ではなくて俯瞰的に視える。
見えている景色は体格の違う、三人の姿。
日差しの強い日。
中央にいる一番背の低い男が両隣にいる二人に向かって笑顔で喋りかけているのがなんとなく分かる。
そして、まだ私の知らない未来だ。
今、映ったこの場所に──この建物はない。
起きてから調べ、それが裏付けになる。
「てことは、一年から二年後」
そして辿る。
辿り続ける。
私は毎日気力を消耗し、全て視続ける。
『これより、成応学園──入学式を始めます』
毎日、毎日。血の滲むような努力で⋯⋯見続けた。
時には両親の障害となる事件も見れるようになった。
だからか、周囲の見る目が変わってきた。
しかし私は部屋から出ようとはしない。
いつどうなるか、分かるから。
意識⋯⋯。
私の意識一つで、短時間で様々な未来、過去を辿ることが可能になっていく。
断片が。少しずつ広がっていく。
『2014年男子春高バレー、オポジット※※ここで決めたぁー!!』
『え?あの体勢から行く?』
『まさに──落雷のような助走から飛び上がるーーっ!』
『決まったー!!』
『この子なんですけどね?今回が初めての出場となるんですよ』
『いやぁ、将来有望ですね。177cmという中で、まるでチームを救ったヒーロー!その姿から左の不死鳥とまで呼ばれているそうですよ』
視える景色。
そこには、誰かが観客席から本当に実況みたいな不死鳥のしなりを見せる一人の男がブロックの上からボールを叩きつける瞬間。
なんの話?
でも、単語や状況を覚えておかないと。
まだ、辿れるところにも限界がある。
『今の三人組を追って!!』
母上の声。
ある時は俯瞰的に見える。
車から急いで降りて、前に視た3人組に声を掛ける。
『ちょっと!そこの──』
直後。母上の頭がなにか得体のない物が衝突し、頭部が弾けたのだ。
その後母上は亡くなった。
『ちょっ!!』
『コイツから俺と似た気配を感じた』
恐ろしく低い声。
振り返ることもなく、男はそう発し、次の瞬間──死体すら残らず風のように何かが働いて消えていく。
「⋯⋯⋯⋯っ!!!」
トラウマだ。
自分の母親の頭が吹っ飛び、死体すら消し去ってしまうほどの力。
私の家でもそこまでの力を持った人間を見たことがない。
怖い怖い。嘘だと言ってほしい。
なんとかしないと。
何?今の光景。
似た気配?
あのクズ、間違えたら⋯⋯。
とにかく保険だ。
保険を掛けないと。
運転手に伝えないと。
遠回りをしろって。
降りるなって。
母上が──修行して強くなった母上が、何も出来ないまま死んだ。
そうやって、私は未来、過去を見続けた。
この盤面──この日本を守るために。
「成応学園入学式を始めます」
そして今日──私は入学する。
昔から。身体に染み込んだ──運命の転換期となる場所へ。
首を洗って待ってなさい。
絶対見つけ出して、あんなクズ──こっちから性根を叩き直してやる!




