さみぃ
本日も、俺は素晴らしい朝を迎える。
正月は普通に家族で過ごし、神社に行ったり餅食べたり。
まぁ話すこともないくらい平和な時間だった。
別れ際拳哉に泣かれてしまったのだが、ちょっと罪悪感くらいは人間を辞めた俺でも感じる。
だが、やはり俺には女の宴が必要なのだ。
そんな今日は一月の5日。
学校開始がどうやら7日らしいので、あと2日余ってる。
4日に帰宅して⋯⋯色々記憶が吹っ飛んでるけど、あれ?
そうだな。
とりあえずありえないほどみんなで呑みまくったんだっけ?うん。忘れた。
雁字搦めの現在、おそらくそうだろうと思う。
「んっ」
コリックマぬいぐるみと俺を抱きしめ、色気たっぷりの吐息を当ててくる佐藤さん。
一方理沙ちゃんは寝息は聞こえるものの、全く癖がない。
だが、俺の腕を無理やり抱いては、俺の足を両足で絡めている。
理沙ちゃん。
俺達何も着てないの。
⋯⋯すべすべだぜ。
とまぁ──理沙ちゃんと佐藤さん。
まじでどっちも人が変わったように思うんだよなぁ。
佐藤さんは初対面の時は仕事人!みたいな感じだけど、今はただコリックマが好きな乙女。
夜は激しくなる一方だし、何か心境の変化でもあったのだろうか。
理沙ちゃんも元々激しい方ではあったけど、最近もっと凄い。
さすがスポーツをやってるだけあってだ。
男児諸君──もう、動きとかすんごいぞ。
そんな猛獣二人に両腕を奪われ、自然な姿でチュンチュン朝を迎えた俺は、これまでにない幸福感でいっぱいだ。
*
「え? 何それ」
石田くんがキーキー喚いていたが、朝食を食べさせてもらってすぐ。
キッカケは下っ端が読んでいた雑誌。
表紙にはオーと書かれたオカルトに近い雑誌。
少々気になったから顔を覗かせて聞いてみた。
「伊崎のアニキ占いとか好きなんですか?」
「ん?人並みには好きだぞ」
向こうのラートン式ルーン占いなんて凄いぞ。
アイツのやり方でやると、何故か未来まで正確に当ててくる馬鹿みたいな力を持ってる。
ただし自分のが出来ないから何とも言えないところだ。
⋯⋯まぁ理論体系学んじゃったから俺も出来るんだけど。
「意外っすね。俺はそんなの信じないっ!とか絶叫しそうじゃないですか」
まぁ異世界という存在を知って、神様という存在を知って、挙げ句の果てには帰ってきて能力まで使えたら⋯⋯もう普通ではないわな。
「そういうのは信じるタイプだ。
信じて損はないだろ」
と頭上から石田がココアを持って話に参戦。
「伊崎さん好きなんですか?意外ですね」
「おいおい。みんな意外って言うな」
「そりゃそうですよ。心霊とか⋯⋯あっ。ビビってましたね?」
お?喧嘩か?
こえーだろうがよ。心霊は。
「よーし。石田、お前俺とスパーリングとやらをやるか?ええ?」
「ううっ、それだけはやめときます」
凍えそうになりながらソファに座る石田は、一人縮こまって飲んでいた。
──と。
「じゃなくて、その占い⋯⋯今日やってるのか?」
その言葉の真意を感じたのか。
彼らは物凄い勢いで調べだした。
思わず意味不明で笑ってしまう程だ。
「今日やってます!」
「団体客で予約しました!」
まぁ仕事の早いこって。
「はいはい。じゃあ行きたい奴だけ行くぞ。
お前らにお年玉すらやってない俺にキレんなよ」
"お前は貰う立場だろうが"
そうこの場にいる人間から伝わってくるオーラに軽く刺さった俺だが、とりあえずその占いとやらの場所に行ってみることにした。
*
「うっ、寒いわ」
「だから服着てくださいって言ったじゃないですか」
「いやほら、見ろ石田」
と、ある状態を見せると。
「伊崎さん?」
笑顔でピキピキッてる〜こいつ!!最高〜!
「伊崎様?こんな姿で恥ずかしくないんですか?」
「ん?いや全く」
俺は佐藤さんのロングコートに入り込んで一緒に歩いていた。
佐藤さんも理沙ちゃんも、身長高いからサイコー。
そんでそれを恨めしそうに眺める石田がまぁ可哀想に。
「おっ、あれか」
にしても、きったね。
古い雑居ビルみたいだ。
こんな所に凄腕の占い師が居るって?
「おい、こんな所にいるのか?本当に」
「アニキ、ほら見てくださいよ!」
雑誌の一ページには確かに読者の色々あるレビューにここと書かれており、よく当たる。
"この占い師は色々な物に携わっており、一つのやり方ではなく見ている。まるで裸にされたようだ"
⋯⋯まぁ。もしこの文言が本当なら、かなりの熟練度があって、かつ正確性が高いということになる。
行く価値はまぁあるか。
「まぁ正月だしな。みんなで出かけるのもいいだろう」
佐藤さん暖かい。
ぬくぬく人肌恋しい季節季節ー。
ホラー映画のような年季の入った薄汚れた階段をのぼり、暖簾をくぐる。
「いらっしゃい」
「⋯⋯心臓止まるかと思った」
見た目は50代くらいの異常なくらい背の低いオバサン。
バンダナを巻いて、丸眼鏡を掛けている。
「予約してくれたのはこの人数かい?」
「そうです。大丈夫そうですか?」
「いいよいいよ。でもこんなに入ってくると思ってなくてねぇ。椅子が足りないんだぁ。ちょっと待っててね」
今、サウナくらい熱気がヤバイしな。
俺達が一方的に押し掛けてんだからしゃーないわな。
石田とオバサンの会話がある程度分かったので、俺たち主要の人間だけ外に出て少し待機。
ウッキウキのアイツらが「そんなぁ」みたいな顔されたら、さすがにいたたまれない。
少し早い昼飯を食おうとしたのだが、アイツらと寿司を予約したのを思い出して近くのベンチで待機していた。
「伊崎様。長袖一枚は失敗でしたね」
「そうですよぉ。折角のイケメンさんが台無しです」
佐藤さんと理沙ちゃんは褒めるのが上手いこと。
二人に挟まれ温まる俺を見ている石田がキレそうなのは置いておいて、銀は暑そうだ。
「銀は耐熱凄いなぁ」
「まぁな。極寒の日を何回も過ごしてるとこうなる。大将は⋯⋯ノーコメントだな」
「あれ?そういえば星は?」
「家から出たくないそうです」
「アイツ⋯⋯」
まぁいいけど。
あんまり外に良い思い出がないからだろうけど、まぁ仕方ないか。
「しっかり出前取るよう言った?」
「はい。その辺りは抜かりはありません」
「石田は仕事"は"出来るのになぁ。女が出来ないのはなぁ?」
「あれれ? 人に仕事を任せて女の子と乳繰りあってる中学生に言われてもねぇ?
普通の中学生はクラスの女の子に恋して青春してますけどねぇ?
大人な女の子侍らして何してるんですかねぇ?
⋯⋯えぇ?」
よぉーし。
よろしい──ならば全面戦争だ。
「ほぉ? その割にはいつも血管浮き上がってたよなぁ? この間なんて──理沙ちゃんが俺と※※※※※※」
ピー音合戦になり掛けたところに、運良く下っ端がやってくる。
「アニキ!皆さん以外終わりました!」
あっぶね。今凄いこと言いそうになったわ。
「そうか。何人くらい座れそうだ?」
「はい。一応3人くらいっすね」
じゃあ俺は最後でいいや。
「佐藤さん達先行っていいよ?お金は全部俺が出すから安心して時間掛けて占ってもらって来て」
「いや⋯⋯っ。さすがにそんな事させられないですよ!私達大人ですし」
「いいのいいの。石田がその間温めてくれるから」
おいアイツ。マジで吐きそうになっとるやんけ。
そんな俺の事が嫌いなのかよ。
「あ、あまりお断りするのもあれですし、先輩行きましょ!⋯⋯折角の占いですよぉ!」
理沙ちゃんは俺が動かないのを察したのか、佐藤さんの背中を強引に押しながら中へ入っていく。
「ちょ、ちょっと待ちなさ──す、すみません!お、お先にっ!」
「はーい。楽しんでおいでねぇ」
中へ入っていく二人と、終わった下っ端くんたちの幸せな表情を見てこう思う。
⋯⋯あれ?実は俺ってイイやつじゃね?




