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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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大晦日

 おそらく向こうでは今頃、阿鼻叫喚な光景だろう。


 頬杖をついて見えるリムジンの窓から自分のマンションが見えると、やっと実感が湧く。


 救ったのだと。


 8月最終日。

 俺は家族を誰一人外へと出すことなく一日を終えることに命を賭けた。


 何故か知らないが、あの日、"やたらと全員家から出たがっていたからだ"。


 そのおかげでこうして、家族は無傷で生き残っているのだから。


 「銀、念の為だが」


 「もう送っている。確実だ」


 そう扉を閉め、俺は実家へと足を進めた。


 




 「あ、お兄ぃー!」

 「お兄ちゃーん!!」


 「ンゴッ!」


 強烈な突進攻撃に思わず玄関で膝をつく。


 「久しぶりだな、弟よ。妹よ」


 「ねぇねぇお兄ちゃん! 友達できたんだ!」


 「ほう?そうか。拳哉」


 「うんっ! みんながね? みんな──」


 「ほらお兄ぃ! 早く入ってよ!」


 「お前らみんな強引だなっ!」


 さっさと俺の靴(お高い)を強制的に脱がされ、背中を押されてリビングへと飛ばされる。


 「父さん」


 「湊翔、久しぶりだな」


 変わらない。


 「少し太った?」


 「こら」


 クスッと笑いながら腹に軽くパンチが入る。


 「はは、良かったよ。しっかり食べてて」


 「湊翔のおかげでな。そっちはどうだ?上手くやれているのか?」


 手を洗いながら父の質問に端的に答える。


 「うん。学校も順調だし、高校も一応」


 「おぉ、丁度聞こうと思っていたんだ。どうにも要領を得ない返事だったからな」


 「99%成応学園になりそう」


 椅子に座って答える。

 すると目の前に麦茶が出され、見上げると嬉しそうな母の顔。


 「久しぶり」


 「もうー!早く来てよ」


 「ごめんごめん」


 「ちょっと待ってな⋯⋯え? 本当なのか?」

 

 携帯で少し調べていた父が青ざめ、ロボットみたいなカクカク加減で俺を見る。


 おそらく学費だの、世間の声だのがあったのかな。


 「うん。会長がここだったら問題ないなって」


 「相当見込まれているんだな」


 「うん。一応クリスマスに送ったと思うんだけど、サバの原案は俺だし」


 「あんなに美味い刺し身を食べたのは初めてだった。さすがだな」


 向かいにいる父が誇らしげに笑う。

 

 まさかこんな会話を父とするとは思わなかった。


 感慨深い。


 「そうよ!」


 思い出したように母がバタバタ走って何かを取りに行く。


 「そーくんからの荷物みんな開けずに待ってたのよー?」


 え?開けてないの?

 結構反応楽しみにしてたのに。


 「じゃあ折角なら俺から渡そうか」


 立ち上がって母からダンボールを一つ一つ見ながら確認する。


 「あっちにまだあるでしょ?」


 「そうなのよ。一体何を買ってきたの?」


 「お、お兄ぃからのプレゼント?」


 みんなが集まってくる。


 「じゃあ、まずは拳哉から」


 「うわー!おっきい!」


 「湊翔サンタからクリスマスプレゼントだ」


 大きいダンボールを嬉しそうに開ける拳哉。


 「えー!!!!お兄ちゃん!」


 「どうだ?湊翔サンタは分かるだろう?」


 中身は戯武王のカードのスターターデッキを"全部"買ってきた。


 コンビニ、スーパー、あるだけ。

 デュアルマスターも全盛期だろう。


 俺は出来なかったが、拳哉はこれから楽しいだろう。


 友達にも自慢できるしな。


 あとは、中には3AS、Woo、大量のゲームタイトルと後なんだっけ。


 俺が出来なかった青春を拳哉には入れた。

 モンステッドハンターが手軽に出来るようになっただろうから、この家にもWiFiを入れてもらわないとな。


 「お兄ちゃんー!!!」


 「おーおー大丈夫だぞ」


 飛び付いてきた拳哉と、ドン引きの三人。

 多分総額、下手したら100はするだろうから。


 スターターデッキだけでもウン十万したからな。


 「ちょっとそーくん! こんなに買ったら」


 「良いじゃない。今まで遊べなかった事を含めると」


 笑いながらそう言うと、押し黙ってしまう。


 「よーし、じゃあお兄ちゃんと約束だ」


 「うん!」


 少し言葉を溜めて、俺は目線を拳哉に合わせる。


 「──何かで一番になれ。その資質がある」


 「うん!一番になる!」


 「よし。それでこそ俺の弟だ」


 この俺のな。


 「次は南だな」


 「なんかこの後だと⋯⋯怖すぎるんだけど」


 またも馬鹿でかい箱を開ける。


 「ほれ」


 追加で南には箱が4つ程ある。


 「怖い怖い怖い怖い!」


 「そんな大したことない」


 開けさせる。すると、南の表情が激変。


 「これからお兄様仏様神様と呼ばせていただきます!」


 南には大量の服を入荷した。

 WEYGoのショップで片っ端から買い込んだ。

 

 あとはプチプラらしきものやその辺は分けてある。


 メイク道具なんか佐藤さん辺りに調査してもらって南くらいの年代で流行っているものを投入した。


 あとはヘアアイロン、ドライヤー。

 女の髪は命は向こうでも一緒だったから、一番高いのを買ってきた。


 これは母も同じだ。

 あとは。


 「えっ!?」


 俺と母を交互を見つめる。


 「え、エイフォン!?」


 「むしろ遅いくらいだろう?クラスでアタマ張るにはスマホが必須だと思ってな」


 現金も追加して、欲しいカバーは自分で買えと付け加えて。


 「帝王になっておけ。将来社会で活きる」


 それとあとは、島田商店だなんとか言ってた一流のお店で。


 「こ、これ⋯⋯」


 「将来パティシエになりたいのだろう? 一流の店で買ってきた道具とレシピ本とかだ」

 

 「あ、ありがとう⋯⋯」


 胸に抱えた本をギュッとしながら、南は半泣き。


 泣かれるとは思わず、咄嗟に抱いて頭を優しく撫でた。


 「大丈夫大丈夫」


 出さないだけで、色々あっただろう。

 少し、報われただろうと、信じたい。


 「そして──」


 振り返って、俺は紙袋から2つ取り出す。


 「二人にはゲームとか服とかはそんなに言う程でしょ? 息子からはこれで」


 と、明らかに高そうな箱を渡す。

 

 「湊翔、これは?」


 「まぁまぁ開けてよ」


 開けると夫婦見合わせて少し動揺している。


 「そーくん⋯⋯」


 二人はしんみりとした雰囲気で互いの指に追加していた。


 コリティエというブランドのトリリンティ?だっけ。


 とりあえず小さいダイアの粒がふんだんに使われたペアリングだ。


 二人の指輪はもう古くて少し新しくした方がいいなと思っての判断だ。


 150万くらいした。

 だが、これくらいでなければ。

 俺の"両親"なのだから。


 「ありがとう」

 「湊翔、大切にするよ」


 「夫婦仲良くね。母さんが支えてるんだから、父さんも諦めないで」


 「⋯⋯あぁ」


 「あとは、南と拳哉にはPC買ってきたから」


 「「「「⋯⋯え?」」」」


 「え?これからPCなんていくらでも使うんだし、むしろそっちの時代でしょ? 早くに触って、先取りしないと」


 「お金大丈夫?」


 「南、心配するな。俺には金がたっぷりある。ここで使わなきゃ使いドコロというやつがない」


 動画サイトやその辺りもまだスマホで快適な時代じゃないしな。


 「さ、しっかりプレゼントを贈れたということで、明日の大晦日──楽しまなくては」


 サバを始めとした様々な食材は既に送っていた。

 後は皆で明日楽しむ為のものだ。


 「みんなで飯を食ったら、Wooでもやろうよ」


 「あら、イイわね!」


 「やったー!」





 そんなこんなで、俺の家族時間はあっという間に過ぎた。


 みんなでお菓子を食べながらゲームをして、コタツの中でぬくぬくしながら喋って。


 拳哉とは二人通信で略してモンハンをやりながら、南が信仰してくるのであしらいながらやり続けた。


 南は好きな男が出来たらしい。

 しかしトップカーストなことから自分とは差がありすぎて難しいという。


 助言など思いつかない。

 とりあえず意識させないと話にならないんじゃないか?くらいしか言えなかった。


 それから別の時間で母とは最近の話をしながらお菓子を作った。


 俺があまりにもセンスがなさすぎて途中から母単独になった。


 しかし終始笑顔が絶えることは無かった。

 何度もミスをしても、面白くて仕方なかったくらいだ。


 父とは将棋を習いながら沈黙大半の時間を過ごした。


 なんとも言えないが、男親子の時間の過ごし方といえばいいのか。


 悪くなかった。

 酒が飲めるようになったらな。なんて言ってたが、将棋をやるなら違うだろう。


 まぁ、人それぞれか。



 それから次の日、大晦日は大いに盛り上がった。


 そば、うどん、サバ。

 地球の人生では決して口にしなかったような高級食材から一般食まで、口にしながら家族団らん。


 当時売れっ子アイドルグループのジョニーズや流行りの歌手を見るのが新鮮で、当時こんな感じだったなぁと思い出す。


 笑ってはいけないを見ながらジョニーズのカウントダウンを眺め、俺にとってはある意味感動ものの──2013年。


 「「「「ハッピーニューイヤー!!」」」」


 「今年もよろしく〜!!」


 家族が盛り上がっている中、俺は少し昂ぶった感情を抑えながらその数字を眺める。


 地獄だった2012年はもう終わった。

 これから、本来なかったはずの道が始まると。


 ある意味、俺も報われたのかもしれない。

 

 「お兄ぃ!早くこっちこっち!」


 「そうだよお兄ちゃん!早く年越しそばたべよ!」


 こうして、家族が嬉しそうにしている所を見れたのだから。


 「⋯⋯あぁ。今行く」


 母がデジカメを構える。

 家族全員が集まり。


 「はい、チーズっ!」


 カシャリ。

 

 「こう見ると拳哉と南は似ているのに、俺はあまり似てないな」


 「えぇ、お兄ぃ私と目とか似てるじゃん」


 まぁ。いいだろう。

 俺はただ。
























 ただ⋯⋯この光景を見守る為に帰ってきたのだから。


 「ほら!お兄ぃ!」


 きっとこの光景の中に"俺"がいる必要はない。


 だが、俺は俺から見えるこの景色を──これからも見れるように。

  

 地球の誰もが刃向かえないように。


 俺はこの先も見守り続けないと。

 あの狭い家でも、このリビングでも。


 俺が欲しかったのは⋯⋯最初からこの景色なのだから。


 って、クズの俺が言っていいものじゃねぇな。

 

 ⋯⋯ケッ!

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