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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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変わってしまった男の始業式

 「いーやーだー!!!!」


 駄々をこねる。

 いや、もはや赤子に還ったかのような絶叫である。


 自分でも分かっている。

 御歳四桁に迫る男が泣き叫ぶ絵面がどれだけ酷いかを。


 しかし──。

 無理だ。制服を着て時間通りに学校に行くのは。


 あそこにある時計を見て欲しい。

 まだ朝の8時だぞ。


 ⋯⋯俺は昼頃に行きたいのっ!!!!!

 起こすなァお前らァァ!!!!


 「ほら伊崎さーん。登校時間ですよー」


 「嫌だぁっ! 行きたくない!」


 「行きたくないのはわかりますけど、起こしてって言ったの伊崎さんですよ?」


 ⋯⋯ギクッ。


 そう。彼らはただの善意と命令通りに仕事をこなしているだけなのだ。


 この中で俺が一番クソなのだ。


 「くそっ、こんな事言おうモノなら、一瞬で消し飛ばしていたのに」


 「はーいそんな物騒なことを言わないでくださーい。

 朝食作りましたから、食べて下さーい」


 リビングに出ると、銀の所のガキと強面達数十人が幸せそうにカレーを無言で食べているいつかの図。


 俺はというと、別席で卵を使った⋯⋯これなんだったけ。


 「これは?」


 「スクランブルエッグです」


 そう。それと、棒の肉やらなんやらの料理だ。

 昔見たことがある。


 よく食べていたはずだ。


 「いただきます」


 ⋯⋯あー。学校行きたかったはずなのに。

 今は行きたくなーい。


 これが人間ってやつか。






 「それにしても、伊崎さんはてっきり学校なんて行かねぇ!って言うと思ってましたから、意外ですよ」


 「俺も同じ事を思っていた」


 「学校は行きたいだろ」


 そう言うと、鏡越しに石田がへっ?みたいな顔をしている。


 「いやあんなに行きたくなさそうだったじゃないですか」


 「俺は俺の行きたい時に学校へ算術を学びに行きたいんだ! 時間通りに行動なんてしたくないんだよ」


 「「算術って⋯⋯」」


 「とにかく! これは早々に解決しなければならない問題だ」


 くそっ。

 こんな朝っぱらから制服を着て学校へ行くのを毎日やれだと?


 冷静に考えたら、この俺が誰から学べと言うんだ。

 青空教室で5000人のガキを集めた俺と、たかだか量産している教師──。


 どちらが優れているかは明らかだ。


 「いやぁ⋯⋯こういうところを見るとまだ中学生なんですよねぇ」


 「なに?」


 「まぁあまり気にしないで欲しいんですけど、伊崎さんって妙にピンポイントで知識が凄かったり回転が早いと言いますか⋯⋯見た目と一致しないなぁって」


 中々鋭いな。

 俺だって思い出したいが、頭に魔力を回すのはかなり負担が大きい。


 必要な時以外は出来るだけやりたくないんだよ。


 「あっ、どうします? 校門まで入ったら目立っちゃいますけど」


 「俺がしばらく歩けって?」


 「はい、失礼しました」


 オイ何だその顔は、嫌そうな顔をしろよバカタレ。



 

 

 「伊崎さんの鞄に入っていた書類からお昼頃には終わるようですから、時間になったら迎えに来ます」


 「あぁ、頼む」


 「それでは──行ってらっしゃい、伊崎さん」


 低く唸る車は校門から去っていく。

 

 はぁ。

 仰ぎ見ると身体は覚えているのか、どこが懐かしさと嫌なざわざわ感が全身を走った。


 何処か古い壁に垂れる部活の横断幕。

 全国に出ただの、市で何位だのと。


 そういやあったなーと思いだす。

 そうして校門に足を踏み入れ、歩き続けていると。

 

 『白波さんおはようー!』

 『今日帰りカラオケいこー!』

 

 前方の方で絡まれている白波の姿があった。


 中学の制服を見る事ができるのは今だけか。

 学年一のツートップの片割れ。


 もう一人は誰だっけな、覚えてたら十億貰えるくらいのもんだ。


 てかツートップだけでも金くれてもいいくらいだろ。

 誰か寄越せ。


 「⋯⋯⋯⋯」


 見ていた俺に気付いたのか、少し小さく手を振って下駄箱の方へと向かっていった。


 ふっ、誰にでも優しいバケモンめ。


 





 始業式はダルかった。

 校長の話とかがあり得ないくらい長く、学生時代名物を感じる。


 だが、歳のせいか、そこまで気にならなかったのは口が裂けても言えない。


 終わって教室へと向かう途中、色々一悶着あったのだが、あまり面白くなかったので割愛。


 周囲の目線が色々凄いところだったが、俺はあまり気にならないタチなので全く問題なく済んだ。


 校門までの道のりも色々あったのだが、面白くなかったので割愛。


 ただ、一人の少年が凄く可哀想な顔をしていたので、絆創膏をあげた。


 そうして迎えに来た石田たちと合流して開放された俺は、明日からの日々の為に秘密基地ではなく、近くに車を止めて三人で歩きながら⋯⋯文房具やらなにやらを買いに向かっていた。





 「伊崎さん、それ普通に暴力事件では?」


 「俺達の時代ならまだしも、大将の時代はまずいんじゃないか?」


 「え?そうなの?」


 軽く話を聞いてもらおうとしただけなのに。


 「鼻がー!って言ってたんですよね?」


 「ん?うん」


 「折れてたら大変ですよ?」


 ⋯⋯うん。

 ゆっくり鼻で深呼吸しながら、俺は常識の違いを噛み締める。


 「昔ならヤンチャで済みますけどね⋯⋯あはは」


 「しかし大将だからなぁ」


 「おい、その災害なんだからなぁみたいな話し方はなんだ?」


 「え?違うんですか?」

 「違うのか?」


 「違うだろ」


 「無自覚は災害って言うじゃないですか」


 そういうものか。

 でもなぁ。今から性格直せとか言われても。


 「って、着いたな」


 リヲンだっけか。


 「今の子供は良いですよねー。

 ショッピングモールなんて俺達の時代にはなかったですよね?アニキ」


 「だな。何処で遊んでたんだろう」


 「公園とかじゃないですか?」


 「それは今も変わらないだろう?」


 と、色々地球名物のコーナーを巡る。

 入ってすぐ本だの喫茶店だの、ブランドエリアだの。


 まぁ大人から見れば分からないが、少なくとも若年層から見れば十分お洒落と言える場所だ。


 必要なものが大体揃ってる。

 今日必要な物はエリア説明という所に載っていて、一階にほとんどあった。


 そっちに向かって、必要物資を買っていく。


 「おー、自分でカスタム出来るボールペンだと。

 銀、兄妹に渡してやれよ」


 「⋯⋯大将、俺の方はいい」


 「いや、警護なだけで、私用は私用で平気だ」


 と、しっかり顔を見ると、銀の様子が変だ。


 「そうじゃない」


 「ん?」


 「俺は──全く勉強したことがないから分からない。

 あと、絶望的にセンスがないそうだ」


 はぁぁぁ。


 「ほら、つべこべ言ってないでこっちだ」


 銀の手を引っ張って、一緒にボールペンのカスタムとやらを選ぶ。


 折ってしまわないか心配だの、要らないと言われたら悲しいだの、色々その巨体に似合わぬ言動ではあったが、気持ち自体はあるのは分かる。


 そうして選びながら、姉がいる石田も連行して色々買い漁る。


 今流行りのベロッとめくれる筆箱だ、石田の方は万年筆とか。


 少しお高いボールペンやノート、本当に色々買い占めた。


 一本2000円近くするシャーペンがあり、これは買うしかないとあからさまに店員さんが引き攣りながら会計をしているのを見て、若干申し訳なくなったのは俺がケルビンという立場を忘れ始めたからなのかと思った。

 

 ちなみに後日、銀の方は「要らない!」とちゃんと言われたそうだが、数日してみると、しっかり銀のやつを使っていた。


 隠れながら見ていた俺達は銀にほら!とドヤ顔で背中を叩いて笑ってやろうと思ったが、何故か嬉しそうに男泣きしていて、石田と苦笑いしたのは笑い話だ。

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