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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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悪魔の正体は中学生?

 「会長の容態は?」


 襟を正す短髪の中年男性が、スーツに付いた汚れを払いながら会長の治療をしている医師に尋ねる。


 「⋯⋯⋯⋯」


 緊張した様子の医師を見た彼は、足を組み直しながら言う。


 「緊張せずとも構いません。正直な事を仰っていただければ。如何でしょう?」


 「状態という話をさせていただければ、もう難しいかと⋯⋯思います」


 「ふん⋯⋯」


 深い鼻息と共に窓の外の光を眺める。


 「そうですか。ありがとうございます。

 父さん、そろそろ行くよ」


 軽く医師に挨拶をし、病室から出ていく。


 


 「父さんは、もう⋯⋯難しいですか?」


 「⋯⋯⋯⋯」


 それから数時間。


 今度はジェルを使ってしっとりとしたミディアムヘアーくらいの⋯⋯先程よりももう少しだけ若い男が悲しそうに医師に尋ねる。


 「そうですか」


 医師の顔色が視界に入った男は静かに立ち上がって、丁寧にお辞儀をして病室から出ていく。




 「父をどうにか助けられませんか?医者でしょ?」


 「こればかりは⋯⋯私共としても」


 厚い化粧をしているキツイ表情が特徴的な女性が高圧的に発する。


 「ほら、美音、おじいちゃんに挨拶なさい」


 「おじいちゃん⋯⋯」


 眠っている手を握り、泣きそうな顔をしている中学生くらいの女の子。


 「そろそろ行くわね。父の面倒は任せます」


 「は、はい」


 何度もお辞儀をする医師を背に、スタスタと去っていく女性と女の子。

 



 「⋯⋯⋯⋯」


 そしてまた時間が開き、ただ黙って下を向いたまま手を握るド派手な服を着こなす少し若い女性。


 「ママー、おじいちゃんお空に行っちゃうの?」


 「うんうん。そんなこと無い。あるはずない」


 しばらくその状態のまま、女性は立ち上がり。


 「父を、よろしくお願いします」


 医師に深くお辞儀をして、まだ小さい子供と手を繋いで、病室から出ていく。






 

 夜。

 私は一生続くような孤独感とハッキリとした意識の中。


 待ち続けた。

 いや。それ以外に選択肢など⋯⋯残っていなかった。


 怪しい民間療法。

 怪しい水。

 怪しい数珠。


 様々なものを試したが、どれも効果はなかった。

 死に瀕した人間は、生を手にする為なら──悪魔と取引してでも懐に入れたがる。


 敵対会社ではあるが、一人の社長は自分の娘を出してでも体の細胞が若くなるようなモノを持つとされている人間と交渉したと嬉しそうに言っていた。


 ある社長は、ありえないくらいの金銭を払って色々な事を試したと言っていた。


 その時私はまだ理解など出来なかったが、こうして当人になると、手を出してしまう気持ちが凄く分かる。


 入院する前、それこそ多額の金を払ってでも食事、運動、環境を整えたりした。


 ⋯⋯結果はこの通り。


 「⋯⋯⋯⋯」


 迫る死期を悟りながら、これまでの人生を強制的に振り返らせ、そして──願う。


 縋る。

 願う。あの死神と喋る為なら──金など惜しくはない。


 アレは幻想だったのか?

 私が生み出したただの曖昧になった夢なのか?


 その答えが⋯⋯今。



 ーーカチッ。



 分かるのだろう。

 

 ──私の天運が味方に付くか。

 ──ただの夢物語なのか。


























 ーーヒュウウウ



 「⋯⋯っ」


 音もしなかった病室が、少し氷が当たったような夜風の匂いを感じる。

 

 そして、視線の奥に見える⋯⋯昨日と同じように寄りかかる死神の姿。


 渇望した。

 待ち望んだ死神が──今、目の前にいる。


 「さて、昨日の答えを聞かせてもらおうか」


 何を言っている。

 もし、その言ってる絵空事が、"本物"ならば。


 「おいおい⋯⋯俺のやついらねぇんじゃねぇか?」


 ──力が湧いてくる。


 醜くてもいい。

 手にする。

 全財産を払ってでも。


 手にするのだ!!!


 「⋯⋯ゎ⋯⋯しぃ⋯⋯たはっっっっ」


 ピー!ピー!!


 寄越せ!!

 ソレを!!


 「ふっ⋯⋯契約成立だな」


 ソレを飲み干す。

 これが何だろうと構わない。


 醜く終える老人を延命出来るのなら──なんだってしてやる!!


 「⋯⋯ッは!!」


 止まりかけた心臓が、"動く"。

 跳ねる、跳ねて跳ねて跳ねて跳ねて。


 全身に血液が回るような感覚。

 限界まで喉が渇いた時に水を得たときのようなモノだ。


 呼吸⋯⋯出来る。 

 顔が⋯⋯動く。

 体が⋯⋯軽い。


 なんだ?

 伸びるどころか、昔に戻ったみたいだ。


 「⋯⋯ッ」


 両手を見ていた私は、窓を見つめた。

 そこには、見た目はそこまで変わりはしないものの、明らかに血色が良くなった自分の顔があった。


 ドクドクとマグマのような焼ける熱さ。

 魂が燃える音すら聞こえた。


 「感動に浸っている最中に悪いんだが」


 そうだ。


 「立てるか?」


 ブチブチと繋がっている管を無理やり外し、数年ぶりの地面を自らの足裏が踏みしめる。


 「⋯⋯ぁ」


 思わず全能感に浸ってしまいそうになる。


 なんだ?

 まるで若い時のような、フラつきもなければ、神経のようなものがビックリすることもない。


 「こ、これは⋯⋯」

 

 神──なのか?


 ありえない。

 約1年以上はまともに外に出れていなかったんだぞ?


 それが⋯⋯。


 「さて──」


 声の主へと向き、しっかりと耳に全神経集中させる。


 「⋯⋯っ」


 死神が、フードを取る。

 

 「さて、諸星財閥会長。幾ら俺に金を払う?それとも──別のモノで取引するか?」


 まだ、子供の面影がある。

 いや、もしかしたら、本当に?


 「子供⋯⋯?」


 「あぁ、受験を控えている中学三年生だ。

 よろしくどうぞ」


 そんな差し出された握手を受け取り、私は呆然とする。


 「そろそろ、うるさそうなので、ここに電話してください」


 電話番号が書かれた紙切れを受け取ると、もう既に少年は昨日のように消えていた。


 「諸星様!!」


 すれ違いざま。

 

 担当医が入ってくる。


 「か、神の⋯⋯奇跡?」


 夜の後光を浴びていた私を見た担当医が、思わず固唾を飲みながら呟いた。


 立って、夜空を眺める異常事態。

 

 「ふんっ⋯⋯はっはは」


 これは、神からの啓示だ。

 

 「ハッハハハハハハハハ!!!」


 まだ、終わるなという神からの啓示に違いない!!


 「諸星様!落ち着いてください」


 「これが落ち着いていられるか!!」


 そうだ。これから、まだまだ私の野望は終わらない!!

 あの少年⋯⋯名前は、なんというのだ?

 好きなものは?

 嫌いなものは?

 どんな女が好みだ?


 何としてでも──私の中に引き入れるぞっ!!!

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