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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
国内無双編

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病室に現れた悪魔

 こんにちは。作者です。

 昨日は白波編が無事終わる事ができて嬉しく思います。


 ここまででギフトしてくれた皆様や、コメントをしてくれた方々には作者のヘドバンを是非とも披露したいところです。


 しかし、ギフトというのを貰ったことがなかった身なので、あれは何かガチャのようなものがあるのでしょうか?


 と、本日から新章を始める予定です。

 一章は作者から見ても重すぎる内容だったので若干の反省をしております(笑)。


 残念ながら、多分懲りてはいません。

 別の作品でも真っ黒黒助な内容が多いので。


 とまぁ余計なお話はここまで。

 ここからは、伊崎くんがやっと必要な事から開放されて何やら色々昔やりたかった事をやりたいらしいので、是非お母さんのつもりで眺めて頂けると有り難いです。


 長くなりましたが、皆様、ありがとうございます。

 by作者

 諸星道隆、69歳。


 主な実績は日本に建設革命を起こした張本人である。


 バブル崩壊後、冷え込む日本の中で民間都市開発⋯⋯通称駅直結タワー型を提唱した最初の人間だ。


 わかりやすく言えば、現在の駅にはカフェや飲食店があると思うが、それを最初に導入したのがこの人だ。


 空きテナントが並び、通行人すらまばらな六本木の東エリア。


 そこで諸星道隆はカフェとマックを駅直結タワー内に導入した。


 瞬く間に収益が上がり、六本木の活気を完全に取り戻した。


 そうやって周辺のビルや商店街を正当なやり方で買い占め、根回しを行い、諸星タウン構想を立ち上げた。


 僅か3年も経たぬうちに9割以上の地権を手にし、自ら作り上げた都市を貸し、動かし──経済ごと牛耳るまでに至ったのだ。


 そうして建設界では知らぬ者がいない程の規模にまで成長し、誰もが知る未来ではあの六本木となった。


 ⋯⋯そんな日夜走り回りながら富を手にし、地位を手にし、権力を手に入れた建設界の重鎮となった男は今。


 ──生命の終わりを迎えようとしていた。





 「ぁぁ⋯⋯っぁ」


 声が、出ない。

 息が⋯⋯まともに出来ない。


 終わるのか。

 様々な人間から不死鳥とまで呼ばれたこの。


 ──この、諸星道隆が?


 自分でも分かっている。

 いくらどう足掻いても、人間である以上は死から逃げる事は出来ない。


 自然の摂理。

 散々やり切ったのではないか?


 女遊びもした。

 友情を育んだ。

 仕事も──。


 妻が出来て、子供を育て、そして。



 ーー会長はいつになったら⋯⋯

 ーーもうあの人の時代は終わりだ。

 ーー跡継ぎの件に関して⋯⋯



 歳をとり、弱くなったら──媚びへつらっている奴らがここまで手のひらを返すとは。


 息子。孫。

 みんな⋯⋯私の前では良い子であろうとしているが、裏では権力や株の取り合いをしている。


 なんて悲しい戦争なのか。


 無機質な空間でピッ、ピッと私の頭の中で響くこの病室。


 頭がおかしくなりそうだ。

 意識があるのに、ずっと続くこのリズムは、まるで死のカウントダウンそのものではないか。


 気が狂いそうだ。

 皆が私に死んでほしいと願うのを見ながらただ天井を見る余生。


 ⋯⋯しかし。


 私が感じているのは。


 "まだ、私はこの日本という国をもっと素晴らしい国に変えたい"


 その一心だった。

 遊びという遠回りはしていた。


 しかしその根っこにあるのは──この国を世界でもっとも素晴らしいと言わせる為に、昼は頭を下げて周り、夜は一気飲みをしながら周りの社長達から信頼を勝ち取ることだった。


 まだ、まだ⋯⋯っ。


 



















 終わってたまるか。

 この諸星財閥を創り上げた⋯⋯この不死鳥が?


 病気如き──くそっ!!!


 「⋯⋯?」


 その時、無機質な音に囲まれた部屋の中で、空気が変わった感じがしたのだ。


 そう。天井から視線を落とすと、窓は開いている。


 なに⋯⋯?


 「諸星財閥会長、諸星道隆」


 夜風がおかしな程吹き荒れる。

 その中で若い少年の声が聞こえてくる。


 必死に、その声の主の方へと顔を向ける。


 フードで素顔は見えない。

 しかし、何かが異常なのだと私は感じた。


 空気? 佇まい?


 ──違う。


 根本的な⋯⋯人間としての"格"なのだろうか。

 覇気やオーラといった言葉だろうか。


 醸し出している雰囲気がまるでそこいらの社長や政界の人間よりも数段上だ。


 しかし、言葉を発する事はできない。


 私は視線を強くする事しかできない。


 「一つ質問がある」

 

 この人間は、死神か何かなのか?

 寿命を迎える前の、ナニカなのか?


 壁に寄りかかり、腕を組んでいる。

 この私の前で。


 「まず確認だ。お前が諸星財閥会長諸星道隆で合っているか? 合っていたら一回頷け」


 強く頷く。


 「そうか。では、一つ質問をする」


 死神なのだとしたら死ぬ前に何が食べたいかとかだろうか。


 「──生きたいか?」


 何を当たり前な事を⋯⋯。


 渇望だ。私の全身が渇望に満ち溢れている。

 まだ、まだだと。

 老いぼれの身であろうと、この魂が言っているのだと。


 まだだと。


 「その瞳、よっぽどだな。であれば、どうだ?

 一つ俺と取引をしないか?」


 口調に獣を感じる。

 昔の私を見ているようだ。


 「そうか。頷くか。じゃあ──早速」


 そう言うと懐から謎の容器を出した。


 「これは、アンタの寿命を大幅に延ばすことのできる今のアンタからすれば手が出るほど欲しい代物だ。

 ⋯⋯なに、その心配そうな顔は。


 残念ながら、コレに"欠点"はない。

 ただ、延ばすことができる」


 くるくると回し、私を煽るように嬉嬉として喋り続けるこの若者。


 何が目的なんだ。


 「さて──コレの話は一旦お終い。

 取引と行こう。


 さぁ、いくらくれる?アンタの命の代金だ。

 諸星財閥会長の権力と富、全てを取り戻すことのできる個体諸星道隆の命の代金だ。


 さぁ、どうする? 

 と言っても、すぐに答えは出ないだろう。

 明日⋯⋯同じ時間にまた来る。

 それまでに答えを出せ」

 

 次に瞬きをした時、既にその若者は風のように消えていた。

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