味方になるということ
「それでは、詳しい説明に入らせていただきます」
都内郊外某所。
そこでは全国から集まる人間たちがいた。
「ふっ、あそこに居るのが退魔師ってやつか?
亜流が舐めやがって」
「⋯⋯⋯⋯」
言われているのは、神人と言われている草薙当主である。
しかし全く反応すらしない。
「懐遠、あの日本人反応すらしてないわよ。
恥ずかしいったらありゃしないわ。
黙りなさいよ」
「あぁ?
協力するってもよ?
吉伸たちのような本物でもない亜流の奴らと協力するなんて言った覚えはないぜ?」
「「「「「「「なんだと!?」」」」」」」
七家である退魔師の当主たちが戦闘態勢に入っていた。
「そうだろ?」
懐遠は脚をかっ開き、前傾姿勢で続ける。
「アレイスターの存在すら感知できず、そこの草薙当主にしか任せなかった未熟で雑魚。
金に目が眩んだって?
ハハッ。面白いことを言うな。
聞けば吉伸の息子が強すぎて服従したんだろ?
吉伸には言わなかったが、あの息子⋯⋯間違いなくあの化物の息子だ。
──唯我独尊。
あの伝説の血を引き継いでるんだから勿論だな」
脚を組み、全身から溢れる氣が七家当主を圧倒している。
余裕たっぷりもたれる懐遠は哄笑混じり、人差し指を立てて続ける。
「世界が、時代が。
アレの息子を天命在我だと言ってる。
俺達はあくまで華国の代表として、終末の最後の勢力としてここに立ち会ってる。
亜流がしゃしゃるな。
所詮アレイスターの対抗手段として残された奴らだろ。
俺達源流勢力を見上げてりゃいいんだよ。
そこの草薙とか言う家以外は」
七家当主は俯く。
誰も図星を突かれて動けない。
「ふっ、分かりゃいいんだよ」
沈黙を見た懐遠は鼻で笑って壇上にいる石田を見つめ、アイコンタクトを送る。
「悪かったな、天命在我の秘書殿」
「こちらこそ、少し勢力を分けてからご説明をするべきだったと反省しています」
「いいってことよ。
それに、俺達は全面的に協力するんだからよ。
仲は良好な方がいいだろう?
むしろそこら辺にいる吉伸の家たちの人間の方が物分りが良くて助かるよ」
この場には日本全国から異能または能力者たちが一同に集まっていた。
その数2万人近く。
予言の話は各家々で既に話は進んでおり、事の顛末は全て把握済みである。
流石にどの勢力も協力せざるを得ず。
今回の話は冗談ではない⋯⋯というのはここにいる全能力者たちが理解している。
名家が集まる中、秦派の強さはこの言葉の強さに恥じる事はない。
誰も反論の言葉もない。
日本最後の伝説──"神功覇旬"はもういない。
アレが異常なだけで、現在の異能達は全盛期程の力を有していないのだから。
「それでは、直に迫るお話をさせていただきます」
石田は今後の説明を始める。
「まずは皆様の手元に行き届くのを待ちます」
そう言うとそれぞれの人間のもとへと豪華な箱が配られていく。
なんだ?という全員の反応を見る前に、石田はマイクで口を開く。
「皆様の元へと行き届きましたのは、我が王であられる伊崎湊翔による強化薬という風に思っていただけますでしょうか。
皆様用に霊力を増幅、それぞれの特性を強化するという方向に調整したものであります」
一瞬でざわつく会場内。
「そんなもの、何故?
⋯⋯なんて思いましたか?
今回は我々の全てを懸けた戦いです。
個人の力などとやかく言ってられないでしょう?
我が王は皆様の特性を正確に理解しており、強化するという手段を取りました。
この力をどうか、これから訪れる災厄に備え、一丸となって対抗する事を願っています。
この戦いが終了後、勿論秘薬の作り方などは公開する予定だと伺っています。
ですからどうか──皆様のお力を頂ければと思います。
我が王は孤独で、カスですが、芯は男らしく王に相応しい人間です。
今回は皆様に無償で差し上げます。
お気に召して頂ければ、今後もお付き合いの程よろしくお願い致します。
では──具体的なお話に参ります」
石田は饒舌に話し、そのまま次の話題へと移った。
*
「石田さん!」
会議は終わり、人々が散っている最中。
壇上に上がる一人の少女の姿があった。
「⋯⋯っ」
「石田さんでしたよね?」
周囲の性的な視線がその少女に注がれる。
荒い呼吸を抑えようと中腰で整え、黒髪の少女は真っ直ぐ石田の目を見つめる。
「神村さん?」
「はい、覚えていただいて光栄です!」
笑って神村は妖艶に笑う。
石田の顔は分かりやすく、クラッとしているのが丸わかりである。
「どうかしましたか?
まさか強化薬の件でしょうか?」
「いえ!
伊崎君に伝えてほしいことが」
「⋯⋯?
もちろんお伝えいたします」
「予想以上に私達の知らない力が集まっています。
恐らく石田さんは私の家系をご存知だとは思いますが、近頃太陽系外で不可思議な動きがあるのを把握しました」
「⋯⋯っ、本当ですか?」
「はい!
どうやら透視⋯⋯あっ霊視をした結果、伊崎君の言った通り、エメラルドグリーン色の星がこの地球に迫っていると情報が」
「そうですか。
伊崎さんに伝えておきます」
「はい、あとコレ!」
神村のポケットから取り出されたのは。
「あの人も愛されてますね」
笑った石田の手にあるのは、全て手作りのお守りと護符。
「私が毎日祈って溜めたモノです。
伊崎さんのお力になると幸いです」
「渡させていただきます」
と、石田は懐にしまい訊ねる。
「俺は正直異能について概要くらいしか理解できていないのですが、実際伊崎さんたち日本勢力側に勝機はどれくらいあるんでしょうか?」
その問いに神村は胸の前で祈るように手を合わせ、答える。
「低いと思われます。
しかし私は信じています」
「信じる?」
「私が心から愛した殿方です。
きっと、魂の輝きは負けません!」
その瞳には正確なモノは込もってなどいなかったが、石田は笑って小刻みに頷く。
力強いものは感じるからだろう。
「そうですか。
その言葉が聞けて安心しました」
しばらく見つめ合い、神村は笑ってお辞儀をする。
「私は足手まといになってしまいますが、どうか伊崎くんをよろしくお願いいたします!」
「⋯⋯最善を尽くします!」
予言の日は近い。
もしかしたらこれが笑って過ごせる最後の時間なのかもしれない。
まるで鬼にでも取り憑かれたように、異能を持つ人間たちは殺気立て、この場から去っていくのだった。
──世界を守るために。




