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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

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EX閑話:秀才と化物。「秀才」

 産まれた時から全てに恵まれていた。


 「吉伸様!こちら」


 服は着せてもらい、食事も豪華。

 欲しいものは何でも買ってもらえたし、何かに困るような人生ではなかった。


 使用人が当たり前のように付いては、まるで神のように崇められる。


 そんな生活を数年も送ると、嫌でも気づく。

 自分が優れているのだと。




 伊崎家は特殊であり、雷を生業とする異能一族。


 その力でかつては日ノ本を支え、様々な特権階級にいたとされている。


 しかしそれもアレイスターという概念によって多くの特権階級は力を失う。


 だが。そこで世界は切り替わる。


 伊崎吉伸という俺だ。


 どうやら波はあるらしいのだが、5から10年くらいの間隔で産まれる子供には特殊な才能を宿すという流れの元、俺はこの世に誕生した。


 勿論、大人たちが話すその意味は、すぐに理解できる事になる。


 「吉伸様、さすがです!」


 一定年齢になると、両親から基礎を教わる事になる。


 だがたった一度だ。


 両親がやっているのを見て真似したところ、一発で成功させた。


 「凄いな。もしかしたら吉伸なら」


 他の家にも自分と似たような才を持つ人間はいるだろう、というのは幼いながらにも悟るのが早かった。


 しかしこの家においては自分が他とは違うことに気づいた。


 その一回があってからは、まるで世界が変わったように反応が変わった。

 

 「吉伸に武器と防具を」


 すぐに色々なものが買い与えられ、欲しいものの上限が上がっていく。


 婚約の話もあったのだが、父はそれを否定していた。


 何故ならもっと大物と結べるかも?という懸念があったからだろうが。


 「吉伸は雷に愛された子なのかもしれないな」


 父親は雷のような性格の人間だというのが最も早い。


 単純明快、線引きがしっかりしていて、落雷の如くラインを超えると一瞬で潰される。


 好き嫌いが激しく、無能であれば端へ。

 有能であれば爆心地の中心へ。


 本来なら悪く聞こえる爆心地だが、ことこの家においてはそんな事はなかった。


 ──弱肉強食。


 俺が6歳の時だ。

 今とは違い、昔はかなり教育や精神論などの叩き込みの密度が違った。


 だから、今で言う20代半ばくらいの人間たちの精神感が7歳手前の我々には宿っていた。


 異能社会においての鉄則。

 誰が力を持っていて誰に付くのか。


 逆も然り。

 そういう教育が早い。


 勉学も早々に叩き込まれる。

 恐らく皆が想像するような生活感ではない。

 

 ただ、後に俺は湊翔に反面教師として行ったが、自由がなさすぎる中での欲しいものや我儘が通るというのは非常にまずい。


 限度を知らない。

 俺はかなりヤンチャになっていた。


 この家では何でも出来る。

 何をしてもいいのだと。


 文字通り、俺はその日頃の不可視なストレスのようなものを発散する為だけに説教や食べ物へのこだわりがどうのだの。


 端的に言えば天狗のような状態だった。

 幼いが、力を持った子供。

 

 力のない使用人達にはなす術無く。


 何でも出来た。

 勉強もちょっとやれば出来たし、異能の扱いも一緒。


 そんな時だった。

 初めて俺が化物に会ったのは。


 





 「吉伸、今日は神功家の長男様が来る。

 相手は⋯⋯分かっているな?」


 父上はこの集会場に集まるまでの道中、同じ事を何度も言っていた。


 どうせ大したことないだろ。


 この時の俺はそう思っていた。


 「⋯⋯っ!?」


 なんだ?

 扉の方から、何か異質な霊力を感じる。

 

 ──ドシン!

 実際に鳴っている訳ではないのは分かっている。

 

 しかし。

 集会場の扉を開けてないのにも関わらず、巨人が歩くような足音が聞こえてくるのだ。


 「吉伸、正気を保つのだ」


 隣の父は平静のまま俺に言っているのだが。

 だが分かる。


 父上でも、この霊力の奔流に汗を流している事に。


 ドシン、ドシン。

 まるでウルトリマンのような怪獣の足音を立てながら、遂に扉は開く。


 「神の子──"神功覇旬"様入られます!」


 ギィィィと音を立ててその巨人のような足音は一層デカくなる。


 入ってくるのは、恐らく代々受け継いできた神功家専用の羽織。


 黒と白の勾玉と月と太陽が刻まれた羽織を着た後の親友。


 その男が堂々たる姿で入ってきたのだ。

 膨大⋯⋯いや、この地球の全てをその器にでも入れたような、ありえない霊力を持って。


 言葉にするのは今でも難しい。


 血のように染め上げられた赤い髪。

 真逆の白い襟足。


 そしてその赤い髪と同じかそれ以上に濃い⋯⋯芯が黒く膜は真っ赤な神功覇旬という男そのものを現したような、霊力。


 何もしていない。

 けれどその霊力はこの場にいる全ての当主や子どもたちを絶望させるほどにその奔流は無意識に当てられ、ハイレベルな人間しかいないこの場所でも並に近い人間は容赦なく意識を失う。


 謎のビリッとした霊力によって。


 「っ、かハッ」


 奴が横を通ったその時、一瞬静電気のような火花が俺の視界を掠めた。


 その静電気のようなものは、一瞬で重力を発生させるかのような効力を持ち、全身が恐怖に襲われる。


 だが、すんでのところで持ち直した俺は、なんとか正気を保ち、どうにかした。


 しかし。

 この日、俺の天狗のような伸びっぱなしの鼻は、この瞬間を持ってへし折られる事になったのだ。


 それから集会場の出来事は覚えていない。

 ただ、自分と同じような同年代の子供が座ると空気が変わり、誰もが張り詰めた緊張でどうにかなりそうだった記憶だけが刻まれた。


 ⋯⋯チラッと目があった時も、無意識なのだろうがあまりの眼圧に気圧され、息をする事すら許されない。


 それが神功覇旬という男だった。



 





 「よしー!!」


 「お、おはよう」


 それからすぐの事。

 覇旬が俺の家へと頻繁に来る事になった。


 なぜかは知らん。

 あの集会場で俺を気に入ったらしい。


 だがしかし、今思えば、友達を理解しておらず、無意識に人を欲していたのだと思うと、可愛げのある少年期だとも思う。


 この時の俺は、全くそれを理解できていなかった。


 「なぁ、よし!

 お前の水切り教えてくれ!」


 俺達は異能を操る一族。

 普通の人間とは違うのだ。


 しかしこの男は俺の家に訪ねるといつも川へ行こうと言って河原へ来ると水切りをやろうと言い出す。


 全く理解できない。

 なんでもっと異能の制御や拡張、応用を学ぼうとしないんだ。


 化物に向かって、この時の俺はまだそんな浅はかなレベルの話を内心考えていたのだ。


 「すげー!」

 

 「そっ、そうか?」


 たった7回くらい投げたものが飛ぶだけだ。

 何を思う必要があるのだ。


 だが、満更でもない気持ちでいっぱいだ。


 「なぁ、よし!

 また遊びに来てもいいか!?」


 俺が吉伸だからよし⋯⋯か。

 ふっ。


 「ま、まぁいいよ」


 「よっしゃァァァ!」


 両手をバンザイさせて喜ぶ姿は、俺にとっては物珍しい光景で仕方なかった。


 なぜなら、自分の事をあだ名をつけて呼ぶ人間もいなければ、こんな幼稚な事で楽しいと思う時間が今までなかったからだ。


 ついこの間、信じられないくらいの覇気を出していた人間と同一人物なのかも怪しい。


 「なぁ、なんで勉強なんてしてるんだ?」


 数年が経つと、この男は勉強中の俺の隣でそんなことを言ってくる。


 「お前は勉強しないのか?」


 「ん?勉強ってなんだ?」


 一瞬ムカッとはしたが、冷静に答える。


 「ほら、俺の家だと雷法だとかあるだろ。

 お前は勉強しないのか?」


 「⋯⋯ない」

 

 「ない?」


 「だって、考えなくても出来るからな」


 ⋯⋯今すぐコイツ引っ叩きたい。

 なんて思ったのは言うまでもない。


 だが、このときの俺は、やはり舐めていた。


 「じゃあこれ見ろよ」

 

 自分の家の雷法。

 発現させて、循環、拡張、放出、制御、維持、爆発。


 全部で何段階もある──


 説明しようと思った鼻呼吸ほどの間。

 視界に泳ぐ空色の雷気。


 紛れもない、俺の家の雷だ。


 「おぉーこんな感じか! 

 よし、ヤバくねぇ!?」


 なんだ?


 「おい、どうした?」


 少しやれば何でもできた。


 「よしー?」


 自分は優れている。


 そんなことを思っていた俺。

 覇旬という人間は、少し生まれが良くて立場が上なだけ。


 言うたって霊力が人より多いくらいで⋯⋯そんな事を、コイツを見て思っていた自分。


 なぜ全員がこの男を恐れ、なぜ崇めるのか。

 神の子だと言って、平伏すのか。


 「まじかよ」


 様々な言葉が頭を渦巻いた結果、出てきた言葉である。


 「なんだよ、これ結構使えそうだよな!」

 

 まだ覚えていないことまで、指南書にあったやり方まで勝手に自分の中で書き換えては、自分なりに構築し直して俺に見せてきやがる。


 なんてやつだ。


 「よしの家ってすげぇな」


 「本当に勉強したことなかったんだな」


 「んぁ?そりゃそうだろ。

 暇なんだもん。

 どいつもこいつも変な説明ばっかしてきてさー。

 

 できない奴の気がしれん」


 あは。

 あはは。


 その時完全に俺の心は折れた。

 自分の知覚できないことが目の前で起こると、人は笑う事しかできないらしい。


 自分よりヤバい奴がいるのを間近で感じた瞬間だった。


 ちょっと勉強するなどという行為も必要ないのだと。



 ──よし。


 あれ?なんだ?

 

 「よし、聞いてるのか?」


 目の前には、大人になった覇旬(コイツ)の姿。

 

 「は⋯⋯旬?」


 「ハッハハ。

 やっと意識が戻ったみてぇだな」


 そう。なんで、


 「大丈夫か?よし」


 なんで昔のことを思い出していたんだろうってこの数秒の間で思っていたんだが、そうか。


 「すまん」


 「オイオイ、謝んじゃねぇよ」


 コイツの腹が貫通している。

 そして俺を庇った痕跡。


 援軍として来た俺を庇った結果だ。


 「吉伸さん!」


 「しず⋯⋯ね」


 「シズ、よしを⋯⋯任せてもいいか?」


 「いけません!

 そんな傷だらけで──」


 「昔の要らない記憶を捨てる」


 奴が一言発すると、腹の傷はみるみる修復していく。


 「よし、来てくれてありがとな」


 燃え盛る戦場。

 この場に居るだけで感じる⋯⋯殺意の渦とユラユラと揺れる業火。


 「俺⋯⋯」


 短く放った言葉に、覇旬は止まる。


 「お前に嫉妬してたわ」


 「⋯⋯そんなの昔から知ってたさ」


 呼吸が出来ない。

 瀕死だからか。


 「華国と親善試合した時、お前嬉しそうに応援してたもんな」


 「あぁ⋯⋯。

 今でも覚えてる。

 お前が一人で華国の異能者共をぶっ叩いてくれたんだから」


 「⋯⋯俺様は好きだぜ。正直な奴は」


 そう言って俺の顔を振り向きざま見下ろす。


 「シズ、霊力はあるか?」


 「ええ!」


 「あっても無くても回復してやってくれ。

 捻り出して」


 鉄と血のニオイ。

 そして、土埃が舞う戦場。


 奴は、両手に武器を持ち、覇者の背中を見せつけ、歩き出していく。


 「まぁっ、まさか⋯⋯この地球にまだあの錬金術師と同等の人間がいるとは」


 回復を受けながら、見える。

 肩で息をしながら剣を支えにボヤく黄金の騎士。


 「あァ?知らねぇよ。

 その錬金術師とかなんだか知らんが、さっさと帰ってくれよ。


 今日は、蟹料理が家で待ってるんだ」


 その返答も相変わらずだな。

 お前は。

 

 そうして、奴は黄金に光る直後。

 紅い光と黄金の光は空へと舞い上がり、凄まじい轟音と衝撃波を生んで、戦っている。


 クソッ、俺があんなヘマしなきゃ。

 あいつは手負いにならなかったってのに。


 「覇旬、凄いわ」


 言わなくても分かってるさ。


 空を支配する紅い覇気と、支配を開放する黄金の光。


 その力に耐えきれない空は悲鳴をあげているようにも見えた。








 それからどれくらいだろう。

 数十分は戦っているように思えた。


 地上に帰ってきた二人はボロボロ。

 そりゃそうだろう。


 一撃放てば近くの山が吹っ飛び、地は割れ、周囲は跡形もなくなっているんだから。


 「やはり顕現には力が必要か」


 黄金の剣。

 握れなくなったやつは掌を開いて閉じて、目の前で不動に立つ覇旬を見つめ名残惜しそうに言い放つ。


 「知らねぇよ。

 さっさと帰れってんだ」


 「つまらぬ。

 あの錬金術師であれば」


 黄金の騎士の身体は謎の粒子となって空へと消えていく。


 「この星の存在する黒い髪の子は、すべて滅ぼす」


 そう言い残し、奴は消えていく。


 「うるせぇよ⋯⋯っ」


 「覇旬!!」


 回復できた俺は、倒れそうになった覇旬の肩を組む。


 「よぉ⋯⋯よし、随分元気になったじゃねぇか」


 「お前のおかげだ。

 他の雑魚は俺が片付けた」


 「そうか」


 今のやつは、昔ではありえない。

 重傷だ。


 「静音!」


 治してほしいと見上げると、静音は首を横に振っている。


 その意味を、俺は理解できない。


 「よし、大丈夫だ」


 「何が大丈夫なんだ!?

 こんな身体で!」


 「オイオイ⋯⋯問題ねぇって。

 ちょっと世間を賑やかにしてやっただけじゃねぇか」


 「なんで治療できねぇんだ?

 方法はないのか?」

 

 「⋯⋯ない。

 俺の力でも、この身体では方法がないって言ってる」


 地獄への一歩だった。

 最強だと思っていた男がこんな形で。


 まだ、まだまだ俺達はこれからだって言うのに。


 「玄華だっているだろう!?」


 「あぁ。

 そうだったな。

 俺が孕ませた女か」


 「もう少しオブラートに言えよ」


 「はは。

 そうか⋯⋯今日か」


 「あぁ!

 出産日は今日だぞ!

 お前が生きて帰らないと、片親になっちまう!」


 そう言うと。

 奴は今まで見せたことない⋯⋯穏やかな笑顔を見せた。


 「俺に」


 「どうした?」


 「俺に⋯⋯人の親は向いてねぇだろ」


 「そんなのやってみねぇとわからんだろう?」


 「俺達よぉ⋯⋯毎日毎日水切りしてよぉ⋯⋯中学になったら女ばっかでよぉ⋯⋯でもよぉ⋯⋯水切りがおもれぇんだよ⋯⋯こんな奴のどこに、親になれるってんだよ」


 「うるせぇよ。

 お前は生きて帰るんだ!

 俺も静音もいる!


 帰ろう!

 ⋯⋯ほら、帰ったら⋯⋯またやろう!」


 「そいつは無理な話だな」


 「なんでだ」


 歩き出すとコイツはそんなことを言ってくる。


 「もう、長くない。

 俺が一番分かってる」


 「⋯⋯⋯⋯」


 「アレイスターについては、お前らが分かってるはずだが、俺に出来ることはまだある」


 「聞きたくねぇ」


 「"頼む"」


 「⋯⋯っ」


 生まれて頼みごとなどした事もないような男の言葉。


 あまりにも重いその言葉は、俺の全身に重くのしかかって来る。


 「俺の目の能力は知っているな?」


 「あぁ、お前から聞いた話だがな」


 「今回の代償は──」

























 「お前ら二人の記憶だそうだ」


 「「⋯⋯⋯⋯」」


 「代償は最も重要な記憶。

 俺様にとって、お前ら二人が一番大事な記憶らしい。


 ⋯⋯懐かしいなぁ。

 

 途中から来たシズはいつも河原でコケて俺達にサービスしまくってたし、よしは異能はイマイチなのに水切りのレベルは高くって⋯⋯」


 隣で口を覆って泣いている静音と、何もできない無力感に襲われている俺。


 どうしたらいい?


 この男は間違いなく日本の歴史の中でも大事な宝石で、逸材。


 こんな事の為に死なせていいわけない。


 「どうにかならんのか?」


 「ならん。

 だから、頼む。


 アレイスターを止めろ。

 その為には色々今から話す事を実行してくれ」


 頷くしかない。


 「あぁ」


 「眼の能力で、跳ぶ。

 俺様はこの世界から消失するが、気にするな。


 賑わせた男が消えるだけだから」


 「それで?」


 「恐らく、数年⋯⋯10年か。

 多分俺の子供が大人になる頃くらいか

 奴が復活する。


 俺様の子供を託す。

 玄華も近いうちに亡くなる事になるだろうから」


 「どういう事だよ」


 「ふっ。

 どうもこうもねぇ。


 ただ、最初からこうなる運命だったんだよ。

 とにかく、俺様の子供をよし──お前に託す」


 「重いぞ、その選択は」


 「俺様の子供に恐らく同じ能力があるだろう。


 必要になったら好きにさせろ。

 どうにかする」


 「説明になってないんだよ⋯⋯このクソ野郎」


 胸を軽く叩くと奴は笑っている。


 「なぁ⋯⋯よし」


 「あぁ?」


 「やっぱり⋯⋯忘れたくねぇな」


 思わず血が噴き出す程拳を握っていた。


 「楽しかったもんなぁ」


 こんな火の嵐の中、そんな顔で笑うなよ。


 「全て託す。

 因果は今から刻印する中に刻む。

 ただ、いつか答えが分かる日が来る」


 泣きながら俺達三人は最期まで昔話をした。

 内容はあまり覚えていないが。


 「そうだ。よし」


 「なんだ?」


 「俺の子供の名前、よしが決めてくれよ」


 「なんでだよ。

 名前あるだろ?」


 「よしが決めてくれよ」


 そうだなぁ。

 俺は少し悩み、静音と目を合わせる。


 「湊翔」


 「そう⋯⋯か」


 「あぁ」


 「名前だけは覚えられるはずだ。

 湊翔か。

 覚えておく」


 やつの瞳が開眼する。

 光り輝き、六芒星のように瞳の線は屈折する。


 「よし、唯一の親友。

 来世でまた会えたら⋯⋯その時は」






























 "今度こそ、友達になれたら"


 何言ってんだよ。

 もう、親友だろ。


 俺達は。


 





 「「⋯⋯⋯⋯」」


 5/14日。

 神功覇旬の死んだ日。


 世界が忘れても、俺達は忘れない。

 

 この地球を救った救世主。


 両手を合わせ、俺と静音は祈る。

 無事に来世を迎えられるようにと。


 満開の桜の木の下。

 俺達の手作りで作った、お墓で。

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