想い出(1)
こんにちは!作者です。
連日もの凄い勢いで伸びておりまして、とてもびっくりしております。
初めてのギフトも頂きまして。
コメントもいっぱい来て嬉しいです!
コメ返したいんですけど、うっかりネタバレしそうになって消すを何回かやったので、怖くて返せてません(笑)
許してください。
というのは置いておきましてと。
一応このお話から二,三話ほど重くて見てられない可能性があるので、キツイ人は飛ばしてもらえると助かります。
以上、作者からでした。
それではどうぞ。
こんにちは!作者です。
連日もの凄い勢いで伸びておりまして、とてもびっくりしております。
初めてのギフトも頂きまして。
コメントもいっぱい来て嬉しいです!
コメ返したいんですけど、うっかりネタバレしそうになって消すを何回かやったので、怖くて返せてません(笑)
許してください。
というのは置いておきましてと。
一応このお話から二,三話ほど重くて見てられない可能性があるので、キツイ人は飛ばしてもらえると助かります。
以上、作者からでした。
それではどうぞ。
ーーー
「おい、伊崎!!」
まぁまぁな分厚い書類が左目に直撃する。
「⋯⋯申し訳ありません」
「何回ミスをすれば気が済むんだ、えぇ?」
あなたの気まぐれで変更の嵐でしょう。
しかも、ミスではなくてあなたがミスにしただけでは。
「ハッ!これだから最近の若者はな!
Zだったか?知らんけどなぁ?
社会に出たらそれくらい常識だよなぁ!?」
「申し訳ありません」
折り畳んで謝罪をして席へ戻る。
会社の時計を見上げると、もう19時だ。
はぁ。今日も定時は無理か。
「俺はもう帰るぞ〜! 彩花ちゃん、そんな奴のことは放っておいて飲み行こう!」
「これは私も関わっているプロジェクトですので」
「大丈夫さ! さっ!」
「いえ。手伝ってから帰ります。明日も早いですし」
女性も大変だな。
こんなののご機嫌取りしながら生活していかなきゃならんのだから。
「そう? じゃあお疲れ〜!」
ありゃ、キャバ行って帰るんだろうなぁ。
帰ったのが見えると、俺は席を立ってコーヒーを淹れに行く。
「あっ、伊崎先輩!」
「座ってて。大丈夫」
気付いた伊藤さんが慌てて立ち上がるが、静止させて俺はコーヒーを注ぐ。
「はい」
「すみません! あ、伊崎さん口から血が」
「⋯⋯まじか」
隅にあるウェットティッシュを取って拭く。
「い、伊崎さん⋯⋯」
「ん? どうしました?佐藤さん」
「わ、私のせいで──すみません!」
勢い良く丁寧にお辞儀される。
「大丈夫だよ。チャレンジ精神は大事なことだから。責任を取るのは先輩だけでいい」
「で、でも」
「いつか、未来で佐藤さんが同じように頑張ってる後輩が出来たら同じことをしてあげてね」
昔。俺も同じようにミスをしたことがあった。
その時、当時の先輩が助けてくれた。
その系譜だ。
それより、まだ19時か。
白波さんはまだこれからかなぁ。
このまま帰っても仕方ないし、佐藤さんの面倒でも見るか。
「ん、そこの使い方こうしてあげると良くなると思いますよ」
ちょっと離れたところからコーヒー片手にツッコむ。
「あっ、本当だ! 伊崎さんありがとうございます!」
「大丈夫。どうせ終電前くらいになるんだし、ゆっくりしよう。全く生産性の欠片もないけど」
「ですね。伊崎さんって、なんで後輩の私にも敬語なんですか?」
「ん? 特別な事はない、リスク管理だよ。
こんなご時世だし、女性がどこでなんて言うかなんて分からないし、あとで『馴れ馴れしい』とか、『口説いてきた』とかさ。
女性側にも色々あるんだろうけど、俺は正直面倒に感じるから一律敬語。
極力仕事で過度に女性と関わらないようにしてるし」
「そ、そうなんですね。男の人も大変ですね」
「この間もハラスメント講習とかあったじゃないですか。今後ああいうのがまだまだ増えるから、もう面倒くさくて。だから一律で敬語と距離感離して接してるんですよね〜」
「あ、だから⋯⋯」
言い淀む佐藤さん。
「ん? どうしました?」
「い、いえ!」
何やらあたふたしている。
佐藤さんは珍しいタイプなんだなぁ。
*
「こんな所ですかね」
「わざわざこんな遅くまでありがとうございました!」
「大丈夫大丈夫。私もこれからジムに行ってから帰るので」
「げっ! 伊崎さんマジですか!? 明日も早いんですよ!?」
「健康の源は運動と相場が決まってますから」
「じゃあ⋯⋯」
何かを決心した様子の佐藤さん。
「わ、私も今度運動ご一緒してもいいですか!!」
「こ、声デカ⋯⋯」
「ごごごめんなさい!」
「大丈夫大丈夫。ジム、お金掛かっちゃうよ?」
「伊崎さん⋯⋯先輩と一緒なら大丈夫です!!」
運動に興味があるなんていい事だ。
「本当? じゃあ今度ジム紹介するよ。佐藤さんも帰り道気を付けてね」
佐藤さんが駅の人混みへ消えていくのをサラッと確認し、俺は駅近のジムでいつも通りの事をこなす。
シャワーに入って、しっかりと勤務中の汗を流して。
恥ずかしながらもいつもの場所へと向かう。
「あ、湊翔くん!今日も来てくれたんだ!」
「大丈夫。紗季さんもお疲れ様です」
週3で通うここで、俺は彼女と軽く行為をして、あとはほとんど会話をしている。
もうここへ来て一年は経つ。
初めて行ったあの日から、俺は彼女を忘れられなくて、結局今でも通う恥ずかしい一般男性だ。
彼女からも名前を呼ばれるくらいには親しくなれたと思う。
「今日も溜まってたね」
「⋯⋯恥ずかしいんでやめてくださいよ」
「今日も仕事?」
「残業のオンパレードですけどね。ほーんと社会はクソですよ」
「⋯⋯そうだね。私も、って。ちょっと暗い話題出しちゃったね!ごめんね!」
「あっ、そういえば」
紙袋からお菓子を取り出す。
「これ──と思ったけど、食べ物は良くなかったっけ?」
「本当はねー。でも、湊翔くんは大丈夫!」
あの頃のような天真爛漫な笑顔を見せてくれる。
「ごめんね。次はちゃんとしたモノにするよ」
「全然気遣わなくていいのにー!」
SNSでよく見る光景だと言うことに、俺は遅れて気が付いた。
痛い客なんだろうか。
最初の彼女の言葉は全て幻想なんだろうか。
好意は間違いなく俺は持ってる。
⋯⋯多分。
でも、南も居る。
今の給料じゃあやっていけないのは分かってるし、白波さんの事情も曖昧だ。
その話は俺から切り出すことはない。
こういうところで働いているけど、これもれっきとしたお仕事であり、彼女のプライバシーにも関わる。
こう考えると、中々キモいのか?俺は。
「あ、ねぇ湊翔くん見て!」
彼女のスマホを覗くと、綺麗な水族館の写真が映る画面だった。
「これー!めっちゃ綺麗だよねー! もう何年も行ってないから目に止まっちゃった!」
さり気ないところだろうが、彼女の素を見ると胸がドキドキしてしまうのは恋愛初心者だからだろうか。
甘い匂いもするし、近いからかな?
まずい! 集中集中!!
「どうしたの?湊翔くんは綺麗な場所好きだったりする?」
「んーんー。俺も好きだよ。景色を見る所とか。紗季さんはよく行くの?」
地雷だった。
彼女が少し俯いてしまった。
「ご、ごめん!」
「大丈夫大丈夫!なんか、もう行ってなかったからちょっと寂しくなったというかっ。たまたま流れてきたからだし!」
無理やり笑ってるよ。
どうしようヤッベ。
彼女の売上と少し休憩出来るようにって思ってたのに、逆にテンション下げちゃったよ!
25歳何やってるんだ俺はー!!!
あ、紗季さん以外の女性とシた事もないわ。
あれ?俺って結構な弱者男性とでも言うのだろうか。
「ね、ねぇっ!」
「は、はいっ!」
全裸の彼女がこっちを向き直して何やら改まってる。
こんなところに来てなんだけど、頼むから隠してほしい。色々アレなんだけど。
「こ、今月⋯⋯」
言い淀む彼女を見て、何かお金が必要なのかなと思った俺は、懐からお金を取り出そうとした。
「ち、ちがうのっ!」
あ、違うのか。
「今月⋯⋯お休みがあ、あって」
え?お休みがあるって⋯⋯完全にヤバくないか?
「ごめん、ちょっと待って?休みがあるってどういう──」
「あぁ、あぁ違うの違う! 連休が貰えたの!」
両手をヒラヒラさせて違うと言い張る白波さんだが、様子が。
「そ、それで──こ、ここに行きませんか!!」
SNSを交換しているので、すぐにアプリに通知がやってくる。
行きたかったから、話題に出したのかな。
そう思うと胸が甘過ぎて吐きそうだ。
「行こう!」
即答。彼女は嬉しそうにして万歳している。
俺も水族館なんて行ったことないし、楽しみだ。
そうこうしていると。
時間はあっという間に過ぎ、帰る時間だ。
「紗季さん、コレ」
渡したのは、会計とは別の⋯⋯チップ的なやつだ。
「いいの、大丈夫だよ! 湊翔くんからお金取りたくないし!」
「借金返さなきゃならないんでしょ? 微力だけど、食費でもお洋服でも、買ってよ。こんな事くらいしか出来ないけど。あははは⋯⋯」
恥ずかしくて後頭部をかいて弁明していると、床に何かが垂れた。
見ると、白波さんの瞳が涙で潤んでいた。
「ご、ごめんっ!何か悪いこと言った!? め、迷惑だったらごめん!」
すぐさま頭を下げると、彼女の手が俺の頬を覆った。
同時に、柔らかい彼女の肌とプルプルした唇の感触。
慣れた彼女のキスの味だ。
鼻を啜りながらも必死に絡めてくる彼女に合わせる。
数分もすると、彼女がようやく止めた。
お互い荒い呼吸だったけど、離れると、彼女は俺の唾液を垂らしたまま泣いて笑っている。
「どうしよう⋯⋯早く水族館行きたい」
昂ぶった白波さんを見ていた俺も、気付けば貰い泣きしていた。
「だ、大丈夫! 数週間で行けるから大丈夫!」
泣いてるとはいえ時間がまずい。
白波さんには申し訳ないが、足早に着替えて会計を済ませる。
スタッフさんも俺のことを知ってくれているので、多少許してもらえたが、次回からは気をつけよう。
*
「⋯⋯あ」
駅に到着したと同時。
自分の社員証を忘れたことに気づく。
あーやばい!
アレが無いと入れねぇ!!
既に30分以上は歩いていたが、猛ダッシュで取りに戻る。
ーーバタン!!
「すみません!」
滅多に慌てない俺だからか、スタッフさんも冷静に忘れものボックスを探してくれている。
「あ、多分二階ですね。上の階にあるんで、伊崎様が行っちゃって大丈夫っす」
「本当にすみません!」
「社員証。俺も落とした事あるんで、気持ち分かりますよ」
深々と頭を下げて、上へと登る。
登りきると、フロア全部貸し切られているのか、静寂だ。
だが、そこで俺は最悪な物を見てしまった。
「おぉ⋯⋯結構上手くなったじゃねぇか紗季」
心臓がドクンと跳ねた。
いつも俺が最後だから、相手をする必要はない。
──ってことは。
覗きはしないが、耳を澄ませてしまう。
聞こえるのは、白波さんの甘い声と、聞いたこともない複数の女性の声だ。
白波さんだけではないが、一人で聞き覚えがあるので、間違いない。
「紗季ぃ。おぉそれそれ」
心臓が辛い。
そうだ。別に俺だけではないから、問題はない。
「おぉビクビクしてんなぁ⋯⋯ほら、力坊っちゃんも」
イケナイ。だが──覗いてしまった。
そこには、女性達がまるでモノみたいに使われている光景だった。
おもちゃで遊ばれている女性もいれば、白波さんは、三人同時に相手させられていて、見てられない雰囲気だ。
笑ってる──けど、明らかに人形の様な無。
空っぽの瞳を見る度に心臓が早くなってる。
薬品とベトついた床、それに強烈な匂い。
全てが今の俺には焼けそうで苦しい。
「あぁ、いいいい!上手い上手い!はは!なーんだ紗季、彼氏いねぇよな?」
「い、いないです」
口に入れながら答える白波さん。
「じゃあほら、百万払ってやるから出しても問題ないよな?」
止めてくれ。
耳を塞ぎたくなった。
ったく。世の中は金かよ。
「いや大和田さん。コイツ借金どころか、一生居るかも知んないっすよ」
「えぇ? またどうして?」
「一緒にいたじゃないすか」
笑って答えるいかにも金持ちそうなやつ。
死ね!このクソ金持ちが!
「あぁもしかして──会長の娘か?」
「⋯⋯っ!」
前髪を無理やり掴んで行ってる彼女の顔を覗く。
「アハハハ! そうなんですよ! 幽霊みたいに消えて探すのに手間取りましたよ。
会長も必死でしたけどね。
見つかった時は、さすがの俺も見てられなかったですけどね」
「見つかった時?あぁ、下のモンに行かせたときか」
「会長の前で脱がせてヤッたんすよ! 母親も目の前で! いやぁ、最高だったな。今じゃこんな従順にしてるのにねぇ?」
二人に髪を掴まれた状態で見下した目つきで言い放つ。
でも、止めずに紗季さんは続けている。
「あと幾ら返すんだっけ? 石田」
「あと返済額十億以上あります」
「ほら紗季ぃ〜、もっともっと元気よく腰ふれよ〜? そうすれば大和田さんがチップを弾んでくれるかもしれん」
「おっ。じゃあ何してもらおうかなー。力坊っちゃんはいくらにするんで?」
「残念ながら、ヤラせておいて一銭も出ませーん」
「「ガハハハッッ」」
まじでぶっ殺してぇコイツら⋯⋯!!!!!
だが、俺の気持ちとは裏腹に、彼らの思うとおり紗季さんはなす術無しだった。
物みたいに扱われて、いつもの笑顔はなし。
俺が見ている数分、彼女は無理やり笑いながら動画を取られ、泣いたり笑ったり。
自分の人生で──ありえないくらいの怒りが沸き立っていた。
けれど。
紗季さんは、ある意味"マシ"だったのかもしれない。
他の女性は──。
もっと異常な奴らに異常な事をされていて。
それはこっちが吐きそうになってしまう程に。
そうしていると。
「⋯⋯!」
あ。目が合っちゃった。
「ゴホッゴホッ!!」
「おい、蒸せてんじゃねぇよ!!しっかり口動かせよ!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
見られてしまった。
どうしよう!
なんでいるの?とか、俺キモいよね?
そそくさと忘れ物ボックスを取ると、中の方から声が聞こえる。
「はーい紗季ちゃん。今日は何するんだっけー?」
「き、今日は──」
「ん?いつもなら笑顔で媚びてくるじゃねぇか」
トイレに行こう。
まずい。俺が死ぬ。
それからどれくらいだろう。
半分意識のない状態でメンタル崩壊でトイレから出る。
「はぁ⋯⋯」
紗季さん。
俺がいない所で、あんな目に遭ってるなんて。
トボトボ歩いていると、前から声が聞こえてきた。
慌てて曲がり角に隠れてしまう。
「そういえばあの紗季ちゃん? 十億も残ってるのかー?俺が出してやろうか?」
「あぁそれですか。実はもう返し終わってるんですよ」
───は?
全身が一気に熱くなった。
今、アイツなんて言った?
「え?返し終わってるの?」
「返すも何も、赤字になったやつは株式と事業委託なんかですぐに清算は終わってますよ〜。紗季ちゃんとその母親はほら、女でしょ?
馬鹿だから、ちょっとそれっぽいこと言って契約書出したら⋯⋯ぷっ⋯⋯普通に泣きながらサインして───」
一瞬、自分の拳を見た。
でも、ダメだ。
耐えろ。耐えろ⋯⋯っ
「それであんなに必死なのか⋯⋯俺としてはあんな快楽を味わえるからいいけどな」
「大和田さんの種が欲しいんですよ。だからあんな一生懸命腰を──」
ここで殴ってみろ。
俺の人生破滅だぞ?
南がいる。
たった一人の家族。
アイツが居なかったら俺は今生きてない。
だから駄目だ。
しかも白波さんとは付き合ってもないし。
だから⋯⋯
「アイツ、今度連休が欲しいんです〜!とか言っててよ」
「へぇ?行かせるのか?」
「精神なんかだいぶ前から折ってるから問題ないですよ。今じゃ俺の息子がいないとやっていけないですしね。ビデオを個人サイトでいい線いってるんですよ。売り上げもいいですし」
「ッッッッ!!!!」
ーードンッ!!
無理だった。
殺してやる。
身体が勝手に動いて目の前のやつをとりあえず一発ぶん殴らないと気がすまないと思った。
⋯⋯だが。
「えっ」
居るのは、自分より遥かに身長の高い、ゴリラみたいな大男。
友達のお母さんからの慈悲で通った空手の突きを受けても、まるで反応がない。
壁かよ───ッッ。
ーードゴンッッッ!!!!
「カッハッッッ!!」
首が取れたかと思った。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
気持ち悪い。
死ぬ。まじで死ぬ。
「ぁぁ⋯⋯っぁぁっ⋯⋯くっ⋯⋯はぁ⋯⋯」
転がって、首が爆発しそうなくらい熱い!!
息ができない。
「オ、エエエッッ⋯⋯く」
目の前がウネウネする。
ふらふらする。
クソが。
「おい、誰だそいつ真壁」
地面に一撃で寝かされた⋯⋯やばい。
し、死ぬ⋯⋯っ。
クソが。死んでもいい。
アイツに一発っ。
子鹿みたいになりながらも中腰の姿勢まで立ち上がる。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
何を見下ろしてやがんだ──このクソっ⋯⋯
ーードンッッッッ!!!
「──ぁ」
何が起こったかわからないまま、俺は意識を失った。
失ってはいけない所で。




