なんやかんやの二人
まぁ、一言で言えば。
"とりあえず短期間にありえないくらいの進捗があった"
とだけは言っておこう。
そんなことを言ったら。
"ちゃんとしろ"
──なんて言われるだろうから、なるべく短くする。
一つ目はエリックによる建設の異常な速度によって最初のセレモニーからすぐに倍のタワーを建設。
生み出される電力も初期型の比ではない。
どうやらかねてより俺と話した時から色々プランを練っていたようで、これは俺も考えていたことだが⋯⋯一つは農場だ。
電力があればLEDの技術なんかで季節や状況な関係なく育てる事ができるらしい。
まぁ専門ではないから丸投げにはなるが。
というより俺の力があれば関係ないもいいところなんだが、そんな大っぴらにするわけにもいかん。
結局同じ事をする事になる。
他にも既に色々あるようだが、そこはいい。
──そして。
・青空教育機関の完成。
・華国との連携が始まったこと。
これは国絡みとは別件で。
あとは個人的な事ばかりだな。
・銀が目を覚ましたこと。
・遂に俺の所在が日本の連中にバレたこと。
こんなところだ。
な?3,4週間の話じゃないんだよ、マジで。
とまぁ色々あるのだが。
俺と石田はそもそも年末の様々なやり取りに全身から火が吹きそうな疲労感と苛立ちを胸に、煙草の本数が馬鹿ほど増えるという快挙を成し遂げたのだ。
*
目には大量のメール。
[ゲンホースタッフ小平:伊崎様、キャラクターデザインの方向性について]
あーそうだったな。
打ち返し、次。
[臥龍伝!スタッフ飯島:バイクデザイン、来年以降の方針について]
あーそうだった。
今俺のレベルは276だ。
総合力が1300万程までに上がったし、新しい機能や様々な要素が増えていってるせいで、アプリランキングでは上位に入れてないものの、中央辺りには存在している。
中でもユーザー満足度は圧倒的にある。
というより、今流行ってるゲームのほとんどが、俺が力を入れてやっているゲームなんだから、来る連絡はそうなるか。
⋯⋯打ち返してっと。
[フェレン:今年の株主総会に当たって]
あぁ。そうだった。
俺が突っ込んでる外資系のほとんどが、12月に総会開くんやったー!!
煙草吸うか。
[エオン]
[新開健仁]
[夏糊美彩]
どれも今をときめくベンチャーさんたち。
俺は全方位に趣味で投資している。
まぁ理由は様々だが、主にどこに何が落ちているのかがわからないということと、俺の未来ネタもほぼ使えんくなってきているということ。
改変に近い事もやっているが、なにより記憶が一般人だ。
昔の大筋を掴んでいるだけだったから人材、土地を集めたし。
記憶なんて⋯⋯あるのは電車通勤の記憶と、コンビニで無愛想な男の人にありがとうございましたーって言われている記憶、上司に怒られている記憶のみ。
そんな奴のどこに未来の情報があるんだ。
とにかく必要なことは古来から人間が必要なことは3つ。
"衣食住"──。
だが、現代の我々はあまりに軽視している。
例えば分かりやすいので言うところの住。
住というのは土地という事になる。
そもそも人類が戦ってばかりいるのはこの住の為だ。
食、衣においても話をスケールアップすればどれも変わらん。
向こうでもこちらでも、やる事は同じ。
自分の城を枠取って、建てて、装飾して、強固にして、迎撃兵器を作って、誰も近寄らせないニオイを作って。
そういう事だ。
「「あぁ〜!」」
「ん?」
「え?」
ちょうど同じタイミングで痺れを切らした。
隣で石田が地獄みたいにやせ細りながら俺を見ている。
あぁ、石田。
分かるぞ。
「「俺達、なんで働いてるんだ(ですかね)」」
「くっそ、お前レベル上げたか?」
カタカタ打ち込みながら訊ねる。
「全然っす。
一応上がってはいるんすけど、逆によくあの上限値から伸ばせてますよ、本当」
「狂人会は暇人が多いのか?
下っ端連中がドンドン戦力を付けてきてる」
「このゲーム、割と人気ですからね。
どこぞの金持ちがやってるとか、ガチ勢とかもいるっぽいですし」
メールを見ているとふと思ったから話題はアレに。
「あれ、お前彼女は?」
「別れました」
一瞬の沈黙。
だが、耐えろ。
ふふふふふふ。
耐えろ。
「あっははははははははははは!」
「くぅぅっッッ!!
だから言いたくなかったんですよ!」
「そらそうだろ。
あぁーおっかし。
でもよく続いてたな?」
流れる大量の涙を拭きながら問うと、バンバン机を叩きながら血の涙を流すやつの顔。
「俺があんだけ一生懸命お金も時間も掛けたのに、返ってくる言葉があなたは私の体目当てだったんでしょ?って」
「お前一生懸命俺相手に女が喜びそうな事とかやり取りとか勉強してたのにな」
「いやそりゃ体目当てじゃないなんて口が裂けても言えませんけど、でも、中身も喋っている内に好きになって⋯⋯って、それは向こうも同じでは?
出会った場所──全員服なんて着てなかったじゃないっすか!」
「女なんてそんなもんだろ。
男女共々自己都合腹立たしいが、女は顕著だからな」
「金も割としっかり掛けてましたし、時間だって出来る限りは尽くしましたよ。
でも返ってくるのがそんなんなんて恋愛って⋯⋯クソだぁぁ!!」
他人の不幸は蜜の味⋯⋯なんて良い言葉なんだろう。
「お前は終わったか?」
「作業すか?」
「ん?あぁ」
灰を落としながら返す。
「とりあえずは」
「飯でも行くか。
たまには二人で」
持ってる最高級のワインが入ったグラスを手にしながら。
「俺、今なら死ぬほど飯食えそうっす」
「もうすぐ年末だなぁ」
カレンダー見ながら呟く。
「そっすねー。
来年はやること多いっすよ」
「ん?そうなのか?」
「宅建受けなきゃですし、英検、簿記一級⋯⋯」
「お前いつの間に?」
こんなん頭良いどころか普通にしてれば出世して普通だったろ?
などと思う俺の気持ちなんぞは知らずにペラペラ喋りだしている。
「おしっ、終わった」
「奇遇ですね。
終わったっす」
予約⋯⋯あ、知り合いの店があるからそこに行くか。
「銀はまだ意識が戻っただけであまり動けない点滴生活だから、お土産はいっか」
「ですね。
アニキ、普通になればいいんすけど」
「まぁどうにでもなるさ。
世界中探し回って医者でも探すさ」
「⋯⋯あざす」
「じゃ行くか。
飯食ったら女呼んでパーティーするか」
「あっ!いいっすね!」
「お前の傷心パーティーだ」
「よーし!!
精力つけて、次の恋愛に行くぞ!」
はぁ⋯⋯とりあえずスマホ。
「あっつ!!!!」
持っていた煙草を無意識に落としてしまい、ついデカい声が出る。
「伊崎さーん!行きましょー!」
見ていた石田が馬鹿喜んでいる。
「待てって」
出口前でピョンピョンして煽ってきやがる。
くそ、奴め。日に日に強引になってきてるな。
「俺の恋心は深く傷付いてまーす!」
「⋯⋯あぁ」
本当、俺って締まらねぇな。




