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自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

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昔と今

 「紗季お嬢様、私共も後に合流いたしますので」


 「うん!行ってくる!」


 校門、玄関を抜け、教室に。

 

 「紗季ー!」


 「おはよう!」


 いつものように挨拶すると、友達の愛花がチッチッと指を振る。


 「どうしたの?」


 「"ご機嫌よう"でしょ?

 今日はお嬢様校をしっかり、全面に出していかないとなんだから!」


 あっ、そっか。

 今日は高校最後の文化祭か。


 「まぁそりゃ昔は?

 しっかりお嬢様しないといけないわけだけど、今はそこまで気にしなくてもいいのにねぇ!?」

 

 「そうだね。

 今日は最後だし」


 二人で仮準備が終わった廊下をひょこっと覗き込む。


 「紗季はそうじゃん、大学どうするの?」


 「んん?

 慶應に行こうかなって」


 「慶應?なんで?」


 

 ーーいつか大きくなったら



 「ん?あぁごめん、なんだっけ」


 「男の匂いがする」


 「⋯⋯えぇ?どうしたの?」


 愛花に両肩を掴まれ、ブンブン前後に振られる。


 「今雌の顔をしたな!?

 私を置いておいてどんな男とイチャコラしてんだよ!


 ──私にも紹介しろ!」


 「ち、違うよ!」


 「私には分かるね。

 天下の白波になんの影もないなんて⋯⋯私には信じられない」


 「い、いや⋯⋯っ。

 男の子なら分かるけど、私達は将来もあるんだから遊べないよ!」


 「何言ってるのよ!

 そんなの建前ってやつよ!


 あそこにいる嶋田も、木村も、みんな居ない居ないって言っておいて、裏でデートしてるのを見たって言う目撃情報があるのよ?」


 「そ、それはそうだけど」


 「人気もあって、可愛いくて勉強まで出来て⋯⋯男が放っておくわけ無いでしょ!?」


 「⋯⋯そ、そんなこと言われても」


 「あ、でもあれか。

 お父さんとか見たら殺されそうだもんね」


 「ま、まぁ」


 私は家でのパパを知っているから愛想笑いしか出来ない。


 「さて、私達も準備に取り掛かろう。

 最後だし──完璧にしないとね」


 「うん!」



 




 本準備。

 私達はカフェをやる予定だ。


 その為の準備をする中、私は独り頭に色々なことが渦巻く。


 教室内で飛び交う声が嘘のように気にならないくらいには。


 将来、私は何になるんだろう。

 そう思った事がある。


 高校1年生の時だ。


 色々考えることはあったけど、とにかく勉強だけは成績上位でいることが必要で、何をやるにしても土台となるもの。


 だからしっかり勉学は励んだ。

 あとは部活動でもある書道では学内ランキングで一番を獲ったりもした。


 私には分からないけど、周りに褒められて、友達もすぐに出来たから、色々な話を聞く。


 彼氏がどうのだとか、将来どんな男を選べばいいのだとか、どういう所を見るべきなのだろうとか。


 でも、私にはピンと来なかった。

 女は家にいるのが大前提だからだろうか。


 対男についての話しか行われない。


 「⋯⋯⋯⋯」


 窓の外から差し込む太陽の光。

 無意識に上がる、私の顔。


 

 ーー白波は将来どうしたいんだ?



 頭に浮かぶのは、もう忘れかけの彼の声。


 あれから一度も会っていない。

 私としては、良くもないが悪くもないと言ったところだ。


 理由は簡単。

 今は今で充実していて、思考を挟まない生活になっているから。


 きっとまた会ったら、今の生活が落ち着かなくなるのは見えてるから。


 でも、もう三年も会ってもないと、気になってしまう。


 だし、やっぱり声が聞きたい。


 でも実際、振られたようなモノだ、

 この話をしたら、周りにはソイツは見る目が無いと一緒になって言ってくれたが、心の内は違った。


 だってどこか──彼の目は私を尊重してくれているような気がしたから。


 "ちゃんと決めろよ"。

 そう言われているような気がして。


 だからかな。

 忘れたくても忘れられない彼の儚げな笑みがこびり付いて離れない。


 夏の終わりに寿命を迎える最期の男の子の笑顔のような感じだ。


 その笑顔には独特な色気があって、でも飾ってなくて。


 しかし私の事を明確に女として見てくれてる感もあって恥ずかしさも見せてくれてるあの陽だまりの一瞬が──この三年間、どんな話もしてくれる学校の女子たちのエピソードを超える気がしないのだ。


 あれだったら、毎日が夏でも良かったくらいだ。

 

 私は、夏が嫌いだ。


 しかしあの時、暑くて、少し滲む腕の汗。

 でも、垣間みえてくる男の子らしい身体と恥ずかしそうに見つめる彼の姿を超えてこないのだ。


 彼は言った。


 "色んな男と恋をして、経験をして、それでもまだ忘れなかったらその時は──って"



 でも、貴方とのあの夏の思い出が、まだ取れそうにもありません。


 しかしきっと貴方はまだまだと言って笑ってると思う。


 でも。


 でも。


 何故だろう。

 

 "きっと生涯、貴方を超える男の子が現れる気がしない"


 ⋯⋯なんて思うのは私だけなのかな?


 言葉にするのが難しい。


 あんなに男の子が美しいと思った事も。

 愛おしいと思ったのも。

 母性本能が出たのも。


 恋ってこういう事なんだって思ったのもきっと、貴方だけなのかもしれない。


 これって恋じゃないのかって貴方に言いたい。


 運命なんじゃないの?って。

 だけどきっと、人生は試練なんだと思う。


 だから私は、普通の道を外れないとと思って、実家の仕事を継ぐ為にも、大学へ出て学ぶべき事を学ぶ必要がある。


 貴方という太陽に並ぶ為に。

 いや。


 貴方は太陽ではなく、月なのかも。

 黙って見ていてくれる。


 それなら、私が太陽か。

 できるかなぁ?なんて。


 





 それから本準備を終えては文化祭が始まった。


 私は早速ホールの担当として活動を始める。


 「あっ、嶋田さんのお父様ご機嫌よう!」


 「ご機嫌よう、白波さん」


 「ご、ご注文はお決まりでしょうかっ!」


 「あの白波さんの娘さんがこんなにも緊張しているなんて面白いなぁ。


 では、アイスコーヒーとショートケーキを頼もうかな」

 

 「はいっ!畏まりました!」

 

 私は早速キッチンのクラスメイトに注文を読み上げる。


 「りょー!」


 そしてまた注文を取って、読み上げてを繰り返す。


 ⋯⋯こんなにホールって大変なの!?

 これバイトの人達みんな超人だよ!

 凄い!


 そうして二時間位経った頃くらい。

 

 「何あの人⋯⋯ちょーかっこ良くない?」

 「どこの息子さん?若いのに関係者かなぁ?」

 

 注文を読み上げていると、クラスメイト達が何やら盛り上がっている。


 正直今忙しいのに。

 と喉まで出かかったけど、どうしたのかと訊ねる。


 「今教室の温度高いよ」


 「どういうこと?」


 「ちょーイケメンが入って来てマダムや他のホール担当が女出してるの!」


 イケメン?

 そもそも結構居た気がするけど。


 有名人とかも来てたくらいだし。

 一般の人は居ないだろうけど、そこそこ関係者っていうのもあってイケメンと言われるジャンルの人はいたはず。


 「忙しいからホール頼むよぉ」


 「紗季も見に行ってみなよ!」


 「はいはい。

 とりあえず注文を取ってくる!」


 もう。そんな場合じゃないよぉぉ!!


 と、奥の人の注文を取ろうとして横を通り抜けた時だった。


 胸がドキッとした。


 「そこの美しい店員さん、注文良いかな?」


 思わず止まって見下ろしていた。


 そこには、深い黒のVシャツに白いスラックス。


 肩がけの縁だけ毛皮が付いたロングコート。


 言うならマフィアみたいなファッションをした男の子がでかい態度を取るわけでもなく、小さく私を呼んでいたのだ。


 しかも、肩に付くくらいまで髪は伸び、前髪は目が隠れるギリギリ。


 だが、よく見ると──その声と顔、そして、少し儚い瞳。


 一人だけ異質な空気がここにだけ漂っている。




































 「伊崎くん?」

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