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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

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閑話:遭遇(後編)

 仰向けで寝る俺の天井と空を隠しては覗き込む絶世の色男。


 「だ、誰だ!?」 


 「おぉ、これなら大丈夫そうだな」


 美しい。

 あまりにも美しい。

 

 「草薙?」


 「草薙⋯⋯?ちょっと待ってよ⋯⋯」


 そう言わざるを得なかった。

 一瞬そっくりだったのだが。


 草薙もかなりの色男ではあったが、それとは別格だ。


 最近見ていたアニメキャラクターが動き出しているような違和感すら覚える。


 表情が動く度にそう感じる。


 そんな男は、手帳を取り出してペラペラ捲っている。


 「あっ、これだな。

 草薙恭司。

 俺が喋ったやつの一人にカウントされている」


 どういう事だ?


 「なぜ手帳を?」


 「ん?あぁ。

 俺は記憶と人格がいくつか分かれてるんだよ」


 病気⋯⋯ではなさそうだな。


 「すまない。

 俺には何を言ってるのか全くわからないのだが」


 「あぁ。まぁ、そうだよな。

 魂にも、刻まれている情報は普通の一般人みたいだから」


 まずいぞ。

 大将、俺はこの男が何を言ってるのか何も理解できん。


 ──助けてくれ。


 「あなたは違うのか?

 それに、これなら大丈夫そうだなと言う言葉も引っかかる」


 「あぁそれね?」


 見れば見るほど、草薙が浮かぶ。

 カキーンと高いライターの開閉音が響き、煙草に火をつけている。


 そのつけ方、顔の風貌。

 全てがそっくりだ。


 そこまで考えた時、一人の存在を思い出すのだが。


 いやまさか?


 「さっきあそこで会った時は俺の本体だったんだよ。


 真体と真名でな」


 「真体?真名?」


 「あぁ悪いな。

 まぁようは本体と本名って意味だ。


 俺は普段、今お前の目の前にいるように、身体の格を下げるような処置を取らないと普通の人間は俺の前で発狂して死ぬんだ」


 「な、なる⋯⋯ほど?」


 「まぁある意味普通の人間じゃないと思えばいい。


 細胞が震えなかったか?」

 

 「そ、そんなことがあってから突然」


 「そうそう。

 人間の本能みたいなもんだよ。

 その根源に抗えない」


 「つ、つまり⋯⋯神様的な存在であるということか?」


 黄金の瞳。

 肩から少し垂れる程の白髪。


 そんな男がこっちを射抜くように見る。


 「どっちだと思う?」


 「⋯⋯本物であれば、俺は不敬で死ぬんじゃないのか?」


 「ふっ、だな」


 「ん?」


 黒い質感の煙草の箱。

 男は吸えよと言わんばかりに俺に向けてきた。


 「煙草。吸うんだろ?」


 「あ、あぁ」


 「これ俺が作った煙草でさ」


 「これを?」


 「あぁ。

 これはスペード。トランプがモチーフ。

 

 全部で四種類あるんだけど、これがレギュラーで一番吸いやすいと思う。


 ちなみにこの煙草──従来の煙草なんだけど、害が全くないんだぜ?」


 耳打ちしてくる男の言葉に、軽く興奮する。


 「そんなものがあるのか!?」


 「あぁ。

 それがこの俺特製の煙草なんだよ」


 「これを販売したら億万長者になりそうなものだが⋯⋯」


 「くっ、金なんていつだって稼げるだろう?

 ガキンチョ、お前はいつだって稼げるんじゃないのか?」


 「さっきから気になるんだが」


 「⋯⋯ん?」


 「俺より子供ではないのか?年齢だ」


 どう考えても大人と子供の間くらいだ。

 背丈は180くらいだが、どうにも身体を見れば若い。


 「17だ。この人格の記憶はな」


 「⋯⋯また訳がわからなくなる」


 「んー。そうだなぁ。

 俺の気持ちが分かる人間があんまりいないからなぁ」


 「人格ということは色々あるのだろうが、俺より長生きということか?」


 「そりゃな」


 同じく仰向けに倒れる男は伸びをしながら握り飯を食いだす。


 「少なくとも⋯⋯宇宙人くらいは生きてるかも」


 「宇宙人?」


 「4から5かな?

 でも時間というのは存在しないからなんとも」


 まずい。話が全くわからない。


 「時間は時間なのではないのか?」


 「ん?そうか。

 やり取りで感じた違和感。


 ガキンチョお前、地球のやつか」


 「あ?あぁ」


 「そうかなるほど。

 草薙って言ってたもんな。

 てっきり俺はイシュルの人間かと思ってた」


 「すまない。何もわからん」


 「だろうな。地球は遅れてるしな」


 「遅れてる?」


 「あぁ。

 草薙のガキに言ったはずなんだけどなぁ」

 

 「それは俺も聞いてもいいものなのか?」


 「ん?まぁな。

 だってここに来れるってことは、少なくとも血が混じったって事だし、つまり──草薙の奴がガキンチョを認めたってことだから血を分け与えて本能を引き出す事に成功したというわけだ」


 「⋯⋯本能?」


 「ん?あぁ、説明されてなかったのか」


 「全く何も」


 「あぁ⋯⋯アイツ⋯⋯なんも説明してないのかよ」


 頭を掻きながら呆れている様子の男。


 「まぁいいや。

 とりあえずここに迷い込んだってことは、ガキンチョにとって大事な事だけに絞ろう」


 「た、頼む。

 俺は馬鹿だから、あまり難しい事はわからん」


 「そうなのか。

 じゃあ大まかに」


 そう言って人差し指を出す。


 「一つ目。


 今、ガキンチョは本能に適合した。

 本能は俺や、草薙の血が必要で、草薙は俺の血を分け与えているからその血を更にガキンチョに分け与えた事でガキンチョは俺に会えている」


 「草薙のあの行為には意味があったのか」


 確かに。

 最後の工程で俺は病室で輸血をされた。

 意味があるのか理解はしていなかったが、ちゃんと意味があったのか。


 「あぁ。

 本能を操るには俺の血が必要で、俺の技を使うのにもそれが絶対条件だからだ」


 ⋯⋯そこで、俺はやっと誰かが分かった。


 「あの時の記憶にいた草薙が慕っていた男か」


 「⋯⋯ん?

 あぁ、自己紹介がまだだったな」























 「神城仁。

 こっちはよく表向きで使う名前で、ほとんどの人間にはそう名乗ってる。


 だが、本名は──」


 握手を交わす。


 「"神門創一だ"」

 

 「みかど、そういち」


 「あぁ。

 こうして本名を名乗るのは初めてだな」


 「真壁銀譲だ。

 元極道に属していて、今ではとある青年の護衛をしている」


 「なるほど。

 極道なんて懐かしい響きだ」


 「ないのか?極道は」


 「ないな。必要ないし」


 「そうか。

 あの技を教えてくれた男だったとは」


 「なるほどな。

 つまり俺の技をそこの世界で引き継いだのは──真壁になったのか」


 

 ーーこの技は、正統な人間に引き継がれる事を願っている


 

 「あの人外のような技のおかげで、勝つ事ができた」


 「そうか。それなら良かった」


 「あら創一様、お話中失礼しますー」


 「千代、ほら置いておいて」


 さっきのおばあちゃんだ。


 「鍋はウメェよなぁ」


 「出来たてですから、気を付けて」


 ブクブクいってて美味そうだ。

 醤油の香り。腹が減ってくる。


 「うちの醤油はマジの天然物だからな。

 多分醤油の概念変わるぜ?」


 「そんなに違うのか?」


 「あぁ。

 ていうか、俺が最後にアイツと喋ったのは何年だったか忘れたが、今そっちは何年なんだ?」


 「2015年の9月頃だ」


 返事を返した途端、創一の顔は浮かない様子だった。

 

 というよりこれ、なんだ?


 醤油なのか?

 濃すぎて2度見してしまう。


 「どうかしたのか?」


 「⋯⋯そうか」


 「ん?その間はなんだ?」


 「いや。

 あまり言及するべきものではないと判断したまでだ。


 と言っても、真壁のガキンチョはここで話したことはほとんど忘れるがな」


 「何故だ?折角恩人とこうして話せたのに」


 「ここはそういうものでもある。

 単語にすると俺の心象世界。


 俺の魂を使って創り上げた俺が主導の世界を一つ作り上げた場所というわけだ。


 端的に言えば、文字通り俺が神様の世界だな」


 「何から突っ込めばいいのか⋯⋯色々全てが狂ってるように感じる」


 「端的に説明すると大変な事になるがな」


 「あまり考えないほうが良いのだろう」


 「というより、常人が理解出来たらそれはそれで面白い」


 俺に箸を向けて笑う創一。


 「そうだな。

 話は戻るが、ここにいる一つ目が適合したということだが」


 「あぁ、そうだったな。

 まぁ要するに、聞いた感じ今肉体は危機的な状態ではあるが、本能による適合を終え、一度根源である俺の所へと飛ばされたというのが自然だろうな」


 「人間⋯⋯なのか?」


 聞いちゃ駄目なのかもしれんが、こういうのは一度聞いておく。


 「"最初は人間だった"。

 それで察することができるだろうな」


 「人外はある意味正しかったということだな」


 「そういう事だ」


 そんな事よりも。

 醤油、素材。

 どれをとってもあまりにも美味すぎる鍋。


 正直話しているのが微妙なくらい食事はドンドン進む。


 そうして談笑しながら2つ目の話に。


 「あぁ二つ目ね」


 「この時間がいつまでも続くとは思えないのでな。


 創一に聞きたい」


 「二つ目はおそらく根源的なもので、危機的な予知を迎えてる可能性が高い」


 「予知?」


 「それがさっき話した判断した話に繋がる」


 「聞いても⋯⋯?」


 少し険しい顔はしているものの、創一は頬杖をついて青空を見ながら言う。


 「まぁ、忘れるだろうから。

 仕方ない」


 そう言って1本ずつ指を立てていく。


 「1999、2013、2017、2022、2026」


 「⋯⋯?」


 「なんの数字だと思う?」


 かき込む創一の言葉に、安易な言葉しか浮かばない。


 「年月⋯⋯か?」


 「そう。正解。

 だが、なんの西暦だと思う?」


 「すまない。

 多分何を考えてもわからないと思う」


 「だろうな。

 一応考えてもらわんといかんからな」


 食べ終わり煙草に火をつける創一は、片膝をつきながら池を凝視して、煙を上に吐く。


 「まぁ、恐らくわかる奴にとってはうわーまじかよと思うのだろうが」


 「そうなのか?」


 「2000年問題とか聞いたことないか?」


 「あ~あったな。

 世界の滅亡とか予言とか」


 あの時は色々あったもんだな。

 

 「そう。

 あれって普通に考えればおかしな与太話みたいなものだろう?」


 「あぁ」


 「だが。本来は違う」


 「⋯⋯?」


 「あれはただのゲームチェンジャーのようなものだ。


 裏を返せば人類の審査に近い」


 「審査?」


 「俺とお前らが同じ世界線でない理由がこれだ。


 全ての選択にルートが変わる。

 過去の選択も含めてな」


 ルート?


 「まぁ内容はともかく。

 この審査は大きく言えば滅亡と言って差し支えない。


 塔が現れる時期を表してるからな」


 「塔?なんだ、それは」


 「塔は全てが集まる場所。

 ある者にとっては人生を賭けるに値する場所であり、ある者にとっては幸福そのものが眠る場所であり、ある者にとっては全てを失う地獄のような場所でもある。


 少しスピリチュアル的な事を言えばアカシックレコードという単語が一番近い」


 「それが出来ると⋯⋯どうなる?」


 「既存の価値観は崩壊する。

 全ての歴史が一瞬にして塵と化す」


 「そ、それがどう関係しているのだ?」


 「塔は最低限の審査でしか通さない。

 つまり、お前たちの精神性が一定に行かないとただの地獄が可視化されるという話⋯⋯と言ってもきっと分からないだろうが」


 「あぁ、全くわからない」


 「知らないほうがいいだろう。

 ただ、塔は必ずしも悪いものではないというのも事実だ」


 「ん?んん?」


 「なぜなら、力を手にすることもできるからだ。


 認められ、立ち入る事ができる存在になるしか方法はない」


 「つまりその審査がある年ということか?

 さっきの話は」


 「まぁそう言うことになる。

 いつまでも戦争しているような奴らに塔の力は更なる地獄を産むだけだ。


 だからあのガキンチョには最低限の力を与えた。


 その時代ではまだ人外レベルの力だが。

 

 まぁ、複合的に重なった条件だったから叶っただけだがな」


 「まとめると、その予知を知らせる為に飛ばされたというのが二つ目ということか?」


 「恐らくな。

 一つ目と二つ目が半々の状態で来たのが有力だな」


 「その塔っていうのは、阻止できるのか?」


 「基本的には不可能だ。

 俺達から想像もできない上位的存在から遊ばれてるだけだからな」


 「創一でもか?」


 「いや?俺は卒業したから問題ない」


 猛獣のような笑みを見せつけてくる。

 見れば見るほど草薙だ。


 アイツが憧れたというのがよく分かる。


 「その年に審査が?」


 「あぁ。

 その年に審査が通れば、塔は現れる。

 だが、それは部分的には地獄の始まりとも言える」


 「複数回あるということは、回避をしようと思えばできるのではないか?」


 訊ねた俺の言葉に創一は口を三日月みたいに歪め、笑う。


 「よく分かってるじゃないか」


 「やはりか」


 「あぁ。

 回避の方法は二つ。


 一つ目はただの自殺。

 人類が滅ぶ」


 「それはないな」


 「そう。そして2つ目。

 これはアイツらの特性を利用したものだが」


 「ん?」


 「平和である事」


 「平和であること?」


 「あぁ。

 アイツらは混沌を愛する傾向にある。

 アイツらは、自分のあげた力を使って人間を戦わせようとする。


 ──物語と謳ってな」


 「⋯⋯⋯⋯趣味が悪いな」


 「俺もそう思う。

 まぁ基本的にそれが絶対者と呼ばれる者たちの存在だからな。


 俺達人類に感情があるのを利用されている。

 自分たちは絶対的な力があると分かっているから」


 スケールがでか過ぎて⋯⋯。

 しかし、今大将がやっている事もスケールがでか過ぎて何がなんだか。


 「平和であること⋯⋯か」


 「あぁ。

 人類に求められているものはその平和だ。


 そしてそれに関するヒントをアイツに与えたのだが、聞いてる感じまともに使ってはいないようだな」

    

 アイツ、今その力で職権乱用してるなんて言ったら、ヤバそうだな。


 「貸し一つだぞ」


 「⋯⋯ん?どうした?」


 「なんでもない。

 ではもし上手く行けば?」


 「まぁ、干渉らしい干渉はしてこないだろう。


 その世界を監視はするものの、恐らくはだがな」


 「ルートと言ったな?

 つまり、他のルートは⋯⋯」


 「潰されたぞ?塔によって」


 「そ、それは⋯⋯文字通りということか?」


 無言で頷く創一。


 「そうか」


 「だがまぁ仕方ないことだろう。

 俺達には感情があって、魂がある。


 誰だって金持ちになりたいし。

 誰だって権力を持ちたい。

 誰ってちやほやされたいし。

 誰だって唯一を求める。


 人間はそういう生き物だろう。  

 その時代時代でその定義が異なるだけだ。


 真壁のガキンチョは?

 お前はどうなりたい?」


 問われる。

 これも、人外の質問⋯⋯なのか。


 色々考える。


 昔の自分。

 仲間、家族。


 自分が何を成して何をして行きたいのか。


 「俺は、今ある幸せ以上を求めずにこのままがいいと思っている」


 「だが、権力や力を手にしたら人は変わるぞ?」



 ーーお兄ちゃん!遊ぼ!

 ーー銀、今日もやろう

 ーーアニキ!
























 「俺に必要なものは人生でもうない」

 

 「⋯⋯ほう。

 覚悟が決まっているな」


 「あぁ。 

 俺は必要以上に求めるほどよい人生を送っていないから。


 仕事があって、家族がいて、仲間がいる。

 それだけで十分だ」

  

 俺が語っているのを聞く創一は、まるで親のように穏やかな暖かさだった。


 「フッ、そんな奴に俺の力が継承されたのなら、本望だ」


 「それなら良かった」


 「俺はいくつも時間を超越しているからきっとこの会話も手帳に書くだけになるが、何かあったら──」


 "神門創一の名に於いて、一度だけ力を貸してやる"

 

 「⋯⋯ッ」


 「大層なものではない。

 気軽に言え。


 そうだ。

 お前は護衛をやっていると言ったな?」


 「あぁ」


 「名前は?ソイツの」


 「伊崎湊翔と言う。

 今では日本でも各方面で有名になりつつあるが」


 手帳を捲り、確認する創一。

 ──だが。


 「誰だソイツ」


 「え?」


 「そんな有名人⋯⋯俺の見てきた世界に存在しない」


 「どういう事だ?」


 「ソイツの名前は本物か?」


 予想外の言葉に俺は動揺を隠せない。


 「本物だ。

 家族もいるし、俺は遠目ながら確認している」


 「そうか。

 あらかた手帳には歴史的な人間の記載はしているはずだが」


 悩みながら捲る創一の表情は険しい。


 「恐らく偽名?

 いや、まぁいいだろう。

 後で確認しておこう。


 ──ともかく。コレで。

 真壁銀譲という人間は俺の手帳に記憶した。

 完全に忘れることはないだろう」


 パタンと手帳を閉じる。


 「一つ聞いてもいいか?」


 「あぁ」


 「人格というか、創一は何故人外レベルなんだ?」


 「あぁ⋯⋯それはな⋯⋯」


 少し悩む素振り。

 

 「俺はパラレルワールドを行き来できる」


 「⋯⋯それは創一だけということか?」


 「まぁ色々複雑ではあるんだが、大まかに言うとな」


 「まじかよ」


 「だから、失敗した世界、成功した世界。

 色々行けるんだ。

 これは秘密だぞ?


 って言っても、どうせ忘れるから関係ないけどな」


 頬杖をつく創一を見ると、如何に草薙が好きだったかが分かる。


 仕草の全てが創一のまんまだ。


 「そろそろ時間らしいぞ?」


 「え?」


 創一の言葉を聞くと、身体が光る。


 「まぁ、会えて良かったよ。

 残り少ない時間──存分に楽しめ」


 「あぁ!」


 だがきっと。

 大将ならそうならないような未来が来ると⋯⋯俺は信じている。


 忘れてしまうのか。

 この記憶が。








 「⋯⋯⋯⋯」


 「アニキ?」


 「あ、あぁ。石田か⋯⋯」


 「アニキぃぃ!!!

 伊崎さん呼んで来ます!!」


 身体が重い。

 ピクリとも動きもしない。


 目線を必死に動かす。


 しっかし、包帯ぐるぐる巻きだな。

 生きているのが不思議なくらいだ。


 「銀」


 「珍⋯⋯しいな。

 息を荒くしているのは」


 「そりゃそうだろ。

 大事な仲間だからな」


 ⋯⋯仲間。

 まさかあの事から、こんなに信頼を寄せてくれるなんてな。


 「20⋯⋯」


 「ん?」


 「なんだっけ⋯⋯」


 「まだ意識があやふやなんじゃないか?」

 

 「そうですよ!

 アニキ!ゆっくり休んでください!」


 「201⋯⋯7⋯⋯」


 「2017?それがどうしたんだ?」


 何か⋯⋯なんだったか?

 何か⋯⋯大事な⋯⋯


 「塔⋯⋯201⋯⋯7⋯⋯大将が、止め⋯⋯る」

  

 「なんだ?なんか変な夢でも見たのか?」


 「わか⋯⋯らない。

 ただ、大将が必要なんだって⋯⋯誰かが」


 "その時まで、楽しめよ"


 「大将が世界を⋯⋯」


 眠い。意識が⋯⋯


 そこで、俺はまた眠りについた。

 次に目が覚めたのは、それから3ヶ月後の事だった。

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