急遽帰省
それから一月。
俺は、単独で転移魔法を使って日本に帰ってきていた。
パスポート?飛行機?
俺にそんな無駄なことをさせるんじゃない。
本当はもっと早く行きたかったのだが、さすがに状況も状況だ。
アイツらの状態が普通になるまでは待つことにした。
治りはしないがとりあえず布団の上でゲームしているくらいなのは見守った。
「あら?そーちゃん!?」
「ただいま」
突っ走ってくる母と熱いハグを交わす。
「湊翔か。
よく帰ったな」
「ただいま、父さん」
一応念の為、特殊な帰り方をするから内緒でという風に伝えている。
なぜかって?
日本の会長たちには何も伝えていないからだ。
ありゃ、マジでバレたりしたら本気でもう海外に飛べないと思わせられるほどの囲いっぷりだったからな。
無断で行かないといけないくらい囲われるってどんな状況だよ。
「お鍋用意したのー!
そーちゃんお腹空いてるでしょ?」
「うん、ありがと」
「あっ!お兄ぃ!」
「よう南、結局学校は?」
「あらそーちゃん?
聞いてなかったの?」
「ごめん母さん、忘れてる」
「もーっ、普通の高校に進学したのよ、ねぇ?南」
母の問いかける言葉に南はサムズアップで答える。
「お兄ぃが今しかできない事をっていうから、とりあえずまだいいかって」
「それが良い。
昴の話題も、普通の高校じゃないと出来ないだろう?」
「まぁね。
でも、お兄ぃが紹介してくれたあの職場⋯⋯凄いよ!」
南が言っているのは、俺が投資といつかの日のために用意しておいた有名店の枠。
そこで、学生なりに職場の空気や実力を早くからつけさせるために交渉していたのが、やっと正式に始まっていたらしい。
俺はあくまでも、南が言い出してから本番だと思っていたのだが。
「なら良かったよ。
あそこの人は一流らしいし、しっかり学んでおけよ?
遊びと勉強は両立できるはずだ」
「了解です!
スーパーオニィ!」
「軍人かよ。
まぁ、そんな家族にプレゼント」
本場のブランド品の数々と向こうで有名な料理をそれぞれ買ってきてある。
「あら! いいのにー!」
「やったー!」
「南は気をつけろよ?
高校だとそういうので問題が起こったりするんだから」
こういうのはあるあるだろ。
カースト的なものも、浮いてしまうという事でもな。
「はーい」
「拳哉は?」
「今日はお友達の家にお泊りよ」
「拳哉も成長したもんだ」
一人頷いていると父が参戦してくる。
「あれも5年生だからな。
湊翔、あまり与えすぎるなよ?」
「そんなに釘を刺さなくても」
「知ってるわよ?
そーちゃん、隠れて学校まで行って色々やってるんだってね?」
⋯⋯この両親強過ぎ。
なんでバレてんだよ。
拳哉に最新型のスマホを与えに行ったのを。
「あははは」
「やるなとは言わん。
むしろ本来は俺たちがやるべきものだ。
そこは感謝している。
だがな、限度があるだろう?
エーチューンカードをたんまり持っていって課金までさせたそうじゃないか」
「あ、あぁ」
「湊翔の気持ちは分かってる。
だが、拳哉はあれでもまだ子供だ。
当たり前にさせると大人になって湊翔がいないと苦労する」
⋯⋯正論を聞くと色々思う所があるな。
あっちでは注意なんてしたら頭がぶっ飛んでたからな。
感覚がまだ慣れん。
早く慣れろなんて無理だ。
貨幣価値で言うところの数千億近くの金を当たり前のように子供に譲渡させたり豪遊させたりしてた時代だ。
こんくらいで──なんて思うのは俺だけなのだろう。
「気をつけるよ」
「頼むぞ。
ただ、湊翔の気持ちも分かる。
だから言及できない親の身にもなってくれ」
「だね」
空気は和やかなまま、鍋をつつく。
「しっかりお野菜も食べないと」
きっと。
俺はこの空間の中でしか、まともな人間ではいられないのだろう。
前を見れば両親が笑っていて、横には我が妹。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
「皿洗うよ」
「いいのよ、ゆっくりしなさい」
こういうやり取りもここならではだ。
「そう言えば湊翔」
「んー?」
ソファに座る父の隣に座る。
「何かあったから来たんじゃないのか?」
「あぁー、そうだった」
っぶね。
目的を忘れる所だった。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたんだ?」
「レグルスって人知ってる?」
「⋯⋯誰だそれ?
外国人の知り合いならいないぞ?」
カマかけたつもりだったけど、反応が微塵もないな。
「そっか」
「なんだ。どうかしたのか?」
「いやね?
人生ですげぇお世話になった人がいるんだけど、その人が父さんと母さんに手紙を渡してくれって言われてさ」
「ほう。またそれは珍しいことだな。
湊翔がお世話になったのか。
挨拶でもさせて欲しいくらいだが」
「残念な事に──もういないんだ」
「⋯⋯そうか。嫌な事を聞いたな。
最近なのか?」
「そう。
ちょうどこの間」
手紙を渡しながら、俺は返事を返す。
「貴族みたいな封筒だな。
黄金に、封蝋か?」
だが。一瞬──。
「⋯⋯ッ」
「父さん?」
「いや?なんでもない」
ビンゴ。
何かあるぞ、これは。
「手紙読んでよ」
「なんでだよ。
父さんと母さんに渡してくれって言ったんだろう?」
「その人ロクな人間じゃないからさー」
「そんな人間なのに、真面目な湊翔が慕うなんてよっぽど良い人間なんじゃないのか?」
まぁ、それは⋯⋯そうなんだけども。
「後でどんなことが書いてあったのか伝えるから。
それでいいだろう?
さすがにお世話になった人も言いづらい事でもあるんだろう」
さすがにこれ以上は詰め寄るのはよろしくないな。
「そっか。じゃあ後で聞かせてよ」
「あぁ。今日は泊まっていくのか?」
「お言葉に甘えて」
「何言ってるんだ。
まだ未成年なんだぞ?
親としては、親元を離れている方が不思議で仕方ないんだからな」
まぁ、普通に見ればおかしいのは俺か。
「確かに」
だが。
色々考えるべきことが増えたな。
──これは色々調べたい所だ。




