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【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

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結構な事

 俺はしばらく、その場から動けなかった。


 最後の言葉。

 


 ──"湊翔"。



 人生で頭が回らなかったのは数え切れるほど。


 どういう事だ?

 表では見てないと言ってるだけ?

 頭の中で思考が巡り巡って全く計算が進まない。


 ⋯⋯この天才の俺が。



 ──"意外性、予想外"



 「今それは違う」


 そして、視線は手に持っていた受け取った手紙。


 「⋯⋯⋯⋯」


 これ、中身みてぇ。


 理由は二つ。

 一つは純粋にあの人ならマジで変なもんを渡す可能性があるということ。


 もう一つは、考えたくもないが、親が何かしら関わってた⋯⋯とか。


 「っぁはぁ⋯⋯考えても仕方ないか」


 息継ぎ出来なくなったのは久しぶりだ。


 「っ、じゃなくて」


 ジジイ!


 「アイツは色々使えそうな筈⋯⋯っ」


 見渡すと、ローブの上に灰となったヤツの残骸。


 「チッ、興奮して気にもしてなかった」

 

 じゃない。

 もしかしたら、ではなく。


 多分アイツらも襲撃を受けているに違いない。


 「急ぐぞ」






 

 固有結界から出た後。

 俺はすぐに石田たちへの所へ向かった。


 状態はまぁ予想通り。

 すぐに救急と被害状況の確認から。


 幸い確認するとこちらで死傷者は出ていない。


 重傷者は20人程。


 日本ではないことを考えると、中々悪くない数字だろう。


 相手の状態を見るに、確実にギャングだ。

 

 「伊崎さん!!」


 びっこを引きながら泣きじゃくって俺の懐に入ってくる石田。

 

 「どうした?」


 「アニキが」


 ⋯⋯っ。


 そこには、見るからにヤバそうな銀の姿があった。


 普通に診察をするが、考えなくても分かる。

 

 「石田、どうする?真面目に伝えるか?

 それとも、オブラートに包むか?」


 俺の問いに確信してしまったのだろう。

 真っ直ぐ俺の目を見て言う。


 「真面目にお願いします」

 

 「恐らく⋯⋯もう普通に日常を過ごす事は難しいだろうな」

 

 見ても全身骨があらぬ方向に向かってるし、拳に至っては粉砕されてる。


 「っ、なんで⋯⋯」


 さすがに見てられん。

 

 「普通──ならな」


 言うと無言で俺を見上げる。


 「なんとかなるんですか?」

 

 「あぁ」


 「くうっ⋯⋯ううっ⋯⋯伊崎さぁぁぁん!!」


 「あーはいはいはい」


 見ての通り、完全に蓋が開いて縋りついての大号泣である。


 「伊崎」


 背後から声が聞こえ、振り返るとそこには。


 「仕事をしてくれたのか」


 「あぁ。

 カジノに行くって連絡があったからな」


 タイミングバッチリってわけか。


 「草薙、相手は?」


 「もう押さえてある。

 準備は万端だ」

 

 「サンキュー」


 「アイツら、どうするつもりだ?」


 袖なしに羽織っていたスーツに腕を通し、煙草に火をつけながら聞いてくる。


 「まぁ、アイツら次第だな」

 

 常識、序列。

 日本と外はまるでシステムが違う。


 それに、仕事とはいえ、一度攻撃をしてきた相手だ。


 「先頭で膝をつかされているあの二人⋯⋯多分こいつらみたいなもんだ」 

 

 顎で指してそう囁いてくる。


 「引き入れろと?」


 見上げて返す。


 「いや? 

 アイツらは弱くない。


 だが、アイツらの根性のようなものが常人のそれではなかった。


 腕が折れても、脚が逝こうと、構わず特攻してきた。


 ギャングであんな行動をとるやつなんて見たことない。


 だから念の為な。

 仕事の範疇だ。


 さすがに100億も貰っておいて尻拭いだけだとお前も嫌だろう?」

 

 グラサン掛けながら言うことではないが、まぁその通りだな。


 「そりゃ良い仕事をしてくれる」


 「それと、真壁銀譲の拳の方だが」


 「⋯⋯?」


 「腕の良い医者を知ってる。

 一度退院したあと、俺のところに連れてこい。


 今以上に強くしてやれる」


 「それも100億だからか?」


 皮肉っぽく言ってやると、少し頬を緩ませながら鼻で笑う。


 「ソイツは俺が唯一認めた漢だからな。

 簡単に死なれては困る」


 「そうか。

 何かあったらまた頼むぞ」


 「⋯⋯まぁせいぜい、養生しろや」


 背を向け、手をあげて優雅に去っていく。


 「伊崎さん」

 

 「ん?」


 「俺⋯⋯」


 石田。

 座りながらも太腿にある拳を握り締めて震えていた。


 「俺⋯⋯もっと強くなります。

 もっと⋯⋯頭良くなります」


 「だな。

 銀も精一杯だったろう」


 「聞きました。

 アニキは俺達を信頼してはいても、背中を預けられなかったって。


 だから、これ以上重荷を背負わせるのはなしにします」

 

 だが。

 強ばり過ぎだ。


 俺は肩に手を置いて言う。


 「積み上げろ」


 「⋯⋯え?」



 ーー理解することを恐れるな。

 ーーお前はお前の道を歩め。

 ーー死ぬ時に味わうスープを何にするかはそいつ次第だ。



 「毎日、ただ⋯⋯やるべき事をやれ」


 すると、ポカンと俺を見上げる石田。


 「どうした?」


 「伊崎さん、少し顔が優しくなりました?」


 「はぁ?俺が?んなわけないだろ」


 「いいえ?

 どこかスッキリしたような顔をしてるというか」



 ーー育ててくれて、ありがとうございました。


 

 「ふっ、気のせいだよ」


 「なんか、なんか気持ち悪いです⋯⋯イテッ!!

 

 折れてんすよォォ!?

 伊崎さぁぁん!!!!」


 生意気小僧が。 

 調子に乗るからだ。

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