表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常  作者: ニキニキちょす
世界征服編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/252

祈り

 アニキ⋯⋯頼む!


 「真壁の兄貴⋯⋯!」


 武部が負傷者を治している中、俺と数人の軽傷者たちはアニキの戦いを最後まで見ていた。


 最初は武器持ち相手に善戦していたが、やはり相手はプロそのもの。


 あのアニキが防戦一方。


 「くっ、真壁の兄貴⋯⋯俺達がもっと万全だったら!」

 「言うなよ太史。兄貴は漢だ。

 もしもの話をするな」


 隣で言い合ってる舎弟たちの言うとおりだ。

 俺達の掟はサシであれば邪魔をしない。


 ──漢と漢の戦いだから。


 だが、これでは。


 ヤツの動きは間違いない。

 身のこなし、戦いの筋力のようなものが今までの相手とは段違いだ。


 こうすればいいという決定的な答えを持ち合わせていない。


 イタチごっこだ。

 アニキに持っているものは相手も持っていて、逆にアニキにない物を相手は持っている。


 「駄目だ⋯⋯」


 数人の連中が弱音をボソッと吐いているのを聞いた俺は、無意識に俯いてる髪を掴んで上げさせる。


 「例え負けても、文句を言うな。

 俺達のアニキだ──黙って最後まで見届けるのも俺達の仕事であり、責務だ」


 「⋯⋯責務ってなんすか、石田の兄貴」


 それは調べろよ馬鹿が。

 

 「黙れ、馬鹿太史」


 いや俺も人の事は言えないか。

 小卒だし。


 「hehe!!!」


 バチィッ、と突然シルヴァの動きが変わる。

 伊崎さんと戦った時のアイツみたいだ。


 薄々気付いていたが、伊崎さんも⋯⋯多分普通ではないんだろうな。


 だからさ、エロガキ伊崎さん──頼むよ。

 アニキがボコボコだ。


 俺達の頭がピンチなんだよ。


 ほら、見てくれよ。

 俺も太ももが貫通して動かないんだよ。


 頼むよ。伊崎さん。


 アンタなら何とかしてくれるだろう?

 俺を助けてくれたあの時みたいに。


 「EASY!!!!!!」


 見てくれよ。伊崎さん。

 アニキを殴って嬉しそうに笑ってるんだよ。


 アンタ。

 なんだかんだ⋯⋯俺達を好いてくれてたろ?


 なんでもするよ。

 

 「ぐっ!!」


 頼むよ。


 「ぃッッ⋯⋯ぅァァァ!!」


 来てくれ。頼むよ。


 祈るからさ。

 神でも、悪魔でも良い。


 契約でも何でもするよ。


 「石田先輩!?駄目です!!」


 動けよ、俺の身体。

 太ももが痙攣してる。


 知らねぇよ。動けって!!


 「ヴヴッ⋯⋯⋯⋯なんだ」


 「え?」


 ここで貧血かよ。

 視界がぐらつく。


 「真壁⋯⋯ッ銀譲⋯⋯はっ⋯⋯ハァ、ハァ」


 脳裏によぎったのは、初めて会ったあの日。



 "ぐわっ!"


 ーーガキが、こんなことしてどうしたんだ


 "うるさい!

 俺達はこうでもしないと生きていけないんだ!"


 ーーはぁ。お前、名前は?


 "え?い、石田!"


 ーー名前は


 "龍司!!石田龍司!!

 これから誰よりも強くなる男だ!"


 ーー⋯⋯フッ、まだ小学生だろう?

 とりあえずそこでパスタでも食え


 

 「俺⋯⋯達の⋯⋯救世主で⋯⋯王⋯⋯なんだよっ⋯⋯」


 「石田の兄貴!

 やめてください!本当に死にますよ!」


 ポタポタ血が垂れているのは知ってる。

 だが──


 

 ーー石田。

 俺はな、お前らとこうする為に強く生まれてきたのかもしれない


 

 「ッグッ⋯⋯ァ、うるせぇ。

 俺達は最強なんだよ。


 無敗の夜叉なんだよ⋯⋯アニキが勝つに決まってんだよ」


 その時、目の前のアニキから⋯⋯白い炎が湧いているように見えた。


 全員がその光景に唖然とした。


 「な、なんだよ⋯⋯アレ」

 「兄貴が⋯⋯突然強くなったぞー!!」


 アニキ⋯⋯。


 「アニキィィィ!!!!」


 直後──目の前が煙が上がって見えなくなった。


 なんだ?何があったんだ!?


 「お前ら!立ち上がれ!アニキを⋯⋯」


 あぁっ、まずい。足がビクともしない。


 「先輩!何してんすか!」


 「うるせぇ」


 無理やり肩を組まされ、預ける他ない。


 「あなたにとって大事なのはわかります。

 しかし生きてこそですよ」


 「⋯⋯アニキが、どうなった?」


 「見えません。

 でも、生きてたとしても⋯⋯重傷です。

 元に戻る事は──石田先輩?」


 音が聞こえる。


 コツ、コツ、コツ。


 硬い音。

 こんな戦場みたいな場所に向かって、誰かが歩いてきている。


 「おい、軽傷者!外から誰かがくる!

 構えろ!」


 「え!?誰もいないっすよ!」


 「いいから見ろ!」


 「⋯⋯兄貴が!」


 っ、舎弟の言葉が聞こえ、すぐさま向くと。


 「アニキ!!!」


 腕重心で立ってるのが精一杯のアニキ。

 良かった。


 「⋯⋯勝った」


 シルヴァめ。

 うつ伏せで倒れてやがる。


 アニキもボロボロだが、アイツは倒れてる。

 だが。


 「やっぱりアニキも普通じゃなかったのか」


 一面あった壁が、人間の力を超えた威力でこじ開けた穴が幾つもある。


 これをただの怪力というのは無理がある。

 だが関係ない。


 「俺達は、まだまだ轟く⋯⋯っ!?」


 た、立ち上がろうと?

 しかも、何か言いながら、飲み干してる。


 「MAKABE、○uck」


 くそっ。動け。


 「お前ら早くアニキの所へ!!」


 まずい。

 あの様子⋯⋯突然回復したような挙動を見せてる。


 あれじゃ⋯⋯。


 突然硬い足音が近くに現れ。


 ──ガチャリ。

 近くの扉が音を立てる。


 「う、うわぁ!!」


 「っ?」


 全員の視線が集まる。

 そこには腰が抜けて声を上げるしかなかった舎弟と。


 「っ、あ」


 俺は絶句した。

 人生で初めて。


 「ねぇ胸ばっかり触ってちゃいやー」


 「あァ? 女はここが魅力的なんだろ?

 良い男の隣には、美人のお前みたいな女がいねぇと。


 こうやって触れるから魅力が上がるんだろう?」


 ⋯⋯は?

 な、なんで。


 「おぉ」


 口を尖らせ、俺を凝視しながら笑い現れたのは──草薙。


 「な、何よここ!」


 「ん?んだよ⋯⋯イベントだよイベント」


 「こ、こんな危ない所に連れてこないでよ!」


 スタスタ女の方は走り去っていき、悲しそうに揉んだ感触を確かめるようにグーパーしている。


 「⋯⋯お。

 タイミングは良かったみたいだな」


 最悪だ。

 なんでこのタイミングで⋯⋯コイツが!


 「おい草薙!今は⋯⋯」


 くっ!無視して俺達の横を。

 今にも倒れそうなアニキの方へと優雅に向かいやがった!


 「⋯⋯お前ら!!」


 「無理っす!

 俺達じゃアレを止めれないっす!!」


 ちくしょう⋯⋯!!

 舌を噛みきって死にたい!


 だが、次の瞬間──俺の予想した最悪のシナリオとは打って変わった。


 「え」


 奴は倒れかけのアニキを手で抱き、受け止めた。


 「真壁銀譲⋯⋯総合、一位」


 な、なんの事だ?


 「おい、そこのイケ好かねぇイケメン君」


 「⋯⋯なんだよ、草薙」


 「ふっ、取って食ったりしねぇよ。

 ほら、お前らのリーダーだ。

 頭を大切にしろよー?」


 「アニキ⋯⋯!」


 拳を握り締める。

 皮膚が爛れ、骨が見えてる。


 全身傷だらけで、生きているのが不思議なくらいだ。


 「お疲れ様でした。アニキ」


 前が見えない。

 伊崎さん、助けてくれ。


 泣いてる場合じゃないのに。


 「くっ⋯⋯うぅっ!!」


 「そうそう」


 「なんだ」


 何を要求されるわかったものではない。

 渋々殺意を込めながら、上を見上げる。


 「石田、そうだ。

 お前の名前は石田だったな?」


 「だからなんだ」


 「なんだよそんな面しやがってー。

 お前んとこのリーダーが大金はたいて俺をここまで呼んだんだぜ?


 ⋯⋯感謝しろよな」


 てことは、伊崎さんが?

 コイツを呼んだのか?


 「本当か?」


 「ん?あぁ。それは間違いない。

 俺の役職を賭けてもいい。


 まぁ。

 女と三回戦もしてたから身体が疲れてるがなー。


 いやぁまじで海外女は最高だったわ。

 積極的で、金さえ払えばサービス良くってさぁ?」

 

 クソッ。よりにもよって。


 「とりあえず、アイツだろ?」


 親指で背後で震えながらも動こうとするシルヴァを指す草薙。


 「ああ。なら働いてくれ」


 死んでも構わん。

 アニキが生きてるから。


 「ふんっ、舐めやがってクソガキが」


 嗤われ、そうして黒スーツに身を包み、草薙は両手をポケットに突っ込んだまま、背を向けてシルヴァに向かって歩いていく。


 「ッたく、楽して大金稼げると思ったのによー」


 クソッ。

 正直、アイツが味方だとこんなに頼もしいなんて思うことが、どれほど屈辱か。


 「⋯⋯くそっ!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ