無頼と成り上がりの伝説
「ッ⋯⋯武部、頼む」
結構やられたな。
袖をまくるとナイフ傷と銃弾が掠めたような痕がくっきりだ。
「石田先輩⋯⋯うわぁ⋯⋯」
「なんだ?」
「いや、顔にも傷が」
なんだ。そんなことか。
「男の勲章だ」
笑ってやるさ。
傷くらいでゴチャゴチャ言うやつが漢とは思えねぇし。
「っ、痛え」
処置が始まる中、俺は周りを見渡す。
まだ戦いは終わっていない。
続く銃声と、地面に倒れる人間の音。
止まない雄叫び。
⋯⋯俺達の原点を思いだす。
だが、俺達の行動が奴らにとっては予想外だったのか、銃弾を浴びた奴もいるが、致命傷者は少ない。
むしろこっちが有利なまである。
良くも悪くも、今までこんな事をしでかす奴らがいなかったのかもしれない。
「っっー!!」
いって!!まじかよ。
「医者の経験が生きたっすよ」
「お前⋯⋯なんで医者なんてやってたんだよこんな所にいんのに」
「そりゃなんてったって──石田先輩に憧れちまったからっす」
見上げて腕から摘出した銃弾を見せながら俺を見上げる武部。
「俺より年上だろう?
いつそんな事があったっけ?」
「昔助けられた事があったんですよ。
あれはいつだったかな⋯⋯6年以上前でしたかね。
チンピラに絡まれてる時の話だったんですけど、その時石田先輩がたった一人で10人もいたチンピラをたった一人で倒しているのを見て、カッコイイと同時にこんな風に自信と勇気を持って誰かを助けられるようになりたいって思ったんですよ」
なんかこっ恥ずかしいな。
こうやって聞くと。
「⋯⋯そうかよ」
「今でも覚えてますよ。
ポケットにチェーンとか、ネックレスとかジャラジャラな石田さんが──」
「あぁぁ!!
黒歴史を見せるなぁーっっっクッソ、いってぇ!!」
「あー!まだ動いちゃだめですよ!」
「なんでだ?」
「なんで?」
「ゴルァァァァァ!!」
「そりゃ──俺らの王が闘ってるからな」
「⋯⋯無茶ですよ」
「そんな事は最初から分かりきってる」
「駄目ですよ。
命は一つしかないんですから」
「俺達はかつて、頂点を目指した。
今も変わらない。心は。
男たる者、頂点を目指さず何を目指すんだ」
足も動く、拳もジャブも出来る。
骨が少し軋むくらいか。
蹴りもいい。
これならまだ戦える。
「かなりの重傷者数ですよ。
これ以上広がればただじゃ──」
煙草に火をつける。
「そんなの問題じゃない。
アニキが家族を助けるのは当然」
ーー賢!俺達三人──夜叉を日本中に轟かせて俺達みたいなのを一人でも減らせるように頑張ろうぜ!
ーー石田、良いことを言うな
ーーじゃあよ、俺達はみんな家族ってことじゃねぇ?
「⋯⋯ふっ」
──賢。お前の思ってた未来とは違うだろうが、俺達は掲げた目標は別の形で続いてる。
「っ?」
向こうの動きが静まった?
「駄目です。石田さん」
「何がだ?」
「シルヴァ⋯⋯シルヴァ・フロストはそんなレベルじゃないんです」
「どういう事だ?ハッキリしろ」
「シルヴァは、スラム街でたった一人で当時10歳で300人近くの人間相手にナイフ一本で戦って引き分けたそうです」
頬が攣りそうだ。
想像しただけで、冷や汗が流れるぜ。
「⋯⋯なるほど。バケモンだな」
「逸話なんていくらでも出てきますよ。
元軍人とか、身内を全員殺しただとか、当時結成メンバーを全員手にかけたとか」
*
「グルァァァァァ!!!」
──吠えろ。闘え。
撃たれる前に一気に近付き、思い切り腕をぶっ放す。
「※※※※!?」
銃だろうが、武器だろうが。
ガン!と首の後ろを引っ掛け顔面に膝。
そのままよろめいたところを拳で地面に向かって叩きつける。
「全員、ぶっ放せ!責任は俺がとる」
武器なんて関係ない。
腕くらい無くなっても構わん。
それが俺達──夜叉だ。
「⋯⋯⋯⋯」
先頭にいる奴の顔は変わらない。
ただこちらの様子を窺っているように見える。
出るまでもないってか?
一気に前進だ。
構えていた奴らも、まさかこうなるとは予想していなかっただろう。
それに、俺達は武器持ちと散々戦ってきた。
テーブルを蹴って体勢を変えたり、障害物で遮って攻撃の機を作ったりして戦ってきた。
まさに一瞬だ。
「○uck!!」
打ち抜け。
「っっっ!!!?」
⋯⋯打ち砕け。
「※※※※※!!」
──打ち抜けッッッ!!
俺の十八番だ。
ハンマーを降ろすように全力で腕で下に叩き潰す。
ドガンとまた一人のびる。
「ハァ⋯⋯もうお前らだけだぞ」
もう、何十人ぶっ潰した?
まだまだいるが。
「※※※※※※。※※※」
なんだ?拍手してる。
「※※※、※※※※※」
こちらに向かって歩きだす。
やはり空気が変わる。
奴がリーダーなのは間違いない。
「うっっ!!」
道中倒れている一人の頭を蹴り上げ、笑って何か言っている。
「仲間をなんだと思ってる」
首を傾げている。
伝わらないか。
「ゆー、ファミリー」
指で差しながらカタコト英語を披露する。
「Yesyesyes。
Yeah, yeah, I got it」
なんだ?苛ついてるのか?
後ろの奴らが動揺している。
「You’ve got no idea what you just said, do you?」
何言ってるかさっぱりだな。
「アイドンノウ。
ファミリー、ディフェンス、ノットエネミー」
奴の足が止まる。
距離はもう4mもない。
やはりコイツはどこか俺と似ている。
体格といい、雰囲気といい。
目を逸らしたら負けというのは万国共通らしい。
「「⋯⋯⋯⋯」」
奴が豹なら、俺は虎か?
似た者同士だろう。
「ユー、ネーム」
「im silva frost。ユー?」
「真壁──銀譲」
俺は拳を叩いてアピールする。
「バトル。ノットウェポン」
「Huh?
The winner decides what's right.」
何を言ってるか分からないが、とりあえずナイフを前腕に向かって叩いて笑ってるということは。
「⋯⋯漢ではないな」
ボクシング寄りに構える。
奴は少しウロチョロしながらナイフと一体化しているように回したりしながら俺の様子を窺ってる。
「So you’re just a bunch of amateurs, huh?
Japan sure is a peaceful place. Makes me laugh」
次の瞬間、ナイフを逆手にして──俺の顔へと突いてくるのだった。




