その小さな機械
ある星の宇宙人が地球に目をつけた。
「この星は素晴らしい。ぜひ、我々で奪い取ってしまおう」
宇宙人の長がそう言ったが、周りの顔は中々に悩み顔。
勿論、宇宙人の長はその理由を知っていた。
地球人は宇宙人に比べれば文明という点では遥かに劣っていた。
だが、だからと言って宇宙人があっさり勝利出来るほどの差があるかと言えばそうとも言えない。
真正面からやり合えば侵略者である宇宙人側もただではすまない。
特に地球人の持つ核兵器を使われてしまえば最悪のケースでは相討ちになりかねない。
いや、よしんば勝てたとしても核兵器を使われてしまえば素晴らしいこの星が汚染されてしまう。
「さて、どうしたものか……」
宇宙人たちが頭を悩ませていると、宇宙人の長がにんまりと笑って言った。
「安心しろ、諸君。既に策はある」
「策?」
「あぁ。これを見ろ」
そう言って宇宙人の長は小さな機械を取り出した。
「これを地球で少しずつ普及させるのだ」
見たこともない機械に宇宙人たちは不思議そうな顔をして問う。
「それは一体何なのですか?」
「地球人にだけ効果のある毒薬とでも言おうか。この毒を受けた地球人達は考える力を著しくなくして、こればかり見ることになる」
言葉を上手く理解出来ず頭を捻る宇宙人たちを尻目に長は笑う。
「まぁ、よくみておけ」
そして、現在。
地球では宇宙人たちの企みなど露知らず、今日も現代人達はスマートフォンに目を釘付けにされている。