大変なことになりました。
はっ、と見渡すと花火はとっくに終わっていた。
考えていた事を口に出していたようで凛は慌てて振り返る。
「ヨダ…」
「今なんて言った?」
遮られるように聞かれる
「えっと、ヨダカかっこいいなって」
「僕と別れるって?」
「…」
「なんで?」
先程までの雰囲気と違いすごい剣幕で質問される
「僕の何が悪かった?」
「何がダメ?」
「凛はどんな僕ならいいの?」
「なんで?」
「他に好きな人でもできたの?」
肩を強く掴まれ、怖くなりながらも首を振り否定する。
「僕のこと嫌い?」
「…嫌いじゃないよ」
「好きだよね?」
「…」
答えられずに止まってしまった。
「なんで!なんで!なんで!なんで!」
ヨダカの指が凛の肩にくい込み、血が滲む。
「痛っ…」
「ごめん、」
ヨダカは急いで両手を離す。
それから思い出したかのように呟く。
「やっぱりあのとき……路地裏で見たんでしょ」
その一言にヒュっと冷たい何かが身体中を駆け巡る
恐る恐るヨダカの顔を見つめると
いつもと違う冷たい顔で凛を見下ろしていた。
「凛…」
「……はい。」
「俺は女に興味は無い。」
「え?」
「初め凛に会った時驚いたよ、番だって。匂いでわかるんだ。こんな事初めてだし、自分でも驚いた。それと、あの日路地裏では血の臭いが強くて殆どわからないけど番の匂いは別。居たよね?」
路地裏で見たヨダカと同じ顔で凛を見つめる。
恐怖で逃げようとするも力ずくで止められる。
「逃がさないよ?」
ニヤリとした顔でヨダカは魔法を使い、凛を眠らせ大切な物を抱えるようにそっと抱き寄せ転移するのだった。
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「ふふっ、今頃凛はヨダカと楽しんでるんだろうねぇ。」
お店のおばさんは嬉しそうに窓を見ていた。
お祭りのこともあり、食堂はガランとしていた。
「私も若い頃は何人かと一緒にデートをしたわね。」と懐かしそうに想いをふけていると魔法郵便が空からやってきた。
「親愛なるおばさまへ
ヨダカと一緒に暮らすことになりました。
直接伝えられなくてごめんなさい。
荷物は今度ヨダカが取りに行きます。
今までお世話になりました。
ps、今月の家賃はヨダカが払いに行きます。
凛」
「まあ、なんてこと」
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目が覚めるとふかふかのベッドの上にいた。
シンプルな窓から子鳥の鳴き声が聞こえる。
体を起こすと、お祭り用にお揃いで買ったリングと同じものが両手両足、首についていた。
「おはよう」
うっとりした顔のヨダカが凛の側へ寄る
キスしようと顔を近づけるので拒絶しようと首を横にしようとするとリングの魔法で動けなくり、ヨダカと唇を重ねた。
「なんで。こんなことするの?」
「最初に裏切ろうとしたのは凛でしょ?」
「違う、私は…」
「違わないよ。凛は俺から離れようとしたことに違いはないじゃん?ってか、そもそも離す気も無かったし。」
「そんな…」
「これからよろしくな」ニヒッ!