急に現れました!
火事の時、初めて周囲に人が居る中で魔法を使った。目の前で死んで欲しくない!助けたい!って気持ちだけで、複数の魔法を一気に使った。それがどんな影響を与えるかも知らず。案の定、街の人も驚いて誰もが声をかけられずにいた。中には、怯える目で見る人もいた。
それなのに、人目が少ない所へ誘導した後に優しい言葉で励ましてくれて、告白もされるなんて……
思ってもいなかった事に驚きと戸惑いがあったが、整った顔立ちのイケメン。
ー断る理由がない!!
今度会った時には返事をしようと決めていた。
連絡手段やいつもどこに居るのかなど知らないのでヨダカが尋ねて来るのを待っていた。けれど、1日、3日、1週間経ってもヨダカが来ることは無かった。
お店に人が来る度に、思わず確認しては落ち込むのを繰り返し、おばさんから心配されることが増えた。
それから2週間、お祭りの前日
周囲は明るくなり始めようと山の麓から太陽が登ろうとしている。
そんな時間にふと目が覚めた。
すると、窓の方から視線を感じ、ベッドから起き上がり見ると冷たい風と共に縁には人が座っている。
咄嗟のことに動けずにいると
「おはよう、凛」
聞き覚えのある声だ。
よく顔を見るとそこには、しばらく顔を見なかったヨダカが居た。
「お、おはよう」
寝起き満載の声で答えた。
「やっと会えたね!」
「ヨ……ヨダカ!なんでここに居るの?」
「仕事で中々抜けられなくて、でも凜に会いたくて来ちゃった♡」
「そ、そうなんだ……。せめて、起きてる時に来て欲しかったな」
「寝起きの凛も可愛いよ!」
「ありがとう。」
会話が止まった……。
ーヨダカに色々話したかったはずなのに
話題が何も思いつかない!!
焦っている凛とは対にヨダカは嬉しそうに凛の様子をニコニコしながら観察している。
それから思い出し、
「あ、じゃあ明日も忙しいよね……?」
「ん?明日がなに?」
冷たい床に足を下ろし、引き出しからリングを取り、ヨダカに差し出した。
「えっと、もし良かったら一緒にお祭り行きませんか?」
「…………」
気まずい時間が流れる。
我慢できずに喋る
「お、おばさんが親しい友達にも渡すって言ってたからこの前助けてくれたし、行けそうだったらと思ったけど迷惑だったよね?ごめ…………」
「行こう!」
「え?」
謝ろうとしたその時に食い気味に返事が貰えたことに驚いていると
ヨダカはニヤリと笑いながら
「絶対に行こうね!」
「いいの……?」
「うん!もちろん。ってか、誘ってくれるってことはこの前の告白もOKって思っててもいいだよね?」
「そ、それは…///」
耳を赤くしながら無言でコクリと頷いた。
その様子を見たヨダカは尻尾を激しく左右に振り、満面の笑みで凛を抱きしめた。
「嬉しい嬉しい!ありがとう凛!」
凛は恥ずかしそうにヨダカの肩に顔を埋めた。
しばらく抱き合っていたが、タイミングが分からず「そろそろ……」と凛が離れようとするとヨダカは寂しそうに耳を垂らすので思わずキュンとした。
2人はヨダカの髪色と同じ色のリングを付け合い、明日の集合場所と時間を決め今日は解散することにした。
帰る直前、ヨダカは振り向き
「僕を受け入れてくれて嬉しいよ!本当にありがとう、凛。これからは絶対に僕以外を好きになっちゃダメだよ?」二ヒッと笑いながら縁から外に飛び降り街に消えていった。
余韻に浸りながらヨダカの消えた森をしばらく見つめていた。すると、肘の感触に違和感を感じ見ると血がついていた。驚いて見ると窓の縁に少量の血があった。