能力が少しバレました
「おーい、聖女様!傷を治しておくれ」
「はい!すぐに行きます」
火傷を治していると、ヨダカがやって来た。
「凛、こんにちは!約束通り来たよ!」
「ヨダカ、今並んでる人を全員治すまでちょっと待っててくれる?」
「うん!いいよ」
それからしばらく、子供の怪我や病気の人まであらゆる人の治療をした。
すぐに元気になる姿を見ては嬉しい気持ちになる。
そんな凛の姿をうっとりした顔でヨダカが眺めていた。
「待たせてごめんなさい。」
「全然待ってないよ!!治療魔法が使えるなんて凄いね!本当に聖女様みたいだね」
「ふふっ!私聖女なのよ!」
「ほんとに?」
「嘘よ!」
思わず2人で笑いあっていた。
「俺たちの聖女様が……」
「バカ!腕を見てみろ。俺達だってまだチャンスはある」
ピクっ
お客さんの声が聞こえたらしいヨダカは凛を誘う
「凛!今日お買い物行かない?ボク欲しいものがあるんだ〜」
「いいわよ!準備するからちょっと待ってね」
それからヒソヒソ話してた客に向かって
(ふふっ)
勝ち誇った顔をするヨダカ。
クッソ〜。
悔しそうな顔をする男達の姿を遠くから見ておばさんは笑っていた。
凛「?」
街へ出かけると美味しそうな匂いがする
「ヨダカ!昨日は無かったお店があるわよ!見てみて!」
飛び出す凛の前に馬車が通る
「危ないっ!」
すぐにヨダカが凛を抱きしめて端によりなんとかぶつからずにすんだ。
「ご、ごめんなさい」
「大丈夫だよ、凛が無事でよかった。でも離れたら危ないから手を繋ごうね?」
「う、うん…///」
しばらく商店街を歩いていると
「火事だーー!」
「水魔法を使える人はすぐに向かってくれー!」
声の方向を見ると家全体が炎で包まれ大きな煙が上がっていた。
「危ないから離れろ!」
「誰か!あの中には私の子どもがいるの!!」
泣きながら母親らしき人が火の中に入ろうとするのを止められていた。
「あちゃー、あれはもうダメだな。」
隣でヨダカが残念そうに話していた
ーー何か出来ないかしら。
そう思い、手を家の方向にかざし念じる
(炎よ収まれ)
すると家を覆っていた炎全てが消えた。
(煙よ消えろ、家よもとの姿に戻れ修復。)
すると、驚くほど何も無かったかのようにもとの家に戻っていた。
周囲の人は驚きながらその様子を見る。
もとの家のベランダには子どもらしき男の子が倒れいた。
すぐに男の子の傍により治療魔法を使って回復させた。街の人はありえないものを見た驚きと戸惑いの声が広がった。
「なんだい、あれは」
「こんなことが出来るなんて大魔導じゃないか」
そんな凛をヨダカは手を掴み、走って2人は人通りの少ないところへ向かった。
ハァハァハァハァ……
2人は息を整えベンチに座る
「ごめんなさい。」
「謝ることは無いよ……」
「……驚いたよね。こんな化け物みたいなことが出来るなんて。」
「ちょっとだけね。……凛は治療魔法以外にも使えるんだね」
「うん。」
ーー何となくチート能力があるとは思ってた。けど、目の前で人が死ぬところを見て居られなかった……。私、ここには居られないのかしら。
「どんな力を持ってても凛は凛だよ。僕はどんな凜でも好きだよ」
「え?」
「ごめん、本当はもう少し仲良くなってから言うつもりだったんだけど我慢できなくて。初めて会った時から一目惚れしたんだ。」
「で、でも私……」
「どんな能力があったって、優しくて人のために行動できる凛は素敵だよ。そんな凛が大好き」
「あ、あ、ありがとう……」思わず泣いてしまう
「泣かないで。もし、凛に何かあったら僕が盾になるし返り討ちにしてあげるよ」
「ふふっ、私もヨダカが困ったら力になってあげるね」
さっきの力を見てもそんな冗談を言うヨダカに温かい気持ちになる。
「その時はお願い、聖女様」
その日はお店までヨダカに送ってもらい解散した。
夜にこっそり街へ行き、黒のかっこいいリングを2つ購入した。
ヨダカの髪と同じ色のリングを見つめ今日の出来事を思い出す。
ーー早く明日にならないかなー。
そんな凛の思いとは裏腹にしばらくヨダカは店に来なかった。