運命的な出会いですか?
「おばさん!シチュー2つ!」
「こっちにはエール!」
「はいはい、ちょっとお待ちよ〜」
昼間のお店は混んでいるが、日に日にお客さんが増えている。そんな今日はいつもより人が多い気がする。
なにかあるのかな?
不思議に思いながら、居候の私も手伝う。
おばさんと目が合うとくすっ、と笑われた。
「?」
「凛ちゃん、手伝ってくれてありがとうね。」
「いえ、いつもお世話になってますから」
「凛ちゃんのおかげでお客さんも増えたしね。」
「そんなことないですよ!おじさんとおばさんのご飯が美味しいからですよ!」
「照れるね〜。でも、お祭り前だから凛ちゃんにアピールしてんだと思うよ」
「え?お祭りですか?」
「街の幸せを願う祭りてね、大きな花火や魔法を打ち上げるんだよ。その中でも、花火は愛する人と見ると幸せに結ばれると言われているからね。皆お前さんを誘いたくてアピールしてるんだろ」
「そうなんですね。」
ーーだから、皆とよく目が合うし筋肉をアピールされてるのね。前世の私とは大違いだわ。
「まぁ、一緒に行くにはお揃いのリングを女性から渡すのが恒例だからいいな。と思った人には渡してやんな。」
「そうなんですね。でも、私はリング?なんて持ってませんし…」
「うふふ、色んな所で売ってるから午後はお休みで大丈夫よ。たまにはお買い物でも行ってらっしゃいな。」
「え、いいんですか。」
「ええ!楽しんでね!」
おばさんからの後押しもあり、お店が落ち着いたタイミングで買い物へ向かった。
外へ出る時には何があるか分からないので念の為に黒い服で顔を見えないようにフードを深くかぶる。
いつも、採取と換金しかしていなかったのでアイテムをじっくり見るのは新鮮な気持ちになった。
しかも、よく見るとキラキラのリングやカラフルなリングが沢山売っている。大きいすぎる?と思ったが手にはめるとその人の手首のサイズに変化するらしい。さすが、異世界!
「あ、あの!お祭りの日予定ありますか?私と一緒に行きませんか?」
「………///。も、もちろん!」
きゃー!!
「おい、良かったなー!!」
「兄ちゃん、男みせろよ!」
「わーってるよ!!…///」
告白の現場を見て青春を感じてしまった。
ーーいいなあ……。 私にもそんな人表れるかしら?異世界だし、私にもチャンスあるわよね?
そんな淡い期待をしながらリングを見て周った
歩いていると人通りの少ない場所まで来てしまった。
「迷ったかしら?」
来た道を戻ろうとした時。
3人組の浮浪者達が話していた。
「ちっ、今日はついてねぇな。」
「襲撃には失敗するし、報酬は貰えねぇし。仲間は死んじまうしよ!」
「俺たちは玩具じゃねえってのによ!」
「祭りかなんだかで浮かれてるのも気に食わねぇ」
「爆発しちまえよな!」
「間違いねぇ!」
「「爆笑」」
「ん?あそこに居るやつ女じゃねえか?」
「あ?」
「マント越しにもいい腰だ」
「俺が先に見つけたんだ!1番は俺だぞ」
「久しぶりだな」
そんなふうに男達に囲まれた。
ーどうしよう。逃げないと、
そんな風に考えていると物陰から音がした
ドンガラガッシャーン!バタン……
「痛ってぇな」
黒髪のイケメンが表れた。
「やべぇ、こいつは!?!?」
「くそ……。逃げるぞ」
男を見て浮浪者達は逃げて行った。
男は驚いた顔で凛を見つめる。
「あの、助けて下さりありがとうございます。」
「……。」
「えっと、さっき屋根の方から落ちてきたみたいですが、お怪我はないですか?」
「…………見つけた。」
「え?」
「オネーサン、名前は?」
「(外国の人?)り、凛です。」
「リン。……リン、うん!覚えたよ!ボクの名前はヨダカ!リンに一目惚れしちゃった♡」
さっきとの雰囲気の違いに唖然とした。
けれどそのギャップが面白くて思わず笑ってしまった。
「うふふっ、冗談を言うなんて面白い人ね。ヨダカさん?でしたっけ?」
「ヨダカでいいよ!」
「さっきは本当にありがとう!道に迷って不安だったの!良かったらお礼に美味しいご飯を奢るわ!」
「ほんと?」
「ええ!街に戻ってからでいいなら!」
「この街には詳しいんだ!案内するよ!」
それから、お店に戻るまで色んな話をした。
ヨダカはオオカミの獣人だそうで、仕事でこの国にやって来たらしい。
もう3年近く経ったそうで、「なんでも知ってるよ!」とドヤ顔をしていた。
お仕事は「秘密♡」とはぐらかされたけど、冗談が好きでとても紳士的な人だ。
お店に戻るとおばさんは
「おやおやまあまあ!」と驚いていた。
お客さんは何故か暗い顔をして俯いたり、ヨダカを睨んでいた。
フードを取ると、ヨダカは私を見て固まった。
「あれ?大丈夫?」
「綺麗だ」
そんな風に真っ直ぐ言われるものだから思わず照れてしまった。
「あ、ありがとう…///」
シチューが出てくると目をキラキラさせてあっという間に無くなった。
食べ物には目が無いようで、私も!と話をするとさっき初めて会った人とは思えないくらい盛り上がった。
気が付いたら、日が沈む所だった。
耳をペタンと倒しながら、「また来てもいい?」と聞かれた。
ーーそんな可愛い顔して言われると断れるわけ無いじゃない!!っとツッコミながら
明日会うことを約束した。
初めて出来た友達が嬉しくて寝るまでヨダカの顔を何度も思い出してはドキドキした。
ーーこのドキドキはヨダカがイケメンだからだよね?……/////
明日も会えるし早く寝ないと
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暗闇の路地裏では静かさをかき消す
放浪者の呼吸が聞こえる
ハァハァ……
バンバンバンバンバンっ
パリンパリン……
銃声と物が壊れる音がした。
頭から血を流し
「たすけ……」
すぐにその声がかき消されるような大きな爆発音
ドォォォォォン
気がついたら目の前の人どころか建物まで吹き飛んでいた。
「ハッハッ!
気持ちイイ〜〜
この感触!この感覚!この歓声!!
最っ高♡」
砂煙から全身血にまみれた男……ヨダカが表れた
「今日は特に血が騒ぐ……。
早く明日にならないかなあ」