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俺の剣の腕前がどれほどのものか、まずはそこに触れねばなるまい。
有り体に言えば、チンカスである。
そりゃあもうヒドイ。
道場で剣を習い始めた小学生低学年くらいの子と死闘を繰り広げたこともある。
1年くらい習った子だとムリ。
要するに、マジでマトモに普通に戦うと試験に落ちる可能性が高い。
アタシにはおでんを召喚する以外に能が無いってことよ。
じゃあ普通に戦うにしても、おでんを召喚するしかないんだよ。
とりあえず剣さえ振ればええやろ。
そんなわけで、アッツアツのしらたきを剣から生えるように召喚した。
ホカホカと湯気を立てながら、しらたきがデュルデュル生える剣。
触手みたいな、なんかもう呪われた剣もかくやという感じだ。
「キモッ……」
受付嬢さんが思わず口に出した。
Bランクさんも剣の構えこそ解かないが、顔がドン引いている。
そこまでイヤな顔しなくてよくない?
お前ら一生しらたき食うなよ。
ちなみに、このしらたきは後でちゃんと食べるので、食べ物を粗末にするにはあたらない。
食べ物で遊ぶなって言われると謝るしか無いんだけれども。
さて、まずは一当てと行きますか。
Bランクさんは受けの態勢なので、お言葉に甘えて思いっきり上段から袈裟懸けてみる。
小学生ぐらいの子供に見切られる程度の剣なので、余裕で防御されてしまった。
しかし、しらたきソードはそこからが強い。
「あつッ!?」
防御しても、しらたきが纏うアッツアツの汁が跳ねてBランクさんを襲う。
逆に攻勢へ転じられると俺はすぐ負けてしまうので、熱さに戸惑っているうちに何回も剣を振り上げては袈裟懸けに見舞っていく。
防御されるたびに汁が飛び散った。
「あっつ! ちょま、ストップ!」
Bランクさんが待ったをかけた。
「じゃあ僕の勝ちですよね?」
「はぁ!? いや、そうじゃなくて!」
「モンスターが相手だったら、一回ストップをかけて仕切り直させてくれるんですか?」
「いや、それはっ……」
どうやら、ぐうの音も出ないようだ。
さぁて、Bランクさんに勝ったんだから問答無用の合格だよなぁ?
余裕の態度で受付嬢さんへと振り返ると、すごい嫌そうな顔をしていた。
なんで?
「今のだと……冒険者として登録していいのかどうか、判断に迷います。実力が分かりやすいように、もう一度お願いしてもいいですか?」
「ハァッ!?」
ッザッケんなよオルァアア!
「なんなんだよドイツもコイツもよぉ!! おでんの何が気に食わないんだよ!! 今アタシ勝ちましたよねぇ!? Bランク冒険者に勝ったんですよねぇ!? 何が不満なんですかねぇ!?」
俺は引くほどキレた。
Fクラス残留の件といい、ここまで来ると逆に笑けてくるで。
とりあえず、改めてBランクさんの方へ向き直った。
なんか、なんも言わずにバツの悪そうな顔だけしている。
シバくぞ。
「負けたテメェがなんとか言えやコラァ!」
「悪いが、俺も同意見だ。次は真面目にやる」
「ハァン!?」
何言ってんだコイツ。
そういう油断をさせるのも含めたおでん召喚魔法なんだよ!
「あなたはモンスター相手でも、その気持ち悪い剣をペシペシするんですか?」
受付嬢さんがさらに言ってきた。
なんだコイツら、敵か?
「トサカにキたぞコンチクショウ! やってやんよ! 後悔すんなよ!」
俺はしらたきソードを投げ捨てた。
目にモノ見せちゃるかんなマジで。
見ればBランクさんは、さっきとは打って変わってマジな目でこっちを見つつ剣を構えている。
もはや、しらたきソードの熱い汁では何も反応しないだろう。
完全に殺す気の目だ。
いや、キレてんのはコッチだかんな?
「ここはダンジョンで、あなたはそこで出会ったモンスター。その時にどう対処するか。それを見せればいいんですよねぇ?」
ムカツクので挑発気味に言ってみる。
受付嬢さんもBランクさんも、そうだからさっさと見せろ言わんばかり何も言わない。
会話しろ、シバくぞ。
「俺を本気にさせたのはテメェらだかんな!」
3秒後、ギルドの訓練場は半壊した。
◯
さらに3分後。
なんかイカツイ兄ちゃん達に囲まれている。
「キサマ、何者だ!」
どうもブチ切れていらっしゃる様子。
俺、なんかしちゃいました?
「冒険者登録の試験を受けてました。騎士学校1年F組、モウ・レッツです」
ちなみにBランクさんと受付嬢さんは気を失っている。
というか、生きてんのかわからない。
半壊した訓練場で、生きてんのか死んでんのかわかんないギルド関係者。
その中で、どうしたもんかと立ち尽くしていた俺。
端から見ればもうテロリストだよね。
皆さんがキレてんのもわかる。
理解。
でもヤれって言ったのは倒れてるそこの2人だよぉ?
「なにが起きたんだい……?」
試験の間、冒険者ギルドの待合スペースで待っていると言っていたさわやか勇者先輩がやってきた。
ほら、人類の希望が困惑していらっしゃるぞ。
「勇者様! お下がりください!」
「何者かの襲撃のようです!」
あれぇ?
さっき冒険者登録の試験受けてたって俺ちゃんと言ったよなぁ?
ちゃんと状況説明したし、自分が何者かも説明したのに何も伝わってないんだが?
「みなさん落ち着いて。彼は僕と一緒にギルドへ来て、冒険者の試験を受けに来た騎士学校の生徒です」
さわやか勇者先輩が説明したら「そうなの……?」ってカンジで周りの人々の警戒が解かれていった。
やっぱり社会的地位って大事なのね。
同じこと言ってもこんだけ扱い違うんだもん。
「とにかく、まずは怪我人を救護しましょう」
そのままさわやか勇者先輩が音頭を取って、受付嬢さんとBランクさんを搬送していく。
どうやら息はあるらしい。
良かったね。
そんな感じで放置されだした俺のもとへ、指示を出し終えたさわやか勇者先輩が近付いてきた。
「……何をしたんだい?」
若干呆れ気味に聞いてきた。
なんすか。
僕は悪くないと思うんですけど。
「割と平和的に勝利を納めて試験の合格を狙ったんですけど、イチャモンつけらてたんでキレちゃいました!」
「……そうかい」
思いっきりため息をつかれた。
シバくぞ。
あんまり人にそういう態度を取るものじゃないよキミ。
ちなみに何したかって言われると、冷めたデッカいおでんを召喚したあと、本気魔力を注入して一気に沸騰させただけである。
いわゆる水蒸気爆発だ。
水は水蒸気になると体積が約1700倍になるという意味不明物質なので、なんかもう意味不明です。
みんなが使う電気もそうやって作られてるんだよ。
どれだけ時代が進んでも、火力でも原子力でも、やってることは水を水蒸気に変えてタービン回してるんだよ。
すごいね。
「コレは流石に合格ですよね?」
「……どうだろうね」
さわやか勇者先輩は全然さわやかじゃない煮え切らない返事を返してきた。
なんなんや。
どないせえっちゅーんじゃ。
「何事だ?」
今度はなんかイカついゴリマッチョが現れた。
ホントもうゴリゴリだ。
たぶんゴリラだ。
いや、ゴリラか?
まぁ、ゴリラかぁ……。
「お久しぶりです、ギルドマスター」
「なんだ、勇者か。この惨状はお前がやったのか?」
「いえ、ここにいるモウ・レッツくんがやりました。冒険者登録の試験を受けていたんですけど、どうもやりすぎたみたいで」
「コイツが?」
ゴリラが訝しげな目線でコチラを見てきた。
人をそういう目で見るのは無礼千万である。
でも私は広い心で許すのだ。
「騎士学校1年F組のモウ・レッツといいます。受付嬢さんと試験担当の方に本気で闘えと言われたもので、結果的にこのようになってしまいました。でもコレは流石に合格ですよね?」
「……」
より訝し気にコチラを見るゴリラ。
自己紹介、現状報告、結果確認というパーペキな流れで発言したにも関わらず、なぜ黙るのか。
会話しろ。
会話できないヤツが多すぎる。
「納得できんな。どんな手を使った?」
シバくぞゴリラ。




