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「3年生になると、それぞれの専門分野を高めていくために普通の授業は無くなるんだ」
ダンジョンへ向かう道すがら、さわやか勇者先輩が教えてくれた。
そこから冬ぐらいに成果を発表する場があって、その結果如何で就職先に大きく影響してくるらしい。
文化祭みたいなのをやって、そこに関係者がいっぱい見学に来るみたいな、なんかそういうのだそうだ。
ちなみにFクラスの生徒は例年しょっぱい武闘会みたいなのを開き、みんなしょーもない部隊の下っ端へとドナドナされていくとか。
ロクに魔法の研究もしなけりゃ武術の研鑽も積まないので、だいたいのFクラス3年生は最後の青春を謳歌すべく冬前まで遊び呆けるとのこと。
やっぱり、このままFクラスでいいのかもしれない。
いや、でも食堂が遠いことが許容できない……。
あとダンジョンのことも教えてくれた。
想像通り魔物がいっぱい出てくるし、下層に向かうほど敵が強くなるし、宝箱がどこからともなく生まれてくるし、人間には作れないような性能の武器や防具が手に入ることもあるらしい。
なんかもうセオリー通りすぎて、その存在を疑う気持ちすら起きない。
いつから存在しているのか記録にないレベルで昔からあるんだってさ。
だから魔王とか関係なくて、昔のスゴイ人がヒマ潰しに作ったのかなぁなんて言うぐらい、要するに何もわかってないらしい。
ま、そういうのの考察とか解明とか、小難しいことはいいよ。
大事なのはお金だからさ。
世の中お金が全てとまでは言わないが、9割はお金なのだ。
「まずキミは冒険者ギルドに登録しなきゃね」
さわやか勇者先輩が言った。
ダンジョンに入るためには、冒険者として登録する必要があるらしい。
ダンジョンに向かう道中に冒険者ギルドはあって、その目の前に到着してから言われた。
言うの遅くない?
「リョアッス(了解です)」と返事をして、冒険者ギルドの建物へと入った。
アルフとルナがいた。
コイツら何してんだよマジで。
マジで。
よく見ればマリア様もいるし、なんか学校でチラホラ見たことがあるようなないような気がしなくもない顔も見える。
「ああ、Aクラスはもうダンジョン実習が始まるのか」
さわやか勇者先輩がそう言った。
実技試験で成績が良くないとAクラスにはなれない。
なので既にある程度は戦える人が集まってるってんで、初っ端から実戦訓練やっていくらしい。
「勇者様だ!」
「勇者様もダンジョンに行くんですか!?」
学校どころか、人類の希望の星たる勇者が現れたものだから、Aクラスの生徒たちはテンション爆アゲである。
実力があっても実戦経験に乏しいであろう彼らには、とても頼もしい存在が現れたって感じだな。
囲んできた生徒に対してさわやか勇者先輩は、さわやかな笑顔でさわやかに対応なされていた。
とてもさわやかだ。
そうなると、いたたまれないのはワタクシである。
学校筆頭のさわやか勇者先輩に、次代を担う新入生Aクラス、そして新入生Fクラス俺。
なんだ俺。
どうしているんだ俺。
「あなたは何故ここにいるのかしら?」
どうしようか思案していると、マリア様に話しかけられた。
マリア様から話しかけられちゃうなんてドキドキしちゃうな!
「なんかノリで」
ここにいる確固たる目的も信念もないのでそう答えると、途端にマリア様は不機嫌な顔になった。
ナメてんのかコイツとでも言いたげな顔だ。
実際ナメているので何とも言えない。
「実際にモンスターと戦うのよ? ダンジョンを甘く見たせいで亡くなった人々だって大勢いるわ。あなたにその覚悟があるの?」
めちゃくちゃマジメに聞かれた。
そんな覚悟は全然ないんですけれども。
大往生して、ひ孫にまで囲まれながら老衰で死ぬ予定をしておりますけれども。
「まぁ……それなりに?」
正直に言っても余計に怒られそうだし、かといってウソつくのも何か違う感じがしたので、死ぬほど煮え切らない微妙な返事をしておいた。
そうしたらマリア様は疲れたような呆れたようそんな感じの顔をして去っていった。
ああいう風に心配してくれるんだからスゴイイイ人だよね。
それから今度はアルフとルナが俺のところへやってきた。
「モウ、こんなところで何してるんだよ」
「なんかノリで」
「そんなことよりさっさとダンジョンに行きましょう。早くヤりたいわ」
ルナの目が爛々と輝いていてキモイ。
戦うことになると生き生きしだしてホントに怖い。
そんなこんなでAクラスの面々はダンジョンへと向かっていった。
今日はとりあえず浅い階層でパチャパチャするらしい。
俺はといえば、まず冒険書として登録しなきゃってんで、さわやか勇者先輩と受付に向かう。
「それでは試験を受けていただきます」
書類に諸々を記入し終えると、受付嬢さんにそんなことを言われた。
なんすか試験って。
「冒険者は戦うことが仕事だからね。ある程度の実力を証明しないと登録できないんだ」
さわやか勇者先輩がそう教えてくれる。
じゃあ、さっきのAクラスのみんなも受けたのかな。
「Aクラスは学校が最低限の実力を保証しているからね。試験は免除されるんだ」
マジかよ。
Aクラスはなんかホント、アレだな、いろいろいいな!
なんでAクラスじゃないんだ俺は!
ここでーす!
ちゃんとした決闘で人類の希望たる勇者を倒したモウ・レッツはここにいまーす!
誰か助けて下さい!
誰からも助けてもらえず、とりあえず試験を受けることになった。
受付嬢さんがギルド内にいた冒険者の一人に声をかけにいき、登録試験の相手役をお願いしてくれている。
どうやら対人で模擬戦みたいなのをやるらしい。
「おいおい、ガキの相手かよ」
声をかけられた冒険者は了承してくれたようだが、俺を見るなりそんなことを言った。
とても噛ませ犬っぽいセリフで非常に好感が持てる。
区分はよくわからんけどBランク冒険者らしい。
それから受付嬢さんやBランクさんと共に、ギルドに併設されている訓練場に移動した。
なんか最近こういうところ来ること多いな。
受付嬢さんいわく、軽く手合わせしてBランクさんの判断で合否が決まるらしい。
勝たなきゃいけないとかじゃなく、とりあえず冒険者としてやっていけるだろうっていう程度の実力があればいいんだって。
でも試験担当の判断だけで決まるんじゃ恣意的になっちゃわない?
まぁ客観的に判断するためにも受付嬢さんが着いてきてんのかな?
うーん。
流石に今回も全攻撃絶対防御バリアを使うってのは微妙か。
実力が見えにくいもんな。
そのせいでFクラス残留になった可能性がある。
やむを得ない、普通に戦うか……。
「チッ。騎士学校に通う貴族様だろうが手加減はしてらんねぇぞ? それで後で死なれたら目覚めがワリィからな」
Bランクさんが木剣を構えながら言った。
アレだな、口は悪いけど人は良いタイプだな。
こういうこと言っちゃうクセに、言った相手がピンチになると身を挺して守って、そんで笑いながら死んじゃうんだよ。
俺もヤキがまわっちまったな……とか言いながらさ。
「おい、早くしろ」
Bランクさんの顔を見ながら、そんなことを考えていたら急かされてしまった。
スイヤセン。
適当な片手剣を模した木剣を手に取り、Bランクさんに相対した。
「それでは、はじめ!」
受付嬢さんが合図する。
うん、BランクさんはBランクなだけあって強そうだ。
Bランクがどれぐらいの強さか知らんけど。
まぁとにかく、剣を構えた姿が堂に入っていた。
「オラ、オメェの力を見る試験なんだから、サッサとかかってこい」
せっかくだ。
胸をお借りするとしましょう。




