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「まぁ、この子たちで勇者と英雄を倒せるとは思っていませんよ。時間さえ稼いでくれれば良い」


 そう言ってモノクル太郎は笑いながら去っていった。

 今いる部屋の出入口は、変貌した子供たちが立ち塞がる扉ひとつしかない。

 まさしくモノクル太郎が言った通り、時間稼ぎが目的なのだろう。

 あちらから仕掛けてくる気配はない。

 3人揃って扉の前を動こうとしなかった。


「つっ立ってても始まらないんじゃない?」


 ルナがそう言って前に出る。

 生気を感じなかったとはいえ、普通の子供の姿を見ていたために尻込みしていた他のメンツも、苦々しい表情を隠さず武器を構える。

 証拠隠滅された上にモノクル太郎が逃げてしまえば、ここまで乗り込んできた意味が無くなってしまう。

 それは全員が理解していた。

 あ、いや、ルナはそこまで理解してない。

 ヤるならヤろうぜ、くらいにしか考えてない。


 その勢いのまま、ルナは例の如く身体強化を全開でかけ始めた。

 学校の演習場でしたような模擬戦ではない、ガチンコの戦闘である。

 とは言っても、ルナのやることは変わらない。

 全速力で剣を突き込むのみだ。


 ドンッ、と鈍い音がした。

 ルナは3人のうちのど真ん中に剣を突き込んだが、敵の体には刺さらずただ敵を吹き飛ばしたようだ。

 剣を突いて刺さらないって硬すぎでは?

 あと3人の真ん中に攻撃しちゃうと、残りの2人に挟み撃ちにされちゃわない?

 そういうところホント考えなしよね。


 そう思ったが、残りの2人はそれぞれヘルケン先生とさわやか勇者先輩が相手取っていた。

 俺?

 俺はお前、おでんしか召喚できないのに何するんだよ。

 あとアルフも何もしてねぇなと思って見てみると、なにやら難しい顔をして考え込んでいた。


「んー……、ナシよりのアリかなぁ……」


 変わり果てた子供たちは一応人型ではあるものの、見るからに人外な感じになっている。

 例えるなら、幼児が作った粘土人形をムキムキにした感じである。

 それに対して"ナシよりのアリ"という評価をブス専アルフさんは下されたのだ。

 こいつマジか。

 お前それ"ナシよりのアリ"って抱こうと思えば抱けるってことか。


 そんなアルフさんに戦慄しつつ戦いに視線を戻すと、みんな危なげなく戦っていた。

 ただ、やっぱり硬い。

 そして、その硬さを突破できるようなタメが必要な技を出させて貰えるほどは弱くない。

 なるほど、時間稼ぎにはピッタリな人材だ。

 というか、モノクル太郎の言う通り戦争にピッタリじゃないですかねぇ。

 勇者と英雄が手こずるような存在を庶民のガキから生成できるのなら普通に有用では……?

 うーん。

 さわやか勇者先輩は正義感ツヨツヨそうだし、言ったらブチギレっかなぁ……?


「言わない方がいいよ」


 アルフが俺の心を読んで言った。

 読むなよ、心を。



   ◯



 それからしばらくして、クソ便利な戦争兵器2体を無力化した。

 ヘルケン先生とさわやか勇者先輩はやっぱり良心の呵責に耐えられず、殺さずに無力化という選択をしたのだ。

 動きが鈍くなったところを拘束している。

 あと1体はルナが普通に殺した。


 しかしモノクル太郎の思惑通り、いい感じに時間稼ぎをされてしまったな。

 おそらく色々と証拠隠滅とかして逃げちゃったんじゃなかろうか。

 ここにある資料には関わった人間とか、そういう証拠になるような情報はなかったし。

 こういう実験が行われてましたよっていう証明はできるけど、ヘルケン先生やさわやか勇者先輩にとっては表沙汰にしたい中身じゃないらしい。

 模倣者が出てきたら嫌だしっていう。

 そんなわけで資料はお焚き上げされた。


「想像以上にやっかいだねぇ……」


 帰途につく途中、ヘルケン先生が漏らした。

 想像以上にやっかいだっていう愚痴と一緒に、お漏らしをした。

 戦闘終わってからクスリが切れたのか様子がおかしいとは思っていたが、失禁までするとは、まさしく想像以上である。

 シリアス顔で呟いたと思ったら、メチャクチャ気持ちよさそうな顔して失禁し、そして今は真顔でぶっ倒れている。


 まずルナが普通に無言で帰っていった。

 それを見てアルフが「じゃあ、僕もこれで」ってさわやか勇者先輩に挨拶し、何事も無かったかのように帰った。

 じゃあ俺も帰るかと思ってさわやか勇者先輩の方を見ると、なんかマジメな顔をしている。


「思った以上に敵は厄介だね。ボクは今回のことを校長先生へ報告しに行くよ」


 そう言ってスタスタ歩いて行った。

 となりを見れば、ヘルケン先生がぶっ倒れたまま目をガン開いて空を見つめている。

 一切瞬きしない、こわい。

 あと心なしか尿臭に混じって便臭がしてる。


 ヘルケン先生にならい、俺も空を見上げた。

 太陽の位置を見ると、まだ陽が昇ってからいくらと経たないらしい。

 まぁ夜明け前から潜入し始めたからな。

 それに、そもそも人気のない道を通っていたこともあって、あたりに人影は見えない。

 朝の爽やかな風がサワサワと木の葉を揺らし、鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。

 早起きは三文の得なんて言葉があるが、なるほど、この空気には三文ぐらいの価値はあるのかもしれないな。


 改めて失禁ウン漏ら先生に目を向ける。

 まぁ、仕方がないな。

 このまま放っておくワケにもいくまい。


 先生のそばにアツアツのおでんを召喚してから帰路についた。

 お腹すいたら食べるだろ、たぶん。



   ◯



 翌日、登校してすぐ校長室に来いと呼び出しを受けた。

 さわやか勇者先輩が昨日のことを報告しているだろうし、おそらくその件だろう。

 もう報告してあるんならいいじゃんメンドくさい。

 質問に質問で返すし会話もできないようなクソホームレス校長に話すことなんてないよ。


 あとFクラスからは校長室も遠いんだよ。

 用があるならお前が来いよ!

 そういうとこやぞ!


 そうして30分ぐらい歩いて校長室に着いた。

 その頃にはもう俺の怒りは最高潮だった。

 勇者に勝ったのにFクラス残留という処分を下されたがために歩かされた30分である。

 マジでホントもうクソ。

 税金を払うために確定申告をさせられてる時に近い感覚だ。


 怒りを込めつつ、しかし努めて穏やかにコンコンとノックする。

 3回や4回ではなく2回叩くことで怒りを表現した。

 クソみてぇなヤツがクソみてぇな仕事する部屋にはトイレノックがお似合いだよなぁ!?


「入れ」


 どうぞお入りくださいだろぉ!?

 マジでホントもう校長だったら偉ぶってても許されるみたいに思ってんじゃねーの。

 このまま逃げてコンコンダッシュしようかな。


「なにをしておる、早く入らんか」


 もう一度、扉の向こうから声が掛かった。

 うるせぇ。


「失礼します」


 やむを得ないので扉を開ける。

 そして中に入ったら後ろ手で扉を閉める。

 これが面接だったら、この時点で落ちるだろう。


 そして不遜な態度のまま校長を見た。

 なんか手前の応接スペースみたいなとこのソファにマルチ・カンユーくんと知らないオッサンが座っていたが、とりあえず校長にメンチを切る。


「クラスメイトを殴ったそうだな?」


 校長からそう問い掛けられた。

 昨日の実験施設の話ちゃうやんけ。

 まぁ俺は質問に質問で返すようなウンコ人間では無いので正直に答えることにする。


「殴りましたね。そこに座っているマルチ・カンユーくんを力いっぱい殴りました」


「なぜ殴った?」


「なんというか、彼は、こう……、カンに障ったので」


 そう言った途端、マルチ・カンユーくんの隣に座っていた知らないオッサンが立ち上がった。


「フザけるなよ! この落とし前をどうつけるつもりだ!」


 なんなの?

 おこなの?


 だれなの?

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