パエリアとパンプキンケーキ
帰り道に寄ったスーパーが、オレンジと黒の飾り付けで彩られていて、今日がハロウィンだったことに気がついた。
ハロウィンっぽい料理を夕食にしようかと、出来合いのコーナーを眺める。
海苔のような黒いものでジャックオランタンを表現した唐揚げに餃子。
かぼちゃに見立てたサーモンセットにハンバーグ。
しまいにはカボチャのシールを張っただけのいつもと変わらないお寿司セット。
なんか違う。
唐揚げ、餃子、ハンバーグに寿司は食べようと思えばいつでも手が届いてしまう。
コンビニでも変えてしまう。
なんだか今日のお腹の調子は難しいお年頃だった。
そんな中、サフランで黄色く染められたパエリアが目に飛び込んで来た。
まあパエリアも日本ではいつでも食べられるだろう。
電子レンジには容器ごと入らなかったので、フライパンに移し替え温めている最中にそう思った。
ただいつも寄るスーパーでは初めて見た。
パエリアが入った熱々のフライパン、紙皿、スプーンを持ってベランダに出る。
テーブルに置いたフライパンから、紙皿へパエリアを盛り付けていると左手がこんばんはをしてきた。
「こんばんは、いい匂いですね」
「匂いますか?」
フライパンや炊飯器を使って炊き上げたわけでもなく、ただ温めただけなので何も感じなかった。
自分の匂いは気づけない、みたいのものなのだろうか。
「はい、魚介の香りがとっても」
「食べます?」
買ったパエリアはパーティーサイズだったので、半分あげても問題はない。
紙皿にもりもりとサフランライスを盛って、その上に大き目のエビ2尾にパプリカあさり、レモンをめり込ませた。
いつもより多めだったので、片方の手を片方の手で支えながら手渡すと、手が触れそうになって、パエリアを下界にぶちまけるところだった。
あぶないあぶない。
「え、こんなに?」
以前ピザをあげた時よりも引いている気がする。
「ちょっと待っていてくださいね」
1分ほど待っていると、ふりふりと左手がこちらを呼んだ。
「どうぞ」
と指し出された紙皿に乗っていたのはオレンジ色の半月が乗っていた。
「これは」
「かぼちゃのケーキです。一応ハロウィンですし」
かぼちゃの優しい甘みがそっと身体を包みこんでくれた気がした。