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お隣さんとベランダごはん  作者: シルヴィア・紫の夜明け


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2/9

ドライカレーとスープドシャンピニオン

 昨日の残りのカレーをフライパンに移し、ひき肉と刻んだ赤いパプリカを入れて炒める。

 水気が軽く飛んだら、なんちゃってドライカレーの出来上がり。

 紙皿にご飯と共に盛り付けたら、作っておいた温泉卵をのっけてパセリを一振り。

 昨日のような事があってもいいようにと、二人前盛り付けてしまった。

 なければ自分で食べればいい。

 そう思いお行儀悪く足でベランダを開けると、隔板から手が生えていた。

 生えているというよりは、フリフリと可愛らしく踊っていると言った方がいいのだろうか。

「こ、こんばんは」

 恐る恐る手に挨拶すると、手は元気よくぴょんと跳ねてから隔板の向こう側へと返って行った。

「こんばんは、お隣さん。昨日のカレー初めて食べる味だったんですけれど何使っているんですか?」

 それが知りたくて待っていたのだろうか。

「普通に甘口と中辛の合い挽きですよ」

「カレールーの合い挽き、そんな方法もあったんですね」

「昨日のカレーをドライカレーもどきにしたんですけど、食べます?」

「いいんですか?」

「ふた皿、盛り付けてしまったし大丈夫ですよ」

 そう言って昨日と同じように隔板の向こう側へとドライカレーを差し出すと、受け取ってもらえた。

「温泉卵が乗ってる」と小さな呟きが聞こえてきたがカレーにのっけない派閥なのだろうか。

「あ、少し待っていてください」

 何かを思いついたお隣さんにそう言われた後、彼女が部屋へと戻っていく音が聞こえた。

 またどたどたと部屋を早足で動く音が聞こえてきた。

 その音が止んで訪れた一瞬のしじまの後、隔板から紙コップが差し出された。

 受け取って確認すると、紙コップの中には薄いベージュ色のようなドロドロの液体が。

「何ですかこれ」

「シャンピニオ……きのこのスープです」

 フレンチ……、お隣さん料理人とか料理研究家なのだろうか。

 紙コップで味わうフレンチ、なんだかおもしろい。


 フレンチと認識してから初めて食べるフレンチは、こってりとしたきのこのスープだった。

 その晩、夢の中で、キノコのテーマパークにて等身大の舞茸としめじとマッシュルームと楽しく踊っていた。

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