意外な一面
廊下で空たちと別れ、自分の教室へと入ろうとしたとき、後ろから声がかけられる。
「よお駿、昨日はどうだった?」
にやにやした表情で俺に声をかけたのは、同じクラスで友人の近藤護だ。
護はテニスをしていて、爽やかな体育会系といった所だろうか。
「……なんだよ、昨日はどうって」
「んなの1つしかないだろ。太刀川と一緒に急いで教室出てたじゃねぇか」
あぁ、そういえば強引に引っ張られてたな、俺。
「そんなお楽しみってことでもないよ。いつものワガママに付き合ってたんだよ」
そう言って自分の席へと向かう。
「ふーん、それとさっき他のクラスの女子とも話してたよな。それもめっちゃ可愛い子ばかりと」
この発言を聞いたクラスの男子どもが俺の方に視線を向ける。
あー、やだやだ。
「……別になんでもいいだろ」
自分の席に座り、いつものように机に伏せる。
なんか漫画で見たことあるぞ、こんな状況。
休み時間にクラスメイトから色々聞かれたりしたが、無事(?)一日を終えて部室へと足を運ぶ。
校舎3階の端にある『ミステリー研究部』と書かれた看板がある教室の中へと入る。
「あら、あんた早いわね」
入ると椅子に座り本を読んでいた日向だけが部室にいた。
「教室にいると色々と面倒だったもんでな……他の2人は?」
「空は呼び出しくらって、咲は委員会よ」
「呼び出しって……あいつ何かしたんかよ」
日向はため息をつき、
「……小テストの結果が悪いらしいのよ」
納得の理由だ。
空は勉強が苦手なのだ。
俺は頭を抱え、首を横に振る。
「あいつ……オカルトばっかりで勉強してなかったな」
「なんだ、あんた知ってるのね」
日向もため息をつく。
俺は椅子に座り、机の上に置かれていた雑誌に手を伸ばす。
「……ホント、オカルト関係の品が多いな」
「そりゃ元オカ研だし、それくらい分かるでしょ」
でたよこの反応。
「……ところでさっきから何読んでんだ?」
「これ? ただの推理小説よ。ほら、書店の人気コーナーに並んでるやつあるでしょ」
「あぁ、あの人気シリーズか。俺もあのシリーズ好きなんだよな」
それを聞くと日向は勢いよく机に手をつけ、こっちを見ると、
「え!あんたもあのシリーズ好きなの!?面白いよね、特に暴走列車のやつが!」
「あれか!あれはハラハラする展開だったなぁ。犯人も意外な人物だったしなぁ」
「そうそう、あれは予想と違ったねぇ。私はあの紳士だと思ったんだけどねぇ」
「日向もなのか!俺もあの紳士が犯人だと思ってたんだよな!」
あれ、意外に日向と趣味合うな。
その小説について語り合っていると部室の扉が開かれる。
振り返ると半泣き状態の空と励ましている北条の姿があった。
「ふぇぇぇ、なんで小テスト出来ないだけでこんなに怒られるのぉ」
「えっと……空ちゃん落ち着こ?」
「最近ドラマばっかり見てるからだろ。次はいつ小テストあるんだ?」
空に尋ねたが目線を落とし黙ったままだ。
「明日の2限に確か小テストがあったわね」
日向が顎に指を当てて言う。
「あっ、なんで言っちゃうの!?」
それを聞いた俺はゆっくりと立ち上がり、カバンを肩にかけ、空の腕を掴む。
「さて、今日はオカルトじゃなく、勉強をしようか」
空が絶叫するも誰も止めようとするものはいないのであった。