彼女たち
翌日の朝。
いつものように家を出て、学校へと向かう。
途中、というよりお隣のインターホンを鳴らし、空を呼びに行く。
大体5分ほどして空が家から出てくる。
「ごめんごめん、お待たせ」
明るい笑顔とともに両手を合わせて謝る。
「悪いと思うならもう少し早く出てこいよ」
そう言って歩き出す。
空も俺を追って着いてくる。
「ふあぁぁぁ」
「なんだ? 夜更かしでもしたのか?」
「うん、ドラマに見入っちゃって」
「この間言ってたサスペンスか?」
「それそれ! あの探偵が凄くてさぁ」
このような感じに喋りながら学校に向かう。
学校の近くまで来ると生徒の数が増え、俺たちへの視線が強い。
理由は明白、太刀川空という人物は容姿も可愛らしく、無邪気で明るい性格をしている。
そのため、人気がとてもあり学年でも一目置かれる。
……俺はただの邪魔者なんだろうけどな。
空自信あまりその事を気にしていないが、もう少し気にしてもいいと思う。
ここまではいつも通りの登校だ。
門の近くまで来ると、ある女子生徒が登校しているのに気がつく。
「あ、茜! おはよう!」
昨日入部したミステリー研究部の部員で空と同じクラスの日向茜だ。
暗い茶色のツインテールで、容姿も綺麗。
お嬢様といった印象で、俺への態度がとてもキツい。
「おはよう、空。それとそこの」
「……そこのとはご挨拶だな」
「ふん、あんたと仲良くする義理もないし」
まったく可愛さの欠片もない。
こいつもモテるみたいだがどこがいいのやら。
門を抜け、校内に入ると後ろから声がかけられる。
「あ、あの……えっと……おはよう」
振り返ると北条咲がおどおどしながら立っていた。
「咲ちゃんおはよう!」
「あら、おはよう」
2人が挨拶したのを見て、俺も
「おはよう」
と声を掛ける。
だが北条は慌てて視線を下に向ける。
彼女は北条咲。
長くウエーブのかかった長い髪とメガネが特徴。
地味でとても大人しい子だが、メガネを外すととても可愛いという噂があるとかないとか。
「あんたの事が怖いんじゃない? 男はみんな野獣って聞くし」
「それどこで得た情報だよ……」
小さくため息をつき、4人で校舎の方へと向かう。
そして、心做しか周りからの俺を見る視線がとても痛い気がした。