雑な扱い
「ミステリー好きな彼女たち」2
自己紹介などした後、入部届けを書かされミーティングが始まった。
「よし、それじゃあ部員も4人になったことだし、早速活動を始めよう!」
両手を合わせ、笑顔を浮かべた空が話し始める。
「てかどんな活動をしてんだよ……語り合いか?」
「あんた馬鹿ね、それだけだといずれ話が尽きちゃうじゃない」
呆れた顔で日向が言う。
「うぐ……だったら何すんだよ」
「折角男子が入ったんだから、現地に行くしかないじゃない!」
目を輝かせた空を見て、これが目的だったのかと思ってしまう。
「現地って……オカルトスポットとかにか?」
「もちろん!それ以外どこに行くっての」
空はとても楽しそうに話している。
普段からオカルト関係の話をする時はこうも生き生きとしている。
「精々私たちのボディガードでも務めなさい。それと荷物持ちにも役立つわね」
俺は雑用かよ……
「それでなんだけど、どうしよっか?」
話題を戻すように空が口を開いた。
「ええっと……あの……」
おどおどしながら北条が小さく手を上げた。
「咲ちゃんどこかいい場所知ってるの?」
「えっと……うん……起野山ってあるでしょ?……そこの廃墟……実はオカルトスポットらしいの」
それを聞いた空と日向は表情が明るくなる。
「へぇそんな近くにあったのね」
「咲ちゃんそれどこで知ったの?」
北条は自分のスマホを開くと、俺たちに掲示板サイトを見せる。
そこには、『起野山麓にある廃墟に謎の影現る』というタイトルが書かれている。
空と日向は目を輝かせてそのサイトを見ていた。
そこまでオカルトに興味が深い訳では無い俺はその光景を眺めているだけだ。
「「ここに行こう!」」
二人揃って声を上げる。
「先生への許可はいいのか?野外活動はそういったことする必要あると思うんだが」
俺が尋ねると空がこっちに振り返り、
「大丈夫、基本私たち任せになってるから」
……それは教師としてどうなの?
しかもこんな怪しい部活に対して。
疑問を持ちつつ話が進められ、今週の日曜日に行くことになった。
その日の放課後。
俺は空と一緒に帰路を歩いていた。
「はぁ、まったく。驚いたよホント」
「あはは、ごめんね。私たちも焦ってたのよ」
申し訳なさそうに空が詫びる。
「じゃあジュースで勘弁してあげるよ」
おどけて笑い、空の肩を叩く。
「えぇ、奢るのー?」
「そりゃいきなり巻き込まれたんだからな。安いもんだろ?」
空は悔しそうな表情をうかべ、頬を膨らませる。
自販機でジュースを買ってもらったのち、家の近所にある公園でベンチに座りながら空と喋っていた。
「空は昔っから俺のこと巻き込むよな」
ため息をつきながら空を見る。
「だって駿が近くにいるんだもん。少しくらい頼ったっていいじゃない」
「限度があるだろ。受験勉強のときだって毎晩毎晩俺の部屋に来てたじゃないか」
「でも一緒の高校に行けたわけじゃん?」
笑みを俺に向けて言う。
「……受験1か月前まで志望校変えろって喚いてたのはどこの誰かな?」
横目で空を見る。
空はバツの悪そうな様子だ。
そしてそっぽを向いて小さく何かをつぶやく。
「だって……駿と一緒の高校に行きたかったもん……」
「ん?何か言った?」
急に立ち上がり、「教えない!」とだけ言い放つと家の方に歩いていった。