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神話的な映画と伝説的な映画館

やっと98話を書くことが出来ました!楽しんでくださいね♪

 途中で瀬都子と別れてから、僕と美華ちゃんと、美華ちゃんの妹の亜莉栖(アリス)は駅まで歩いていた。


 「美華ちゃん、今日は楽しいデートだよね」


 「本当だねえ。楽しい。竣くんが薦めてくれたエピピラフも美味しかったし、色んな人がいて面白かったし、楽しい」美華ちゃんは左手で亜莉栖ちゃんの手を握りながら言った。


 「美華ちゃん、またデートしようね」僕は美華ちゃんと腕を組んで歩いた。


 「うん、そうだね」


 「明日、デートをしようか?」僕はデート中にデートの約束をした。


 「うん、良いよ!」と美華ちゃんはデート中にデートの約束を受け入れた。


 「じゃあ、明日もデートをしようね」僕は嬉しくて叫びたい気持ちになった。

 

 僕らは、愉快な話やジョークを交えた会話をしながらゆっくりと歩いて10分後に駅前に到着をした。


 駅前では、大道芸人のピエロが風船をあげるフリをしながらあげないという芸を子供達に披露していた。


 「ちょっと待って。お姉ちゃん、お姉ちゃん。明日はお父さんと映画を見に行く約束をしているからデートは無理でないの?」亜莉栖ちゃんは心配そうな顔をして美華ちゃんを見上げた。


 「あ~っ! すっかり忘れてたわ。竣くんゴメン。明日は無理だ。ゴメンね」美華ちゃんは謝るとウインクをして照れながら強く僕の腕に寄り掛かった。


 「あはははは。良いよ、良いよ。気にしないで。大丈夫、大丈夫。デートはまた今度ね。何の映画を観に行くの?」


 「ビートルズのね、『レット・イット・ビー』」と美華ちゃんはサラッと言った。


 「ぐわ~っ。マジ? ウソっ? 信じられない。何処の映画館でやるの?」と僕は度肝を抜かれて言った。


 「『機敏(きびん)映画館』だよ。お父さんが新聞で機敏映画館の特集記事を見たんだってさ」美華ちゃんは伝説的な映画館の名を上げた。


 『機敏映画館(きびんえいがかん)』は1931年から続く老舗の映画館で、昨年、文化遺産に登録されそうでされなかったという映画館だった。(今年は登録される見込みと言われてはいるけどもね。どうなることやら)


 ハイカラでモダンでエキセントリックで人目を引く洋風な造りの映画館なので、観光客や旅行客、修学旅行の生徒たちが機敏映画館の前で写真を撮るという観光地特有の人気スポットとなっていた。


 機敏映画館の持ち主は、2代目の館長で「多田出観(ただでみ)ビル」のオーナーでもある、多田出観太依(ただでみ・たい)さん(96歳)だ。太依さんは、若い頃から女優に憧れ、映画が好き過ぎてハリウッドで暮らしたこともあるらしいというお婆ちゃん。


 現在、太依さんが、映画館を住居として暮らしているために、映画館は生活感丸出しでもあった。

 

 巨大なスクリーンと座席の間にあるスペースにはベッドが置いてあった。


 スクリーンの横に24型のテレビが設置され、非常口の扉の横には太依さんの亡くなったご主人、多田出観麗与(ただでみ・れよ)さん(享年108歳)の仏壇が置いてあったし、ちゃぶ台の上には新聞やラジオが置いてあった。


 一見、しっちゃかめっちゃかに見えるかもしれないが、何故か心地好い秩序が保たれているという不思議な空間がそこにはあった。


 「美華ちゃんは初めて機敏映画館に行くの?」ボクは胸が早鐘のように打っている中で言った。まさかの『レット・イット・ビー』を公開している事実に驚いていたのだった。


 「そうだよ。お父さんがね『前から、一度、行ってみたい映画館だった』と行っていたから楽しみにしているのよ」美華ちゃんは高めの声を出して喜びを隠しきれないで言った。


 「凄い造りの映画館なんだよ。お城みたいなんだ」と僕は明日必ず美華ちゃんが驚く姿を思い浮かべながら言った。


 「そうらしいわね。新聞だとモノクロだからイマイチ分からなかったけど」


 「それにしても、まさかの『レット・イット・ビー』だとは驚きだよ。今もDVDでは発売されていないし、ビートルズの公認主要作品の中でも、切り札、伝家の宝刀、とまで言われている神話に近い映画だからね」僕は幻の映画に思いを馳せながら言った。


 「竣くんも良かったら明日一緒に行く?」と美華ちゃんは嬉しい言葉を掛けてくれたのだが、僕は和雄爺ちゃんも連れていってあげたい気持ちになっていた。


 和雄爺ちゃんがこの事を知れば、踊りまくって泣くだろう。


 「和雄爺ちゃんも一緒に連れていってあげたいんだけど、どうかな?」


 「もちろん喜んで」美華ちゃんは何度も頷きながら喜んで言った。


 「今、爺ちゃんに電話してみても良いかい? 亜莉栖ちゃんゴメンねえ。長話で足止めさせちゃってさ。ちょっとそこのベンチに皆で座ろうか」


 「うん。良いよ。待っているよ」と亜莉栖ちゃんは穏やかに微笑みを浮かべて言った。


 ベンチに座ってから僕は和雄爺ちゃんのガラケーに電話を掛けたが繋がらなかった。電波の届かない所にいるのか、充電がないか、電源が入っていかもしれない。


 「こんな時に限ってタイミングが悪いなぁ」僕は少し残念な気持ちになっていた。


 「また後で掛けてみましょうよ」と美華ちゃんは僕の肩を擦った。


 「そうだね。亜莉栖ちゃん、何か飲みたいものはあるかい? あっ、あそこに何か発見したぞ。飲み物を配っている水着姿のお姉さんたちがいるよ」僕は目を細目ながらビキニ姿のお姉さんたちに指を差した。


 お姉さん達の側にはサングラスを掛けたお兄さん方が数人いて、汗だくになりながらマイクで商品名を必死に宣伝でアピールを繰り返していたけど、商品名が何を言っているのか全く分からなかった。


 「はい、皆さぁ~ん、遂に、遂に、ちゅいに、はつぶぁび。炭酸いんろーにょ『√♀∞♯$※〆¥』でぇ~す。皆さーん、よろすく、よろすく、でぇ~す」サングラスのお兄さん方は、商品名という大事な部分を伝えなければならない立場なのに、肝心要な事を疎かにしていた。

 

 水着姿のモデル並みの美女が3人で飲み物を配っていた。

 

 「よし、1人1本だから順番に並んで貰ってこようぜ」と僕はベンチから立ち上がると先頭に立った。


 「これはね、すんごく、美味しいんだよ。よろすくね、よろすく、よろすく」と言っていたお姉さん達の顔が汗で化粧が半分以上も溶けていた。


 ペットボトルを受け取った僕らは、すぐ商品名を見た。実に凄くダサかった。


 美華ちゃんは顔をしかめた。亜莉栖ちゃんも首を捻った。


 商品名は『やっぱしぃしゃっぱりシュター』だった。

 

 表示を見てみたら、カフェインが大量に含まれていたので、美華ちゃんは亜莉栖ちゃんに言い聞かせてからペットボトルを受け取ると、美華ちゃんと亜莉栖ちゃんは『やっぱしぃしゃっぱりシュター』をお姉さん方に返した。

 

 僕もカフェインは嫌なのでお姉さん達に返した。


 お姉さん達は炎天下の疲れのせいか、受け取る時に「あらっ、飲んだペットボトルをちゃんと戻すなんて偉い子ちゃんですよ~っ。これまた、貴方たちは人生の正しい徳を得たのよ。嬉す~ぃ。どうもありがとうございましたぁ~っ!」とお姉さんは笑顔で言うと、渡した3本のペットボトルを近くにあるゴミ箱に投げ入れた。


 僕は、それについて考えて、どう言って良いのか分からなかった。


 僕らは3人とも飲んでいないからジュースの中身があるのに、ペットボトルの重量の判断も乏しくなるほど、お姉さんたちは疲労困憊気味だと思った。

 

 この状況に、どんな事をすれば良いのか、言えば良いのか、難しい判断だと思ったので、僕は「何も無かったんだよ。何も見なかったんだよ」と美華ちゃんと亜莉栖ちゃんに言い聞かせて、僕らはその場を立ち去ることにした。

 

 僕は改めて自動販売機でメロンクリームソーダを3本買ってから美華ちゃんと亜莉栖ちゃんに手渡した。 

 

 まだ日は長いが、そろそろ帰ろうと言う事になり、帰宅することになった。




つづく


残り2話で100話です!頑張りますが、他の連載も書いているので、少し遅れるかもしれませんが、待っててくださいね!!また、読みにおいでね!宜しくお願い致します!

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