竣&美華 デート10
これでデートはおしまいです。カフェレストラン『ルーシー』は混雑するほどの人気があります。 竣と美華と亜莉栖と瀬都子4人で仲良くお食事。 やっぱり、何度も言いたくなるけど、4人が揃わないと絶対に出来ないものは?ビートルズなんですよね。
僕たちは小野さんに案内されて、4人が座れる奥のテーブルに着くと、テーブルの端に置いてあるセルリアンブルーのメニューを手に取った。
「美華ちゃん、はい、メニュー。何にする? 僕はエビピラフとお茶にするよ」と僕はエビピラフを食べたくてウズウズしながら言った。
「じゃあ、私も同じ物をお願いします」美華ちゃんは楽しみな様子で言った。
「瀬都子は何がいい?」僕はメニューを瀬都子に広げて差し出した。
「私は焼きそばとおにぎりと紅茶をお願いします」瀬都子は今にもヨダレが出そうな顔をして言った。
「亜莉栖ちゃんは何を食べたい?」僕はまだメニューを見ている瀬都子に、「次は亜莉栖ちゃんに渡してね」と促して言った。
瀬都子はしゃがんで亜莉栖ちゃんに手渡した。
「私はチョコレートパフェとイチゴのショートケーキが食べたいなぁ」と亜莉栖ちゃんはいきなりデザートを選んだ。
「亜莉栖、ダメです! デザートは食後の楽しみにしなさい。栄養のある物から先に食べなさい」美華ちゃんは亜莉栖を厳しく注意をした。
「お姉ちゃん、食後なら食べてもいいの?」亜莉栖ちゃんは美華ちゃんに確認をして聞いた顔つきが、子供の頃の夏奈子を思い出させた。亜莉栖ちゃんは、まだ9歳。
「うん、それだったら食べても良いよ」美華ちゃんは亜莉栖ちゃんの頭を撫でながら言った後に、亜莉栖ちゃんのGジャンのポケットから飛び出ている財布を入れ直した。
「じゃあね、う〜ん、そうだな、あっ、濃い目のエスカロップはあるかな?」と馴染みのない、聞いたことのない食べ物の名称が出てきたので、僕と小野さんと瀬都子は「えっ!?」と聞き返した。
「はっ!? エ、エス、エステティック!?」と小野さんは更に複雑にして聞き返した。
「いや、エスカロップ」と亜莉栖ちゃんは分かりやすくゆっくりと話した。
「あーっ! はいはい。エスカロップですか! 郷土料理ですよねぇ? ないんですよ。申し訳ないです」と小野さんは頭を大きく振って頷いた。
「ないなら大丈夫です。良いです。じゃあねぇ、スープカレーはありますか? スープカレーはシーフードにすると、凄い味が染み込んでいて美味いんですよね。シーフードのスープカレーをくださいな」と亜莉栖ちゃんはまたしても聞いたことがあるが、食べたことのないスープカレーの注文をした。
「ないんです。スープカレーは絶品ですよね! 私は食べたことがありますよ」と小野さんは優しく笑って言った。
「ちょっと! 亜莉栖! 止めなさい。困らせるような事はしないの! メニューの中から選びなさい」美華ちゃんは声を大きくして亜莉栖ちゃんに注意をした。
「うん、わかった。肉うどんも、たぶんないな。そうだなぁ、あんかけ焼きそばとお茶にします」と亜莉栖はメニューを閉じながら言った。
「かしこまりました。ありがとうございます」と小野さんは厨房に行ってコックに注文の料理を伝えた。
「グルメっ子なんだね、亜莉栖ちゃん。スープカレーは食べてみたいな」と僕は亜莉栖ちゃんに感心をして言った。
「スープカレーはシーフードにすると、かなりカレーの味が深くなって旨味が増すんですよ」と亜莉栖は味を思い出したのか、ニヤけた顔をして言った。
「北海道の方は食べることが多いのですか?」と瀬都子はスープカレーに興味を示して聞いた。
「うん。食べる方が多いかもね。スープカレーは、きめ細かくて、それぞれの素材が絶妙に味付けがされているから引き立っていてね、ライスにも味が染み渡っていて最高なんだよ。お肉との相性が良いし美味いの」と美絵ちゃんはイメージを与えてくれるように言った。
「食べてみたいなぁ〜」と僕はメニューを見て言った後、スープカレーを探し求めながらメニューを捲り続けた。
「それにしてもお客さんが結構いますね」瀬都子は辺りを見渡しながら言った。20から30人程はいるだろうか、恋人同士、親子連れ、老夫婦、外国の方や観光客らしい人の姿も見受けられた。
「美味いからね」と僕は自分の店でもないのに得意気な顔をして言った。
店内にはビートルズの名曲「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」が心地良く流れていた。
ビートルズの中でも最高に美しい曲の1つだ。アルバム「リヴォルヴァー」の5曲目に収録されている。
ポール・マッカートニーのバラードでも最高峰の曲だ。ポールの作曲した曲でも、1、2を争う名曲だろう。美しいメロディーと、ポールの完璧なヴォーカルが素晴らしいし、ジョンとジョージの愛の輝きに溢れたハーモニーの美しさに恍惚としてしまう。
ジョン・レノンも「「リヴォルヴァー」の中でも1番大好きな曲だよ」と言っていた。
こんな話がある。
ビートルズがツアー先のホテルでジョンとポールが一緒の部屋で泊まる事になった時の事だ。
次のアルバムに入れる曲のデモテープを用意していたジョンとポールは、テープレコーダーにカセットを入れてお互いに作った曲を披露していた。
ポールが、この曲のデモテープをジョンに聞かせていたら、ジョンは黙り込んだ後に、ポールを見つめると「俺が作ったどの曲よりも素晴らしいじゃないか。良いよ。良い曲だよ」とポール誉めたのだが、すぐにジョンは『しまった!! 俺としたことが』と思ったようで、甘い言葉を吐いた自分に苦笑いを浮かべると、何事もなくポールに振る舞ったそうだ。
ポールはジョンが人を滅多に誉めることはしないと知っていたので、「あの時は涙が出るほど本当に嬉しかったよ」と後に語っていた。それほどまでに素晴らしい曲なんだ。
ちなみにアルバム「リヴォルヴァー」のタイトルはなかなか決まらなくて、候補がいくつもあったんだ。
アルバムのコンセプトが「回り続ける」だったようで、
『マジック・サークルス』
『ペンデュラム』
『アブラカダブラ』
などがタイトルの候補だったんだ。
日本公演に来た時もアルバムのタイトルが決定していなくて、宿泊していたホテルでアセテート盤を聞いていた時に至ってもタイトルがなかった。
ビートルズを訪れた若大将が直接ビートルズから、その話を聞いていた。
アルバムタイトルとは別にジョン・レノンが若大将に「この曲もタイトルが決まっていないんだよ」と言って、若大将の目の前でジョン・レノンは歌い出したんだ。「綺麗な曲だな」と聞き惚れて感心していた時に、突然、「ワイルド・ワンズ」というタイトルが頭に浮かんだのだが、結局、ビートルズのメンバーには言いにくかったのだろう、若大将はワイルド・ワンズをビートルズのメンバーに言いそびれてしまった。
後にグループ・サウンズで颯爽とデビューしたワイルド・ワンズは若大将が名付け親になったものだ。
ひょっとしたら「リヴォルヴァー」には、別のタイトル、曲にも違ったタイトルが付けられたかもと想像すると面白いよね。
「あっ! 来た来た」と瀬都子が手を振って店員を迎えた。
「お待たせ致しました」と店員が、湯気が立ち上る料理をデカイ盆に乗せて、全員分を一辺に運んできてくれた。ありがたい。
「いただきまぁーす」僕らはお腹を鳴らしながら夢中で食べた。
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「ご馳走さまでした。いやぁ、満足したね。美味しかったね」と僕は腹を擦りながら皆に言った。
「亜莉栖、デザートはいけるの?無理しないで良いんだからね」美絵ちゃんは亜莉栖ちゃんの口回りについた海苔やあんかけをハンカチで拭いてあげた。亜莉栖ちゃんはお姉ちゃんに甘えるようにして唇を突き出していた。
『美華ちゃんは妹が可愛くて仕方がないんだろうなぁ』と僕は思って眺めていた。
どこの兄弟姉妹も、弟や妹が1番可愛いものなんだよね。
「竣くんは夏休みをどう過ごすの?」と美華ちゃんは食後の紅茶を飲みながら言った。(『ルーシー』では食後にサービスでジュース、緑茶、紅茶等を頂けるのだ)
「そうだね。絵は、ほぼ完成したし、皆とキャンプか何かしたいな」と僕は歯に挟まったご飯粒を爪楊枝で取りながら言った。
「えーっ、キャンプ!? それは楽しそうだわ」と瀬都子は両手でガッツポーズをしながら言った。
「後で僕から皆に連絡を入れるよ。美華ちゃん、瀬都子ちゃんは大丈夫?」
「うん、参加します」と美華ちゃんは嬉しそうに首を傾げて言った。
「私も大丈夫なり」と瀬都子は紅茶を一息で飲み干してゲップを堪えながら言った。
「良いなぁ~」と亜莉栖ちゃんもは指を顎に当てて、いじけ気味で言った。
「亜莉栖ちゃんも参加して良いよ。お姉ちゃんやご両親の承諾があればね。大丈夫かな? 美華ちゃん?」と僕は美華ちゃんに視線を移して聞いてみた。
「分からないけど、お母さんが良いって言ったら、たぶんね大丈夫かな? とは思うよ」美華ちゃんは亜莉栖ちゃんを慈しむような眼差しで見ながら言った。
「お姉ちゃん、お母さんを説得してよ。お母さん、すぐに『子供はダメです』って言うんだもん」と亜莉栖ちゃんは焦り気味な声を出しながら言った。
「わかったよ」美華ちゃんは力強い言葉で亜莉栖ちゃんを何とか優しく慰めた。
「瀬川さんは何か将来の夢とかはあるんですか?」と亜莉栖ちゃんが突然夢の話をしたので僕は面食らった。
「画家になりたいです。ただ、最近は色々と考えてしまうんだよ」と僕は思わず本音を亜莉栖ちゃんに呟くように話した。
「あっ、気にしないでね」と僕は話を付け足した。
「瀬川さん、家のお姉ちゃんにも夢があるんですよ」と亜莉栖ちゃんは美華ちゃんの顔色を窺いながら言った。
「それはなんだい?」
「お姉ちゃんね、じ……」と亜莉栖ちゃんが言い掛けた瞬間に美華ちゃんは亜莉栖ちゃんの口を慌てて塞いだ。
「こら!! 亜莉栖! 黙らっしゃい!!」と美華ちゃんは珍しく少し声を荒げた。
「別に良いじゃんかよ」と亜莉栖は膨れっ面をして言った。
「気になるね」僕は美華ちゃんを敢えて落ち着かせるように言った。
「私にも将来の夢がありました。以前は父の仕事を引き継ぎたいと思っていましたが、自分の人生なので、考え直すことにしました」と瀬都子は言って紅茶のお代わりを店員に伝えた。
「夢か……。僕らは早くも来年、高校3年生だし、早めに進路とかを決めとかないといけないよなあ」と僕はまだ見ぬ未来に思いを馳せながら言った。
誰もが言わないでいた。口数が少なくなっていた。食後は眠たくなるし、将来についての不安を遠ざけたい気持ちもあったのかもしれないと思う。
「知ってましたか? 『ネバーエンディング・ストーリー』の主人公のアトレーユが身に付けていた首飾りだけどもね、現在はスピルバーグ監督が持っているんだよ」と僕は話を変えて言った。
「ウッソ〜、私、あの映画が大好きなんだよ」と亜莉栖ちゃんがえらく反応して言ってきた。
「本当の話なんです。あの首飾りは格好いいよね」僕は亜莉栖ちゃんに言ってから紅茶の匂いを嗅いだ。
つづく
ありがとうございました♪100話まであと3話!
頑張ります!! また宜しくお願い致します!




