竣&美華 デート5
デートをしている時って、どんな話も楽しくて。
「竣くん、さっきの話だけどさあ、私に『あんなことや、こんなことをしたって大丈夫なんだ』とか言っていたでしょう?」と美華ちゃんは僕と腕を組んだまま目を逸らさずに歩きながら話していた。
「えっ!? な、な、なんで急に言うのさ?」と僕は動揺からオロオロし出し、火花を撒き散らしながら弾けて動き回るネズミ花火を交わすようなステップを踏んで言った。
「なんとなく、知りたくてさ。楽しいこと?」と美華ちゃんは少女を思わせる、あどけない顔をして言った。
「まあね。知りたい?」と僕は腕を掻きながら言った。
「うん。知りたいよ」
僕は歩みを止めた。
「誰にも言わない?」と僕は美華ちゃんに念を押して確認を取った。
「うん。言わないよ」と美華ちゃんは素直に笑って答えてはくれたのだが。
「絶対に言わないかい?」と僕は強く言った。
「うん。言わない。絶対にシーッなんでしょう?」
「そう。絶対にシーッの話だから。万が一、妹の夏奈子に知られたりしたら、ヤバイ事になりそうだからさ。今後20年間くらい、夏奈子にからかわれて冷やかされるからね」僕は腰に手を当てて笑っている夏奈子の顔が頭に浮かんでいた。
「大丈夫です」美華ちゃんは大きく頷いた。
「実はさ、僕は恋人が出来たら『待ってよ〜!』と言いながら、砂浜を2人で駆け出して戯れてみたいという漫画チックな夢があるんだよね。あはははは」僕は赤面して言ってみた。
「フフフフ」と美華ちゃんは優しく笑っていた。
「僕は私服なんだけど、彼女には是非とも水、水、水、水着になって欲し、欲し、欲しいんだよ。外国の映画やドラマみたいなイメージかな」僕はニヤけて妄想しながら言っていた。
「ふ〜ん」と美華ちゃんは笑いながら聞いていた。
「彼女には、もちろん、ビキビキビキビキビキ…、ブホッ」と僕は蒸せた。
「どうした? 竣くん?」
「彼女は、赤いビキニ姿なんだよねえ。で、浅瀬で2人でキャッキャッ言いながら水掛けをして、はしゃぎたいんだよ。で、夕陽に包まれながら、もう1度、砂浜でお互いに遠くから向かい合って立つと、手を振って名前を叫んだ後に駆け寄りたいんだよね。
で、抱きしめ合うのさ。ムフフフフ。どう? 美華ちゃん。かなりハレンチでいやらしい夢でしょう?」僕は最大限のエッチな妄想をして言ってみた。
「な~あんだ。竣くんのあんなことやこんなことって、そんなことだったの?ウフフフ。可愛らしい妄想だけども、昔の古い時代の妄想を彷彿としていて面白い話にも聞こえるわよね。ウフフフ。竣くん、可愛いね」と美華ちゃん体をくねらせて笑っていた。
「映画でね、何の映画だったかなぁ? 恋人同士で滝で抱き合いながら戯れるシーンがあったんだけど、あれも良いね。綺麗な映像だったよ。何だったかなぁ?タイトルが出てこない」僕は以前深夜映画で見たシーンを思い出して言った。
「どんなシーンなのか、その映画を見てみたいな」美華ちゃんは期待に胸を膨らませて笑顔で言った。
「今の話が『あんなこと』の話になります」僕は照れながら頭を掻いてから言った。
「じゃあ『こんなこと』の話はどんな感じなの?」
「それはね、……。秘密。言えないんだ」と僕は言ってから、目の前に見えてきた『衛藤ギャラリー』がある衞藤ビルまで走って逃げた。
「あっ!? 待て待てえ〜!」と美華ちゃんは笑いながら追い掛けてきた。
「待たないよ!」と僕は言って3メートルほど走ってから急いで立ち止まった。
「竣くん? どうしたの?」美華ちゃんは言ってから閃いたような顔をして僕を見た。
「竣くん! 今の走って追い掛けた感じなんでしょ? 海で戯れてみたいイメージってさ」美華ちゃんはクイズの答えを期待して待つような顔つきで言った。
「そんな感じだけども、陸でやっちゃダメ! 台無しになるから。さっきの走りは無しで~す」と僕は否定しながら言った。
「ウフフフ。了解です。今度、一緒に海に行こうね」美華は僕の手を握り締めながら言った。
「良いよ。行こうね!」と僕は照れながら頷いた。
―――――――――
衞藤ビルの1階は画材屋『ポートレート』さんになっていて、豊富な品揃えで頼りになるお店だった。
額縁や石膏像、鉛筆、デッサンブック、油絵の具、アクリル画材、日本画の画材、絵画の本、パステル画材など全てが揃っていた。
絵画展の案内のポスターお店の壁に張り巡らされていた。
3階にある『衛藤ギャラリー』はエレベーターで行けるのだが、残念ながらこの日に限って【調整中のため12時まで使用できません】の張り紙が通路に貼ってあり、頭を下げている整備員のパネルがエレベーターの扉の前に置いてあった。時計を見ると午前11時になろうとしていた。
階段の前に行くと、僕は美華ちゃんに言った。
「美華ちゃん、階段で行くけど大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃあ、ゆっくり上がろうか」と僕が階段の先に上がり、後ろの美華ちゃんの手を引き上げて言った。
「良い運動になるわね」と美華ちゃんは背筋を伸ばして、太ももを高く上げながら階段を上がっていった。
「竣!!」と『ポートレート』の入り口から声がしたので見下ろすと、衞藤東助さんが手を振っていた。
「こんにちは! お久しぶりにしています。階段から失礼します」と僕は頭を下げて挨拶をした。
「竣、本当に久しぶりだよな。元気か? 絵は描いているのか?」と衛藤東助さんは嬉しそうな笑顔を見せて言った。
「はい描いています」と僕は右手を前に突き出して筆を持って絵を描くゼスチャーをしてみせた。
「そうか、そうか。頑張りなさいよ!」と衛藤東助さんはピースをしながら『ポートレート』に入っていった。
「あの方が衛藤さん?」と美華ちゃんは声を小さくして言った。
「そうだよ。ポートレートにはよく来ていたけど、衛藤さんに会ったのは、2ヶ月ぶりくらいかなぁ? 元気そうで良かったよ」と僕は衛藤さんについて美華ちゃんに話した。
「竣くんは、たくさん人を知っているんだね」と美華ちゃんは頬を赤くしながら言った。
「僕はあまり身構えていない方だからね」と僕は腕を掻きながら言った。何気なく腕を見てみると、赤く晴れている事に気付いた。
『何だ、ずっと、さっきから痒いのはこれか原因だったのか。全然、気付かなかった』と僕は蚊に刺された腕を見つめながら静かに微笑んだ。
つづく
ありがとうございました♪




