竣&美華 デート3
竣&美華はデート中です。記念すべき90話です。
楽しんでくださいね!
この世には色々な人がいて良いのです。大丈夫です。
僕たちはピンク色のお店に着いた。看板を読むと店の名前は、『夢見心地』とあったが怪しい。
飲食店のようだか表にあるガラスケースに小さな色紙が50枚ほど並べられていて、達筆な文字でメニューが書かれていた。
食べ物の名前も怪しい。例えばこんな感じ。
【奇跡のような味わいですから、是非お1ついかがですか?・600円】、【チョコレートだよvsココアだよ・500円】、【チャーハンは大体・800円です】、【かれーな、と続けばカレーライスだと思うでしょう? いや違うのさ・1200円】、【伝説の食べ物・1万円】などなど。こんな調子の色紙が50枚近く並んでいるのだ。
意味不明なメニューに僕と美華ちゃんは顔を見合わせて戸惑っていた。
「どう? 美華ちゃん」
「面白そうだけど」
「こういうのは、一見さんとして確認するのもアリだとは思うけど、何か匂うし怪しいよね」
「オープンして3日だってさ。ちょっと、ドアを少し開けて中の様子を覗いてみるね」と美華ちゃんは言ってから、しゃがむと、ゆっくりと少しずつ扉を開けた。
僕は落ち着きなく辺りを見たりしていた。
美華ちゃんはうつ向きながら扉を静かに閉めると、しゃがんだまま、登りの前まで僕を引っ張った。
「ヤバい……」と美華ちゃんは肩を震わせて笑いを堪えながら言った。
「どうだったの?」と僕もつられて笑った。
「客がいない」と美華ちゃんは笑いを噛み締めながら言った。
「止めよう。人が来ないお店は問題ありが多い。駅前通りにあるカフェか、『ナナ』に行こうか?」と僕は冷静な判断をして美華ちゃんに言った。
「うん。そうだね。怪しいし、ピンク過ぎるのは馴染めないし駅前通りのカフェは何て言う所なの?」と美華ちゃんも僕と意見が一致してから言った。
「『ルーシー』だよ。ここからならすぐ戻れるよ。『ルーシー』にするかい? マスターが僕の知り合いなんだよ。『ナナ』はパフェが美味いよ。美華ちゃんはどっちが良い? 好きな方を選びなよ」と僕は笑いかけて美絵ちゃんに言った。
「う〜ん、そうだね。じゃあ、今回は『ルーシー』にしようかな?」と美華ちゃんは可愛い笑顔を見せて言った。
「よし! 行こうぜ!」と僕は言いながら美華ちゃんと手を繋いだ。
『夢見心地』の扉が音を立てて勢いよく開くと、口を震えさせて半分以上泣き顔の着物を着たオジさんが出てきた。
「待ってえ! お願い! 行かないでえ~っ。これ以上、私を1人にさせたら何が起こるか分からないわよん」と明らかに中性的より女性的な中年のオジさんが喚くように言った。
「いや、行きます」と僕は拒否して言った。
「行かないでえ〜っ!」とオジさんが僕の腕を強く引っ張り店の中へと連れ込もうとした。
「止めてください! ちょっと! オジさん、止めろって! おい! 止めろ!」と僕は怒鳴った。美華ちゃんは僕の手を繋いだまま、逆に外へと引き出そうと強く抵抗をしていた。
「食べなくて良いから、話だけでも聞いてよん! 辛いのよ、私、辛い。およよよよん、うぇ〜ん」とオジさんが泣き出した。
僕と美華ちゃんは困った顔をして見合わせた。
「う〜ん。聞きたくないけど、話を短くしてくれたら、いや、3分くらいなら聞いても良いかな?」と僕は迷いながら言ったら、美華ちゃんは僕の手を強く握って頬を膨らませた。
「仕方ないよ」と僕は美華ちゃんに肩を竦めて言った。
「えっ! ほんとお!? ほんとおに、ほんとお!? ワオッ、ワオッ、ワオッ。うっふん」と女性的な中年のオジさんは、内股になりながら両手で自分の肩を交差させて掴みながら言った。
「話って何です?」と僕と美華ちゃんは渋々、店の中に入っていった。
店内はメルヘンチックなお花畑状態だった。
厨房の手前には安土桃山時代を思わせる甲冑が椅子に座って置かれていた。
レジにはシロクマの縫いぐるみが5体並んでいたし、壁一面にはマンガらしい、何らかのセリフが色紙に書かれて貼ってあった。こんな感じのセリフ。
『そんなバカな! 俺様が貴様ごときに。一旦、退避せよ!! 負けた訳じゃない!!』
『やめて! ルパートを投げ飛ばさないでよ〜!』
『よし! 変身だ、【精霊たちの印に誓う! 宇宙戦隊・ダンダカマン!】』
僕は全然知らないマニアックなセリフに立ちくらみし始めた。
これが内装のピンクの壁に、表のガラスケースと同様、色紙が50枚近く貼られていた。
「どう? カッコいいセリフでしょう? 貴方達は知っているかしら? 宇宙戦隊・ダンダカマン?」と涙を流した跡が嫌でも目につくオジさんは言った。
「知らないです。話は何ですか?」と美華ちゃんは声を落として言った。何だか、スズ婆ちゃんが怒った時の声に似ているような……。
「オープン3日目なのに客が1人も来ないなんて、なんなのよーっ!? どうしたら良いのか、分かんなぁーい。分かんないの~ん」とヨレた着物を直すでもなくオジさんは涙ながらに訴えた。
「駅前でのチラシの宣伝とか、ネットとか、何らかのアピールやアクションはしたんですか?」と僕は出された麦茶を見つめながら言った。
「してなあーい。人見知りだから嫌なのよねえ〜」とオジさんは着物の帯から扇子を出して扇ぎながら言った。
「じゃあ、なんでこの店を始めたの?」と美華ちゃんは首を捻りながら言った。
「独立よ。とにかく独立したかったのよ。人と関わるのが苦手なので、克服する切っ掛けになるわ、と飲食店を始めたのよ」とオジさんは椅子に座ってため息を吐きながら言った。
「なるほどね」としか僕は返す言葉が見つからなかったし、オジさんに貴重な時間が侵略されているような感じにもなってきた。
「何がいけないのかは、分かっているの。この私の容姿でしょう? しゃべり方でしょう? 私の人間性に難があると人々は感じて恐れているのよ。きっとね」とオジさんは自己分析をして自ら話した。
「でも、これは全然違うのよん。私は仮装しているだけなのよ。今で言うコスプレなの。しゃべり方? これが私のしゃべり方なの。私が幼稚園から中学3年の頃まで、親友の美紅ちゃんと明子ちゃんと、よく遊んでいてね、人形遊びや、アイドルごっこ、おままごとを続けていたら、いつの間にか、こんな感じのしゃべり方になっただけなの。
男のしゃべり方だって出来るのよ。今から言うので聞いてなさいよね。
『こらあー!! 誰だ! 家の女房にタックルした輩はよ! 許さんどー! 家の壁によ、【うんこ】と落書きして逃げる奴はよ!! 誰だ? マジで今回は怒るどー!』ねっ? 男言葉だってさあ、ちゃんと駆使出来るでしょ?」とオジさんは早口言葉のフレーズみたいに言った。
「はあ、なるほど、なるほど。そうなんですか」としか僕は言いようがなかったし、早く店を出たかった。
「私ね、ちゃんと妻もめとっているし、子供も男の子3人いて、大学にもやったのよ」
「えっ! 結婚しているんですか!?」と美華ちゃんは驚いて立ち上がった。
「そうなのよ。私は歴とした男性なのよ。男だって気づかなかったかしら?」と着物を着たオジさんが恥じらう顔を見せて言った。
「気づかなかったなぁ」と僕は嘘を言ったら、美華ちゃんが僕の右腕に肘鉄を食らわせて笑い顔を必死に堪えていた。
「嫌ねえ〜、男って本当に。ウフフフフ。すぐ男って女を、イヤらしい目で見るからねえ〜。今まで私もそれで、どれだけ傷ついてきたかしらねえ〜? まったく、もぉう。ウフフフ。私は女好きなのよ」と着物を着たオジさんが口を隠しながら笑っていた。
男なのか女なのか? 一体このオジさんはどちらに所属しているのか? 分かりにくいし話が見えてこない。
僕は何もアドバイスをすることが出来ないと悟り、美華ちゃんの手を握り締めて入り口へとダッシュした。
「待ってえー! 私を置いて行かないでえー! 私を1人にさせたら、本当にさあ、どうなると思うの? ねぇ、私、どうなるの?」と着物を着たオジさんが大声で叫んだ。
「知りません!! 頑張ってくださいね!!」と僕は怒鳴り返した。
僕たちは店の外を出ると駅前に向かって振り返ることなく全力疾走をした。
つづく
ありがとうございました♪100話を目指して頑張りますので、宜しくお願い致します!




