デートの待ち合わせ
好きな娘とのデートが一番楽しい。凄く嬉しいよね♪
僕は午前9時30分に駅前の2番出口に着いた。
まだ美華ちゃんは来ていない。僕は駅前にある本屋で本か雑誌を読みながら時間を潰そうと考えた。
書店『灯』(あかり)は1931年に開店した5階建ての老舗の書店だ。マニアックな書物からマンガ、軽い雑誌までナンでも御座れの本が置いてあり、通な読者から初心者大歓迎の人気書店だ。
僕は歩いて3分の近距離にある『灯』に着くと、1階の入り口の側にある新刊のランキングコーナーを眺めた。
1位『僕の父の父の父』 夜間景子
2位『口笛が臭い』 佐藤悟
3位『妊婦に拍手喝采』 榊隆司
聞いたこともない題名の本だった。僕は作家の名前を改めて見てみた。
「皆、全然知らん」と呟くと1位が気になるので本を手に取ってみた。
あらすじを読むと…
『英二は苦悩していた。家系や伝統や遺伝から逃れたがったが、いくらなんでもそれは無理な話。英二は30年間、素性を隠して生きてきたのには、ある訳があった。父もお爺ちゃんもお爺ちゃんの父も、ある秘密を持っていたのだ。英二が、その秘密を知ってしまった時には愕然とした。果たしてその秘密とは? 一体何なのか?』
「気になるなぁ。買おうかな? いや、画材を買わないといけないし。でも、気になるな」と僕は考えて本を持ったまま時計を見た。午前9時45分だった。
「タブー」と僕は呟くと最後のページを捲って結末を急いで読んだ。
『英二は風に吹かれて転びかけたが、真樹子が慌てて英二の体を支えたので無事だった。「おバカさん。気をつけて歩いてよね。せっかく、命からがら、逃げる事が出来たのに」と真樹子は英二の耳元で妖しく囁いた。 終』
「う〜ん、これじゃ分からないなあ」と僕は解説を眺めてから本を元の場所に戻した。
「さて、美華ちゃん来ているかな?」と僕はスキップしながら『灯』を出た。ちなみに老舗の書店『灯』とジェームス・ディーンは同じ歳だ。
今日は快晴。最高。美華ちゃんに久しぶりに会えるから超嬉しい。駅の手前に大きな鏡があるので僕は身だしなみを整えた。
『鼻毛なし。目くそ、鼻くそもなし。うん? 今朝は歯を磨いていなーい……。これは、ヤバイ』時間は午前9時49分。
僕は慌てて走ってコンビニに入ると歯ブラシと歯磨き粉を買った。レジで支払いを済ませた後に気づく。旅行用の歯磨きセットなら300円近くも安いはず。『取り替えて貰おうか?』と迷っていたら時間は午前9時53分になっていた。
「すみません。トイレを貸してください」と僕は店員にお願いした。
「右の奥にあります」と若いお兄さんは場所を教えてくれた。
僕はトイレの洗面所で歯ブラシと歯磨き粉を開けると慌ただしく歯を磨いた。
「ゲホッ。グエッ」磨き終えて水道の蛇口を捻るが水が出ないことが分かって焦った。鏡を見ると口の回りが泡だらけだった。
「なんたる喜劇」と鏡の自分に笑いかけながら言った後にトイレから出て飲料水売り場に行って98円の安い水を買った。レジに行くと、店員は嫌味な顔を僕に向けてから言った。
「お客様、歯磨きは困ります」と注意をされた。
「すみません。急いで歯を磨かないといけなくて」と僕は丁寧に頭を下げてお詫びをした。
「開店した頃と同じクオリティーに、綺麗に磨き上げますので」と僕は言いながらトイレに駆け込んだ。まずは口を濯がなくては。
僕は口に水を含んだ。口の中で水が弾けて喉に込み上げて来たので勢いに負けて吐き出した。
「ブベェー!! 何だこの水は? 炭酸水!?」僕はラベルを見た。『強炭酸水』とあった。もう時間がない耐えるしかない。再び口を濯ぐ。
「ブベェー!!」と、むせ果てる。
僕は洗面所を綺麗にしてからコンビニを出た。
時間は午前9時59分。
あと1分。
僕は全力で走った。
2番出口に美華ちゃんの姿を発見。
あと30秒。僕は美華ちゃんが待っている姿に見とれていた。その美しい姿をスマホで撮った。
「美華ちゃーん」と僕は手を振りながら駆け寄っていった。
「竣くん! おはよう! ピッタリ10時!! 凄いね!」と美絵ちゃんは美しい笑顔を見せながら僕に抱きついた。
つづく
ありがとうございました♪




