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蜃気楼

夏が好きさ!

 僕は自分の部屋に行き、ベッドに横たわると体の伸びをしてから瞼を閉じた。


 病院とは、死や生きる事について、人生について、嫌でも深く考えてしまう場所だった。


 患者さんが、強い孤独の中で病と戦う辛さは、過酷だし、やりきれない思いを抱くことだろう。


 『なぜ? 自分が? 何も悪いことはしていないのに、なぜなんだよ!』と自問自答や怒りに震えて日々を過ごすこともあるだろう。


 怪我や闘病で苦しんでいる人には、病を【生きるための試練。学ぶチャンス。生まれ変われる。新たな自分との出会い。成長や進化できる休息】とプラスに考えていく機会に恵まれたと考えるようにすると、勇気が出てくるんじゃないかと思う。強い心意気を育てる事が出来るかもしれないと思う。決して諦めずに、めげることなく、希望を持って欲しいと思う。


 温かくて人間味がある病院がもっと増えると良い。冷たくて異様な雰囲気が漂う病院は、怖いだろうなと想像した。

 来夢さんみたいな美人の看護師がいると率直に嬉しい。安易に思うのは憚るが紛れもなく女性の看護師は天使だと思った。


 健康で生まれ、毎日を暮らせる事に心から感謝をしなければならない。両親に感謝しなければならない。

 人間には、それぞれにドラマがあることが改めて分かったし前より深く考えさせられたし理解もできた。 

 気が張るほど考えすぎるのは逆に良くない。前に進めなくなる。身動きできなくなる。僕自身を追いつめるのは良くない。







 【僕は僕の人生を全力で生きるために前を見るしかない。行動するしかない】






 スマホに美華ちゃんからのラインが届いた。


 『竣くん、ただいま〜。5日前の夜に戻りました。竣くんは元気にしていたかな? 夏風邪とかは大丈夫かな? 私ね、帰ってきた直後に風邪を引いて寝込んでいたの。連絡、遅れて、ごめんね』


 『美華ちゃん、お帰り。お疲れ様です。体調は大丈夫かい? 僕は今のところは何ともないよ。北海道はどうでしたか?』


 『凄く楽しかったよ。涼しいし気持ちいい爽やかな暑さだった。ライラックが可愛かった』

 

 『いつか行ってみたいなぁ。綺麗な所なんだろうな。北海道は新鮮な気持ちになりそうだね』


 『そうかもしれない。空気や水や食べ物が凄く美味しいよ。人が温かいのよ。おおらかで解放感がある。束縛されていない感じになるから自由があるのよ』

 

 『自由。自由は人間に絶対には必要だからね。外国の有名な俳優や詩人が自由を求めて頻繁に北海道に行くという話を聞いたことがある。インスピレーションが湧いてくるんだろうね』


 『そうかもしれないね』


 『美華ちゃん、明日は予定がなければ、一緒に街へ行こうよ』


 『いいよ! 楽しみ! 待ち合わせは何時がいい?』

 

 『美華ちゃんに早く会いたいから、午前10時に駅前で待ち合わせよう。2番出口の所でね』


 『了解です! じゃあ、お風呂に入りま〜す。竣くん、明日はよろしくね!』


 『はい。こちらこそ!』



◇◇◇◇◇



 翌朝の5時、僕はセルリアン・ブルーの空の下、僕は1人で海にいた。




 波の音に身を任せて海と一体になりたかった。




 心が静まる。

緩やかな風が体に優しい。



 

 いつか見た蜃気楼。宙に浮かんだ島が見えていた。僕は浮かんだ島を20分間クロッキーをした。


 帰ろうとした時だった。


 砂浜を散歩する美しい女性が泣きながら長い髪を手で押さえて、耳に貝殻を当てていた。


 女性はしゃがみ込むと、砂に穴を掘り、貝殻を入れて、穴の両側にかき集めた砂の山を崩していった。


 白いワンピースが素敵だと思った。身長は164センチくらいはあろうか? 


 格好いい女の人だった。 


 女性は立ち上がると手に付いた砂を払い落とした。涙を拭こうとはせずに、黙って海を見つめていた。哀しみに暮れた裸足の天使がここにいた。


 僕は家路を歩いた。女性というのは、あまりにも美しすぎる。アクビ1つだけでも、美を感じてしまう。女性は悩ましい。


 女性の美しさは

罪なのかもしれない。





つづく


ありがとうございました♪

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