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積徳の天使たち

女性はこの世の天使です。


 救急車は救急の入り口にスムーズに入り紋絽(もんろー)病院に無事に到着をした。


 直ぐ様、待機していた看護師数名が母を乗せた担架を運んだ。


 母は汗ばんで呼吸が荒かった。運ばれていく時に受け付け前を通るので、他のお客様、というか、患者、病人、入院患者がいて、運ばれる母の姿を食い入るように眺めていた。その目には感情はなく、虚無感漂う悲しい寂寥の眼差しで母を見ていた。


 「少しお待ちになってください」と看護師は僕に言うと、持っていた書類を手渡されて、僕が母の代わりに記入した。


 5分後、医者の手当てを受けることができた。


 問診と診断の結果は「期限切れの食べ物によって腹痛、下痢を引き起こした」ということだった。


 「お母様は自宅のトイレで吐いたり下痢をしたみたいですから、水分がなく、少し脱水症状が見受けられます」と医者は丁寧に言った。


 「脱水は大丈夫なんでしょうか?」と僕は医者に言った。


 「大丈夫です。点滴を受ける事で補給されて回復するでしょう。最初は食中毒を疑いましたが、その心配はありませんでした。

 今はお腹には何も入っていないので、体を温める物や、胃に負担にならないお粥など優しい物を食べてください。 

 点滴は1時間近く受けてもらいます。その後は帰宅して大丈夫です。一週間分のお薬も出しておきます」と眼鏡を掛けた50代の医者はカルテに細かく書き込みながら僕とスズ婆ちゃんに言った。


 「どうもありがとうございます」と母、幸子はお腹を押さえながら言った。


 「お母さん、入院しなくてよかったね」と僕はお母さんの頭を撫でながら言った。


 「もう変な物は口するんじゃないよ。止めなさい」とスズ婆ちゃんが強めの口調でお母さんに叱った。


 「面目ない。止めます」と母、幸子はシュンとして言った。


 母を待つ1時間の間、僕は病院を探索しようと思った。

 

 スズ婆ちゃんは売店を見てくると言った。カフェや小さな本屋、コンビニ、ハンバーガー・ショップなどがあった。僕も後で見に行こうと思った。


 病院は隔離された世界。健康な人にとっては怖い場所の1つでもある。


 病院に関わらないようにして健康を保って生きることが何よりも大切でベストだと気付かされる。


 僕は病院内の案内図を見るというよりは眺めた。

健康ではない文字にめまいがしそうだった。


 綺麗な看護師が僕の目の前を通り過ぎていった。

 『綺麗だ。あんな美人の看護師がいたら入院するのも悪くないかもしれない』と僕は、(やま)しい気持ちが浮かんだ。


 看護師は大変な職業だ。微笑みを絶やさず、苦しんでいる人に希望や優しさを与える天使だ。勇気や愛情を与える天使だ。

 僕は流れるようなリズムで働く、ひたむきで懸命な看護師の姿を黙って見ていた。



◇◇◇◇◇◇◇



 「こんばんわー!」と先ほどの美人の看護師が僕の隣に来て言った。


 「こんばんは!」と僕は頭を下げて挨拶をした。


 「どこか具合が悪いのですか?」と看護師は覗き込むようにして僕に言った。

 

 「母が救急車で運ばれまして、点滴が終わるのを待っている所なんです」


 「あら、それは大変でしたね。お母様は大丈夫なんですか?」


 「大丈夫です。腹痛を起こしたんです」


 「腹痛はツライですよ。大丈夫なら良かった」と看護師は綺麗な笑顔を見せて言った。僕は看護師の名札を見た。「華月来夢」と書いてあった。

 

 「『かづき らいむ』と読むんですか?」と僕は名札を指差しながら聞いた。


 「珍しい名前だと思うでしょう?」


 「珍しいですね」


 「変な名前でしょう? 本当はね『ムーン』と更に微妙な名前を付けたかったみたい。両親は綺麗な月が好きなんです」


 「でも『らいむ』は、カッコいいですよ。クラシックの映画に出てきそう」と僕は言った。


 「あはは。ありがとう。あなたのお名前は?」と来夢さんは言った。


 「瀬川 竣です」と僕は頭を下げて言った。


 「いい名前。そろそろ行かなくちゃ! お母様にお大事にと伝えてくださいね」と来夢さんは言って、僕に手を降りその場を離れた。




つづく


ありがとうございます!!

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