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本物を知る

 柏木美華は希に見る美少女だった。あれだけの美しさを兼ね備えているなら、性格が悪かったり歪んだ考え方や我儘だったりするんじゃないか? と警戒すると思うが、柏木美華はそんな『勘違いな性格』は1つも微塵もない。控えめで、謙虚で、思いやりのある素敵な女の子だと確信を持って言える。


 礼儀正しくて、聡明で、明るい性格で、前向きな資質を持っていて内面も外見と同じ様に美しいのだ。外見の美しさを何かに例えるようなナンセンスなことは止めておこう。

 

 なぜなら、柏木美華は彼女自身のオリジナルな美しさを持っているのだから。

 

 ある日の事だ。スズ婆ちゃんがテレビを見ていた時こんなことを言っていた。 

 

 「この女性タレントは凄く美人だが、敬語は使わないし、人の目を見て話さないね。まぁ、こういうキャラクターで売っているんだろうけれども。


 こういう茶番はもう限界だよ。本気で仕事をしていない者、「意外に簡単で割りが良いから」と思って軽く仕事をする人はね、人の心に感銘や感動を残したり、人生を変えるほどの影響や前に進む勇気と生きる力を与えたりすることはできないよ。


 オードリー・ヘップバーンちゃんを見習いなさい!、と強く言いたいね。

  

 竣、『いい加減に目を醒まして、本物を見抜く目を養いなさい! 本物に触れなさい! 本物を感じなさい! 心で感じなさい! 一流の本物から学びなさい!』と私は今の若い子達には言いたいね。

 

 一流の本物を知ることが大事なんだよ。

 『ズル賢い大人達が作る子供騙しに引っ掛かるのはもうおよしなさいよ!』ってね。偽物は所詮偽物。

 

 金儲けのためだけに本物のように見せかけるペテンにも本当にウンザリしているのよ。

 

 奴等のやろうとしている事とは、若い子たちの持っている柔軟な感性を阻んで、成長する事や、進化を止めさせようとする悪巧みだからね。

 

 深く物事を考える力、フィーリング、真実を見抜く眼差し、心で感じる大切なものを、ブチ壊そうとする厄介な連中なんだよ。

 

 一流の本物の才能、一流の本物の芸術に触れたら、もう昔の自分とは大きく意識が変化するし、感性や感受性が磨かれて心が豊かになって素晴らしいセンス身につくんだよ。自分で選択することが出来るようになるんだよ。偽善者が作る偽物の芸や文化を否定して、本物を知る目を持つこと、真実だけを見抜く力を身に付けなさい。

 根を詰めて視野が狭くなるなら、息苦しさを感じるなら、ユーモアやウィットやジョークを覚えて学びなさい。ユーモアの精神を持つのは大事なんだよ。

 

 まぁ、全部、和雄爺ちゃんが言っていたことの受け売りで教えてくれたことだけどね。竣、思慮深い人になれたら物事を豊かに感じる事が出来るようになるんだよ。竣、あと1つだけね。オリジナルになることがベストなんだよ。最初のうちは真似でも良い。あくまでも最初のみだよ。さっき私が話した事の全てを理解した上でね、自分で行動を起こした時、教えが1つに繋がっていると分かるはずだよ」と言っていた。

 

 僕は窓際の柏木美華を見つめながらスズ婆ちゃんの言葉について深く考えて静かに物思いに耽っていた。

 

 

――――――――――――

 

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

 

――――――――――――

 

 やっと三時間目の授業の数学が終わった。


 数学の時間が長いと感じるのは気のせいなのかな? 高校の数学は本当にしんどい。なんとかやっているけどね。

 

 今日はこの後、

給食を食べて帰宅となる。 明日は終業式だ。

嬉しすぎるね、夏休み!

  

 隣のクラスの男子たちが集まってきた。

 窓から覗き込むもの。扉を少し開けてトーテムポールのように顔を並らべて見ているもの。 

 行ったり来たりしながら見ているもの。とても柏木美華ちゃんに、彼女に対して迷惑だし失礼だと思う。

 

 僕らはクラスの皆全員でなんとか追い返した。

 

 クラスの女子たちが柏木美華ちゃんの周りに集まっていた。

 柏木美華ちゃんの側に行きたいアホの男子たちは、ただ立ち尽くしてその光景を見ていた。

 

 至る所で虚しく鳴る腹の音を響かせて男子たちは立ち尽くしていた。 

 

 僕も、ひたすら、お腹を鳴らしながら柏木美華ちゃんを見ているだけだった。

 

 

 

 

つづく

いつも楽しみに待っていてくれて、本当にどうもありがとうね!

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