リトル・ガール
あの娘は美しい女の子さ!
女の子は門の前で腰を屈めて顔だけを出して僕を見ていた。女の子は姿勢を正すと、門の間を行ったり来たりし出した。
女の子は顔が見事なまでに美しい本物の美少女だった。
長い髪は左分けにしていて、薄く口紅もしていた。
赤いTシャツを肩まで捲りあげて、左の腕に『少女戦士あかねちゃんとライダース』のあかねちゃんのシールを貼っていた。
手首にはミサンガと赤、青、緑、黄色のガラス宝石のブレスレット、ブルージーンズは新しくて、裾をロールアップで上げて赤耳を出すという完成度の高いセンス、足首にも青いミサンガを巻きミント色のビーチ・サンダルを履いていた。お洒落な女の子だった。
女の子は僕を手招きで呼び寄せた。
「いやあ! なんだい?」と僕は煮干しを食べながら言った。
「あのネコはお兄さんのネコなの?」と女の子はあどけない顔で言った。
「違うよ。玄関の前に座っていたんだよ。インターホンは君かい?」
「そう。ネコについて行ったら、この家に入っていったの」
「へぇ〜、そうだったの」
「そうなの。ネコって気まぐれだけど凄く賢いんだよ」と女の子は自慢げな顔をして言った。
「猫ってさぁ、女性に似ているよね。呼んでも来なくて、ほっとくと向こうから来るし」と僕は肩を竦めて言った。
「甘えたくなったら甘えると言うところもね。ワガママなのは気に掛けて欲しいからなのよ」と、おませな女の子はウインクをして言った。
凄いね。まだ女の子なのに、もう女の表情を見せるのだから。女の子と言えども、女としての魅力を発揮させたり。女は生まれながらに、または幼い頃から女の輝かせ方を知っているんだ。知り尽くしているんだ。
「知っている? ネコってね、犬に襲われた子供を助けるために犬に体当たりして守ったりもするんだよ」と女の子はネコに視線を移しながら言った。
「本当かい!? それは凄いなぁ! ネコって強いイメージがあるよね。人間もね、そんな猫の強さにあやかって、昔の話だけども八百長気味のあるボクサーが猫を真似て【猫パンチ】というあやふやなパンチを使い、相手を倒したという話もあるくらいなんだよね。1回切りの伝説のパンチとして残すのには惜しいからさ、僕が引き継ごうと思っている所なんだ」
「フフフフ。へぇ~。凄いね。ふ〜ん。なるほどね、猫パンチかぁ。ウフフフ。パンチが完成したら私にも見せてね。お兄さん、あのネコちゃん、家で飼いたいなぁ、でも無理だろうな」と女の子はため息を吐いて言った。
「あの猫は、まだ、子供だから飼うには良い時期だとは思うよ」と僕は猫の注意を引くためにネズミの鳴き声を真似てみた。
猫は鳴き声に反応して体勢を引くして屈み込むと、耳を立てて、目を見開き、辺りを警戒していた。
「お母さんが猫アレルギーだから絶対に無理なんだよね。実は私も猫アレルギーなんだ。それでも飼いたいなぁ〜、欲しい」と女の子は唇を尖らせて言った。
「ところでお嬢ちゃん、この辺では見ない顔だけども引っ越してきたの?」と僕は煮干しを女の子に差し出して言った。
「うん。一寸前にね」と女の子は言ってから、煮干しを受け取って食べた。
「住みやすいでしょう? 自然と、都会の距離感が優しいからね」と僕は笑顔を浮かべて言った。
「良いね。空気が美味いんだよね。水は綺麗だし。『お姉ちゃんもここに引っ越せて良かった』って言っていたよ」と女の子ジャンプしながら言った。
「お嬢ちゃんはいくつ?」
「9才。2か月後に10歳になります。いよいよ二桁です」と女の子は得意満面な顔をして言った。
「お嬢ちゃんはお喋りがとても上手なんだね! お姉ちゃんは何歳なの?」
「もうすぐ17歳」
「あっ! 僕と同じ歳だ。同じ学校かもね」
「私のお姉ちゃん、超美人なんだよ!」
「君も美人だよ」
「嬉しい! どうもありがとう! お兄さんは美男子だね! 超カッコいいです!」と女の子は顔を赤くして言った。
「ぐはあっ! いけない! お使いの途中なので、この辺で帰ります。お兄さん、バイバーイ!」と女の子は言って猛ダッシュして走り去っていた。
僕は煮干しを猫の前に置いてから家に戻った。
つづく
ありがとうございました!




