深夜のデッサン
竣のやるべきことは絵を描くことです。今回の話は、竣が本来のあるべき姿を発揮します。
僕はベッドの上でジョンとミッシェルを抱っこしながら話し掛けていた。
「もう夜更けでしゅから寝まちょ~ねぇ」
「クーン、クーン」とジョンが甘えた声を出した。
「ヒャン、ヒャン!」とミッシェルは小さく鳴いた。ヨチヨチ歩きがたまらん。赤ちゃん臭い匂いがたまらん。2匹とも僕の胡座の上に乗って目を閉じ出した。
「おい♪ 可愛いこたんたん。ここで寝たらダメどぇ〜す。ケージに行って寝なたぁ~い。ムフフ。可愛すぎるなぁ。ブフッ。チュウしよう」と僕は言って2匹を抱き抱えてチュウをしてからケージに移した。
さてさて、只今、深夜の0時50分なり。暑くて寝ずらい』僕はシャツを脱いでイーゼルの前に座り、木炭デッサンをすることにした。
木炭は難しいけど、深みがあるから綺麗なデッサンになる。ひたすら裸婦をデッサンしよう。
そう言えば、美華ちゃんのおっぱいが僕の中で創造的な神話や伝説になりつつある。
確かに美華ちゃんのおっぱいは、形の良い、程好い大きさは服の上からでも確認はできたが、白くて綺麗で乳首がピンクとなれば、(大きさはそれとなく確認はできるが)色は実際にこの目で見ないと実感が湧かない。見たい……。美華ちゃんのおっぱいが見たい。
綺麗なおっぱいというと「ヴィーナスの誕生」のあの金髪豊かなお姉ちゃんみたいなイメージが自然と頭に浮かんだ。
大事なのは「白くて綺麗な形のおっぱい」というのが重大なポイントになる。
夏奈子から、美華ちゃんのおっぱいについて、本格的な取り調べに似た証言を何んとか引っ張り出さなければならない段階に来ている。
この前、美華ちゃんが僕に駆け寄った時、おっぱいが上下に揺れていました。美華ちゃんのおっぱいは、おそらくDカップくらいかもしれない。DとEの間かな?
オッパイって、マシュマロ並みに柔らかいという噂は本当なのだろうか?』と思っていたら、突然、
「あっ!! そうだ!! あれをしなくちゃならない!!」と僕は思わず声を上げて思い出した。
車に乗っている時に、窓から手のひらを出して、風の抵抗を受ける事によって手に掛かる負荷が、オッパイの柔らかさと同等の価値があるという言い伝えがある。一刻も早く、大至急確かめなければならん。車の免許は再来年までは取れない。
確認したいけれども、和雄爺ちゃんの運転する車に同乗したいが、和雄爺ちゃんは風邪で寝込んでいるからしばらくは無理っぽい。
母、幸子は、明日、パートの仕事で職場に向かうので車を使うから無理だし。何とか2日以内に検証してみようとは思う。
美華ちゃんの、お、お、おっぱいを……、ダメだ。 これ以上の妄想は危険の領域だ。鼻血が出てしまう。
美華ちゃんに裸婦画を描かせて欲しいなぁ、とは思うけれども、それは遥かな夢だなぁ。
映画の「タイタニック」だと出逢ってから少し経って裸婦が描けたのになぁ。良いよなぁ。あれは映画だからな、現実だと、そう簡単には上手くはいかないものだからね。
モディリアーニの場合は女たちは喜んで、すぐに裸婦になってくれたという話だし。実に羨ましい話だ。
裸婦画を描くチャンスはなかなかあるものではないからね。
前にデッサン会に参加をした時、裸婦画を描ける機会があったんだ。
「どんなモデルが来るのかな?」と欲情を抑えながら期待を込めて待っていたが、来てくれたモデルは50代くらいの中年の女性だった。
本当は若い女性を描いてみたかったと少し落胆していたのだが、中年の女性のお腹には、帝王切開での傷痕が残っていたのが生々しくてリアルだった事に、インスピレーションと情熱が溢れてきたんだ。中年の女性はプロのモデルだから、凛とした雰囲気はさすがだなと感じた。僕は欲情を封じ込めてデッサンを真剣に描いた。
それから1か月後に、23歳の若い女性がモデルで来てくれた時には、生徒、皆で拍手喝采をした。若い女性の裸婦画を描けた時には、僕は雄叫びを上げたくなるほど嬉しかったし拍手をした。
23歳のモデルはショートカットの美人だった。髪型が短いから、体型、筋肉の動きがよく見えて描きやすかった。陸上部に入っているようで、筋肉の発達がしなやかでカッコよかったのを覚えている。
モデル本人も絵画の勉強をしていたので、喜んでモデルとして皆のために力になってくれたのは、本当にありがたかった。
女性は本当に凄く綺麗。ただ本を読んでいても歩いていても美しいからね。
女性の仕草や動作の1つ1つが魅力的で感動すら覚えてしまうよ。
さてと、一先ず出来ました! 木炭デッサンの第1段階が完成。どれどれ』と僕は言いながら椅子から立ち上がって、イーゼルから少し後ろに下がると目を細めて絵を眺めた。
ヤナギ炭で描いたけども、光の調子がまだイマイチだなぁ。明日はクワ炭、チャコールペンシルも使ってみようかな? 2時間でこれなら、上出来だろうね。
よーし、この木炭の裸婦画を3日以内に描き終えたら、次はジョルジョの石膏像を仕方なく描こう。練習のためだからね。気だるくても良いから仕方なく石膏像を描こう。
イメージを膨らませて石膏像を描く大変さを嫌々な感情を漏らしながら軽い気持ちで描こう。
石膏像に青春を掛けてはいけないよ』と僕は考えながら自分の部屋から出て茶の間に向かった。
石膏デッサンは、ある意味、害でもあるからね。僕の場合は、石膏像に帽子を掛けたり、眼鏡を掛けたりして、軽く考えているから石膏像を深刻には捉えていない。人物デッサン画の方が重要だと考えているんだ。
スズ婆ちゃんの部屋から乙女たちの話し声が聞こえてきた。
「なるへそねぇ〜っ!」と夏奈子のアホな日本語が聞こえてきた。
乙女たちの同意する頷きが見えてきそうだったので僕は目を閉じ、あくびを1つ大きくした。
深夜の3時近くになっても、まだ話せる事がたくさんあるというのが女性の凄いところだなんだよね。
喋ることで疲れや嫌なことを発散しているのかもしれないね。同意よりも、話を聞いて欲しいということなのかもしれない。
家の母、幸子とスズ婆ちゃんが2人で会話をしていてる時に、たまによく見る光景で、どちらの話にも相槌を打たずに一方的に喋り合っている時がよくある。あれが不思議なんだよね。
テレパシーや以心伝心とはまた違ってさ、「阿吽の呼吸」みたいな感じに思えるんだよなぁ。感覚的に補っていくような不思議なコミュニケーション。女性ならではの感受性なのかもしれないね。
「恋の話は止まらないものよっ!」と、人妻なのに、母、幸子は前に言っていたっけ。この時間まで話す理由かぁ。ただ単純に恋バナに夢中になっているだけの事かもな。
僕は、また1つ、大きなあくびをしてから「さてさて、寝よう寝よう。僕は寝よう」と独り言を口に出してから洗面所に歯を磨きに行った。
つづく
ありがとうございました♪




