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不審な手紙

 僕は朝6時に目が覚めて、牛乳を買いにニタシに行くことにした。朝から暑い。皆はまだ寝ている。


 僕の部屋にジョンとミッシェルがいるけど、すでに起きていた。


 「わぁん、わぁん! はっはっはっ。はっはっはっ。わぁん!(ジョン)」


「ひゃん! はっはっはっ。ひゃん!(ミッシェル)」


 可愛いねぇ〜。子犬は可愛い。ずっと子犬でいて欲しいけど、それは飼い主のエゴだなっ。立派に育て上げなきゃ。僕と夏奈子の兄弟として育てるつもりだから、まずは「三つ子の魂百まで」、3才までにはしつけを完璧にしないとね。


 「ジョン、ミッシェル、なにちてるんでちゅか? お兄ちゃんはね、今からでしゅね、買い物に行きまちゅからねぇ。たんと、ちっかり、お留守番をちているんでしゅよっ。わかりまちたか?」


「わぁん、わぁん」J。

「ひゃん、ひゃん」M。


 「よし、よし! 偉い子ちゃんでしゅねーっ、暑いでしょ? 暑いから、部屋のドアを、ちょっびっと、開けるからねぇ。窓も3センチほど、換気で少しだけ開けるけどもね、絶対に近づいたらダメでしゅよ。わかりまちたかぁー? 扇風機も小にして回しましゅからね。扇風機の側に行ったらダメでしゅよ」


 「わぁん、わぁん」J。

 「ひゃん、ひゃん」M。


 「偉い子たんたんたんでちゅねぇ~。じゃあ、行ってくるからね」


  偉い!! スゴいぜ!! なんて賢い犬なんだろう? 生後半年も満たないのに、僕の言っていることが早くも完璧に理解しているよ。天才犬かもしれないなぁ。あははは! 可愛い子たんたんたんだよ! めんこちゃんだよ! どこか他の犬と違うね。幸運を運んでくれる犬なんだよ。きっとね! と僕は思いながら玄関に向かった。親バカの心境が分かった。

 

 僕はずっとジョンとミッシェルを溺愛するだろうね。


 玄関に座って靴を履こうとしたら、急激に思い出してしまった。忘れてたわ。昨日の深夜の不審者達の事をね。

 

 「じゃん拳とにらめっこの白熱ぶりで、すっかりド忘れしたなぁ。不審者め。迷惑な奴等には関わるな! だよな」と呟きながら靴を履き終えた。


 何気に顔を上げてみたらポストに手紙が入っている事に気付いた。


 「なんだ?」と白い封筒を手にして差出人を見た。

 

『R』とあった。


 僕は封を破り中の手紙を読んだ。


 『夜分、遅くにすみませんが、夏奈子さんの友達でお誘いに訪れた者です。夏奈子さんに宜しくお伝えください。また来ます。R』と書いてあった。


 「知らん。誰だ? 昨日のアイツらか? 勝手に入れた手紙だな。生意気な変質者達め」と僕は呟いて手紙を下駄箱の上に置いた。


 外に出ると快晴だった。天気が良いと気持ちが晴れやかになるよね。


 近所にある「すみれ公園」で夏休み中は、毎朝、ラジオ体操が行われていた。 

 

 低学年の小学生の男の子や女の子達がたくさん並んで歩いていた。  


 皆、参加する時のために必要な判子を押してもらうカードを首から紐でぶら下げていた。


 中には親子で参加する方も何人か見られた。


 ニタシは歩いて10分以内にある楽な距離なので、非常に助かるよ。


 僕は自宅の門を出たら、5メートル先の向かい側の道路に白いライトバンが停まっていることに気づいた。近所では見たことがない車だった。


 さりげなくナンバーを確認した。『こ-1841』とあった。僕は『こ(いつ)-あやしい』と覚えた。


 運転席の男は優男で気が弱そうだが、青白い顔をしていて、目がつり上がり狡猾な印象を受けた。


 助手席の男は厳つい顔つきで、上半身は堅太りをしていた。柔道か何かをしていたような威圧感があった。


 僕はさりげなく車の横を通り過ぎようとした。

 

 助手席の男は僕の姿を確認してから車を降りて近付いてきた。


 「朝早くにすみません。今、瀬川さんの家から出てきましたよね? 夏奈子さんはいらっしゃいますかね?」と汗臭い、息が臭い、タバコの臭いが体全体に染み付いた臭い男が話し掛けてきた。


 「どちらさん?」と僕は警戒しながら言った。


 「夏奈子さんの友達ですよ」


 「いや、あんたの名前の方」


 「夏奈子さんに聞けば分かりますよ」


 「名前を尋ねているんだから答えてくれないと困りますよ。名前は?」と僕は言った。男達は僕よりも4つほど年上、大学生くらいに見えた。


 「夏奈子さんはいるのかい?」と運転席の青白い目付きの悪い優男が窓から顔を出して言った。


 「なんで答えなきゃならないの?」と僕は突っぱねて言った。


 「いるのか、いないのかを早く言え!」と運転席の男は凄みを聞かせた。


 「答えたくないね」


 「てめえ! 拉致るぞ!」と外に出てきた固太りの臭い男が言った。


 「うるさい! 息が臭い! 歯を磨け! 風呂も入れよ! 身だしなみをちゃんとしなさいよ!」と僕は言ってニタシに行こうとした。


 固太りの臭い男は歩き去る僕に向かってペットボトルを投げてきた。


 僕は面倒くさいので完全に無視をした。


 「おい! ガキ! コラ、待てよ!!」と言う声が後ろから聞こえてきた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ニタシに着くと偶然にも詩音がいた。


「詩音、おはよう! 偶然だね」


 「竣、おはよう! 元気? 俺さ、明日から1週間、旅に出るよ」


 「何処に行くの?」


 「北の方だよ。駈島(かるじま)に行くんだ。知り合いの科覇羅大学(かはらだいがく)の発掘隊のメンバーに誘われてさ、行く事になったんだよ」


 「駈島には『黄金の女神像』が隠されていると言われているよね」と僕は幼い頃、和雄爺ちゃんから聞いたことがあったのを思い出しながら言った。


 「ご名答! それを探しに行くんだよ。竣! ここであったのも何かの縁だよ。竣も行かないか?」と詩音は歩み寄って言った。


 「行きたいけど、絵の方で忙しくなるから無理かもしれないね。ごめんね。誘ってくれて、ありがとう」と僕は言って詩音の肩に手を置いた。


 「急な話だもんな。また機会があれば誘うから次回は是非とも行こうぜ!」と詩音は言ってキャベツの千切りと納豆パックとお茶を持って、僕は牛乳を持ってレジへ行った。


 僕らは一緒に「すみれ公園」に行きラジオ体操に参加することにした。


 体操はラジオ体操の他に子供たちのための盆踊りの練習を兼ねていたので、今から盆踊りの練習が始まる。

 

 丁度、町内会の役員の方による挨拶が行われる所だ。


 「えーっ、おはようございます。あのね、体操に参加をしないで、判子だけを押して貰うために来るバカタレが頻発しています! バカタレに警告する。『2度と来るな!』です。この問題は以上です。


 後ね、体操はキビキビした動きがあってこそ機能するんだからさ、キビキビしていこうよ。ちんたら動いていたらさ、体操に申し訳ないでしょう? キビキビでね。そこんところ宜しく。


 後さ、シャキンとビシッとして、パッときたら、シュッとした感じでさ、グッと来る感じでさ、ブワッと体を大きくして、スパンと気持ちと心を動かしてからね、ドバッと気合いを吐き出して、パリッとササッとキラリンと輝くようにしようね! バシッとしようね! 一般の方の参加は自由ですので、いつでもラジオ体操に参加して大丈夫ですよ。さてさて盆踊りの練習を始めまーす」と役員の村定滝夫(むらさだたきお)さんは眠そうな顔をしながら言った。


 村定さんは去年のクリスマスに、クリスマス会で、ふて腐れた顔をしながらトナカイの役をやった人だった。


 「村定さんの最後の言葉は何だかよく分からんね」と僕は詩音に言った。


 「一番困る説明の仕方だよね」と詩音も同感した。


 盆踊りの練習を終えてから僕と詩音は途中で別れた。


 自宅近くまで来るとライトバンがまだ止まっていた。


 僕はライトバンの横を通り過ぎようとしたら、また、不審者2人が車の中から声を掛けていた。

 

 「おい! ガキ! 夏奈子さんはいるのかよ! いるんなら会わせろよ!!」と助手席の固太りの臭い豚野郎が言った。


 「交番まで行くかい?」と僕が言ったら、不審者2人はエンジンを掛けて車を出した。


 「不審者野郎め!」と僕は走り去る車に向かって言った。


 スマホが鳴った。

 詩音からだった。


 『詩音、どうした?』


 『買い物袋間違えてないかい?』


 『あっ!! 間違えて持ってきたんだね。気付かなかった』

  

 『今から竣の家にいくよ』と詩音が言って電話は切れた。

 

 「おーい、竣」と詩音が門の前にいて手を振りながら牛乳の入った袋を上げていた。

 

 また白いライトバンが現れて詩音の横を通り過ぎて、僕の家の前に止まった。


 僕は走って自宅に向かった。詩音は驚いた顔をしていた。

 

 ライトバンのドアが開けられると5人組の男たちが出てきて詩音に何か話し掛けていた。


 詩音は察したようだ。首を横に何度も振って男たちの質問を拒否していた。

 

 僕は家の前に着いた。


 「コイツら何なの? 夏奈子ちゃんの友達だとか言っているけど、物凄くバカみたいだよ」と詩音は僕の傍に来て言ったのは良いけど、言葉が強すぎた。


 確かに詩音は奥歯に物が挟まった言い方をしない男だ。


 5人組は明らかに詩音に目を付け出した。


「なんだって!? ああん?」と堅太りの臭い男が詩音の襟首を掴んだ。


 詩音は男のお腹を蹴りあげた。


 「グワッ!! てめえ!」と堅太りの臭い男は詩音の頬を肘うちした。これは反則だ。詩音はよろめいて頭を振ると相手の胸元に目掛けて飛び蹴りをした。


 堅太りの臭い男はライトバンのバックミラーにぶつかった。バックミラーは壊れて地面に落ちた。


 堅太りの臭い男は痩せたスキンヘッドの仲間に目で合図するとスキンヘッドの男は鉄の棒を振り上げて詩音に襲い掛かってきた。


 詩音は上手く交わすと持っていたニタシの袋に入っている僕の牛乳をスキンヘッドの頭に叩き付けるようにぶん投げた。


 スキンヘッドの頭は真っ白に濡れた状態になり地面に倒れて伸びた。


 堅太りの臭い男は詩音にヘッドロックをした。詩音は呻いたがそのまま巨漢の男を持ち上げてバッグドロップをした。


 堅太りの臭い男は伸びていた。


 「竣!! タッチ! 交代」と詩音は言った。


 「了解」と僕は言って残り3人の前に立ちはだかった。

 

 僕は間合いを詰めてパンチを出そうとした。


 「止めな!!」スズ婆ちゃんが家から出てきた。

 

 すんごく、すんごく、凄くマジで怖い顔をしていた。




つづく

ありがとうございました♪

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