ヌードの時間
1か月ぶりの更新です。待っていた読者の皆様、遅くなりました。ヨロシクね!
スズ婆ちゃんは本当に強いし頼もしいし、瀬川家の影のボスであり、リーダー的な存在だ。
以前、夏奈子が風呂に入っている時に、変質者に覗かれた事件があったよね? スズ婆ちゃんは、なんの躊躇いもなく包丁を手に持って風呂場に走って行こうとしたのを僕が急いで慌てて止めたんだけどさ、スズ婆ちゃんは気が物凄く強いんだよ。
最近の僕はボクシングでそれなりに活躍をしていたけども、ひょっとしたらスズ婆ちゃんには勝てないかもしれないと思うんだ。
いや、正直に勝てないと思うね。絶対にね。その理由が3つあるんだ。
1つは…
スズ婆ちゃんは、霊視めいた能力も備わっているから、時にビビるんだよね。これ真面目な話。
スズ婆ちゃんが本気を出したら、何かが起こりそうで凄くなりそうなんだけどね。
前に亜美の家で怪談話をしたけどさ、美絵ちゃんの怪談話で、三杉慎二さんという大学生の親戚の話が出たでしょう? あんな感じなんだよね。あれをもっと強力にした感じなんだよ。滅多に見せない姿ではあるんだけどさ。
たまに、スズ婆ちゃん、台所にいたはずなのに、目を離した僅かな隙にベランダにいて洗濯物を干していたりもするんだよね。変でしょう? ベランダに行くにはソファーに座っている僕の目の前を通らなければならないのにね。
スズ婆ちゃんがくじで湯布院の温泉旅行を3つ同時に引き当てたのも、今となっては、何らかの力が関わったかも分からないなぁとは思うけどもね。
2つ目は…
僕が小学5年生の時、ある日の夕暮れの事なんだけどね、自転車を磨いていたら、3台の車が家の前に停まったんだよ。
ごっついアメ車のシボレーから、ごっついムキムキの筋肉男が5人が降りてきて、1台のベンツに移動して囲むように立ったんだ。
もう1台の車のライトバンからは、ブラックの高級スーツを身に纏ってサングラスを掛けて、片耳に白いイヤホンをした厳つい男が5人も車から降りてきて、同じ様にベンツへと移動したんだよ。スーツの男たちは見るからにプロフェッショナルな方だと分かった。
スーツの男達は無線で交信をして、辺りを警戒しながらベンツの後ろのドアを開けたんだ。
出てきたのはスズ婆ちゃんだったんだ。スーツはスズ婆ちゃんを取り囲むように降ろしたんだよ。スーツに守られた上に、更に5人の筋肉男達が囲むように守っているわけなんだ。
スズ婆ちゃんが「ご苦労さん。行って良いよ」と男達に言うと、男達は素早く動いて車に乗ると帰っていったんだ。
僕は呆然と見ていたら、スズ婆ちゃんが僕に気付いて「しーっ、竣、秘密」とだけ言って家の中に入っていったんだよ。
あの頃のスズ婆ちゃんは今よりも若くて精悍な顔付きをしていたよ。
3つ目は…
これは僕が14歳の頃、今から3年前の話になるんだけども、たまたま地元のローカルテレビを見ていたらさ、何らかの組織の総監の毛利厳太さんとスズ婆ちゃんが何故か対談番組に出ていてね、談笑しながら総監の肩を叩いたかと思ったら肩を組んで大笑いしていた映像が流れていたんだ。
『何やってんの?』と僕は思いながら見ていたら、冷や汗が出てきて、目がショボショボし出したから、擦った後に目薬をさしてもう一度見てみたら、スズ婆ちゃん、今度は毛利厳太さんの頭を叩いて笑っていたんだよ。毛利厳太さんは叩かれても何となく嬉しそうに見えたよ。
僕は謎の組織の総監に見覚えがある気がしてさ、画面を睨むように見つめていたら、「あっ!」と僕は思い出だしたね。溢れるように記憶が甦ったね。
スズ婆ちゃんの旧姓が毛利だから、厳太さんはスズ婆ちゃんの弟なんだよ。旧姓が『毛利スズ』っていう訳なんだ。厳太おじさん。子供の頃に会ったきりだから、あまり覚えていなかったけど、毛利の名字とスズ婆ちゃんの叩きっぷりで、なんとか思い出したんだ。
つまりさ、得体の知れない秘密で謎の組織の総監が後ろに控えているというのはイヤらしく聞こえるかもしれないけれども、『絶対に悪いことはできない』ということなんだ。
僕が子供の頃に、実際に刑事や探偵やお坊さんが頻繁に家に来ていた事を思い出して考えてみたら、警察等からスズ婆ちゃんに捜査の協力を依頼して、何らかの事件に取り組んでいた節が何度かあるんだよ。たぶん捜査をしていたんだろうと思うね。
スズ婆ちゃんにヘタに逆らうと、とんでもないことになるだろう、という訳なのさ。
そんなスズ婆ちゃんだけどね、和雄爺ちゃんだけにはどうやら勝てないみたいなんだよ。
和雄爺ちゃんは、ビートルズ研究室と言って改造した部屋でビートルズを熱唱したり、ビートルズが来日した時に武道館公演を見たりもしたし、サーファーになりたいと言ってみたり、デモテープ作りに熱中したりするけれど、楽しく明るく、たまに、軽く考えているのが和雄爺ちゃんだと思うでしょう? だけどね、それは違うんだよ。和雄爺ちゃんは底が知れないんだ。
怖い意味じゃなくて、何か深いものを和雄爺ちゃんには感じてしまうんだよ。
前に押し入れから和雄爺ちゃんがスズ婆ちゃんに宛てた若い頃のラブレターが出てきたんだ。勝手に黙って読んだけど泣けたよ…。泣けた。内容は言えない。
和雄爺ちゃんはスズ婆ちゃんよりも行動力や直感が半端じゃないんだよ。
分かりやすく言うと、スズ婆ちゃんはファンキーで和雄爺ちゃんはロックと言えば良いかな?
僕の父親についてだけどもね、特に言うことはないね。只今、出張中だけどさ、佐登瀬都子の父親に似たような職業に就いているみたいなんだよ。変装して帰宅をしたことがあるくらいだからね。実の父親の職業が不明というのも珍しい話でしょう?
しーっ! これは誰にも言っちゃいけないよ。父親の話をしたくてもさ、ある種のタブーみたいな感覚や、雰囲気が家の中で漂うんだよね。
母、幸子は一切、父親についてはあまり話さないし口にしない。スズも和雄も口にしない。夏奈子も言わない。
正直に言うとさ、僕はもう少しで17歳になるけどもね、この約17年間で父親の姿をを見たのは60回くらいしかないかもしれないんだよね。(少しオーバーに言っているけども(笑)
希少動物並みの目撃例と似たような数しか会っていない父親の稀有な存在感は確かに感じてはいるよ。
最近となっては、もはや声すらも忘れかけているしさ。たまーに、メールが来るけと分かりにくいんだよね。例えばこんな感じのメールなんだ。
『行動と瞑想をせよ』
『噛み砕けよ』とか書いてくるんだよね。
本当にたったこれだけなんだ。まあ、父親も元気であればそれで十分だし。父親の名前? そのうち分かるし、分からないかもしれない。
なんだかんだ言っても父親は瀬川家の守護神なんだよ。
ちなみに、父親の部屋は地下にあるんだよ。
厳重なシステムを施しているから勝手に部屋には入れないんだ。いつかは、必ず突破して入ってみるつもりだよ。
話が長くなったね。家の家族は愛に溢れた家族だから大丈夫さ。
お互いにあまり考えすぎなきゃいいのさ。やっぱり家族というのは大切なんだからね。僕らはそれぞれに個性と自立と尊重があるから絆は強い方なんだよ。
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夏奈子がジョンとミッシェルを抱いて茶の間に戻ってきた。
「あれ!? 美華ちゃんは?」と僕は聞いた。
「美華ちゃん、今ね、入浴中だよ」と夏奈子はジョンとミッシェルにチュウをしながら言った。
「えっ!? い、今、お風呂に入っているの!?」と僕は興奮をしていたし、かなり驚いて言った。
『美華ちゃんの裸を、み、見たいな!』と思いつつ……。
「うん、そうだよ。お兄ちゃん、ちょっとジョンとミッシェルをヨロシクね! 私も美華ちゃんと一緒にお風呂に入るからね」
「僕も良いかい?」
「ダメに決まっているでしょうが!! スケベ!!」
『美華ちゃんが入浴中なのか。見たいなぁ。良いなぁ〜、夏奈子の奴』と僕は思いながら目を閉じた。
「お兄ちゃんのシャンプーを使ってもいい?」と夏奈子はバスタオルを2枚用意して言った。
「ダメに決まっているだろうが! お母さんに何とか頼んで、やっと買ってもらったんだからさ。夏奈子、また溢すだろう?」と僕は強めに言った。
「お兄ちゃん、私じゃなくてさ、美華ちゃんが『使ってみたい』って言っていたんだよ」と夏奈子は膨れっ面をして言った。
「美華ちゃんがかい?」と僕はくすぐったくなり、デレデレしながら言った。
「うん」
「どうぞ使ってよ!! 美華ちゃんに『いいよ!』と伝えてよ」と僕はデレデレしながら言った。
「了解!」と夏奈子は言って、デカイお尻を揺らしながら、ドカドカと、どこかのおばさん並みに体を揺らして風呂場に向かった。
夏奈子め〜! 羨ましい! 良いなぁ〜、見たいなぁ。美華ちゃんの裸を夏奈子が最初に見るなんて何だか腑に落ちないんだけどね。
厳粛な気持ちで美華ちゃんの裸を見たいと言っているのであってだね、スケベ心では断じてないんだよ。絵のモデルにと考えているんだよ。
裸婦画は僕の専門分野だからね。
『美華ちゃんは今頃、全裸なのかぁ。見たいなぁ。綺麗なんだろうなぁ〜。色白で透明感があるし』と思いつつ……。
いやいや、だからね、勘違いしないで欲しいんだけどもね、真面目に厳粛な気持ちで絵のためにも大事なこと。
でもなぁ、美華ちゃんのオッパイは可愛いんだよなぁ。美華ちゃんの裸を見たいなぁ。
だからよう、違うって。5階、じゃなかった、誤解しないで欲しいんだ。絵をね描くにはね、裸婦画を描くためにはね。
つづく
ありがとうございました♪




